異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON

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第三章 咆哮の誇り ※序盤、シリアス、途中、切ない系、終盤、怒涛のカタルシス

第41話 ミィナの深き慈愛――ガルテラに舞い降りた“光の雪”

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魔獣との戦いの翌日、外では、ルダルの指揮のもと、村人たちが方々に散っていた亡骸を、少しずつ、しかし確実に村の広場へと運び続けていた。
亡骸の多くは無残な姿で、顔の判別もつかない者もいた。

そして風が吹き抜けるたび、腐臭が鼻をつく。

しかし、文句を言う者もいない。

ただただ、亡くなった仲間を一人一人、丁寧に、広場に並べ布をかけていった。

その中で、
震える手で亡骸を抱きしめ、嗚咽を漏らす者、
肩を震わせ、目を閉じ、歯を食いしばりながら俯く者、
静かに手を合わせ、涙を頬に伝わせる者――

誰もが、涙と共にこの広場で過ごしていた。

――

アマトたちは、セシアが横たわっていた洞窟の片隅で、差し入れられた温かいスープを口にしていた。
それは、村の女性たちが震える手で作った、わずかばかりのものであったが、
その湯気の中には、確かに感謝を示す意志が宿っていた。

しかし、ミィナはスープを飲むことなく、一人考え事をしているようだった。

そして、その様子をそっと覗き込む少年の姿があった。――シンだ。

彼は興味津々な目で、アマトを見つめていた。
その瞳は、まるで何かを学び取ろうとするように輝き、ふと、こんな思いが胸をよぎる。

(……俺も、魔素を貰ったら強くなれるかな)

その眼差しは、未来に希望を抱く少年の瞳そのものであった。

――

空には、淡い星の光が、静かにまたたいていた。
それはまるで、失われた命たちの灯火のように、弱々しくも確かに、夜空に光を灯している。

夜の広場には、布で覆われた戦士たちの亡骸が静かに横たわっていた。
その上には手折られた花や、わずかな供物が置かれ、
風が吹くたびに、布の端がかすかに揺れ、その下の無言の命たちの重さが、広場全体に静かな圧をかけていた。

村人たちは、一人、また一人と広場に集まってくる。
それぞれの顔に、悲しみと、そして誇りが入り混じった表情が浮かんでいた。

ルダルは、広場の中央で膝をつき、そっと手を合わせた。
彼の前には、他の戦士たちより少し離れて、グレオニウスの亡骸が置かれていた。
布の下から覗く逞しい腕は、無数の傷跡とともに、力強さを湛えていた。

ルダルは静かに自分の袖をまくり上げ、その腕に巻かれていた"六輪の誓印"をほどく。
それは、村の武道大会の優勝、最強の証だった。
ひとつひとつ、ゆっくりと指を動かしながら、ルダルはその誓印をグレオニウスのもともと巻いてあった腕へと巻き戻していく。

「……これはお前のものだからな。お前に返す……」

声はかすれ、震えていたが、言葉を選ぶように丁寧だった。
周りの村人たちも、そっと目を伏せ、沈黙の中で祈りを捧げていた。
シンは小さな体を震わせながら、ミィナの後ろに隠れるようにして立っていたが、
目だけはじっと、ルダルとグレオニウスを見つめていた。

その時――

ミィナが、何かを思い立ったように、そっとアマトの方へ顔を向けた。
彼女の瞳には、確かな決意の色が宿っていた。

「アマト様、私もお願いがあります」

アマトはミィナを見つめたまま、何も言わずに頷いた。
ミィナがアマトに向かって小さく何かを囁くと、アマトは静かに手をかざし、低く「……貸与」と呟いた。
その瞬間、淡い光がアマトの掌から溢れ、ミィナの体を包み込む。

柔らかな光が降り注ぎ、ミィナの髪を淡く照らし、彼女の瞳はほんの少しだけ潤んでいるように見えた。

そして、ミィナはそっと広場を見渡し、目を閉じ、深く息を吸い込んだ。
彼女の背筋はすっと伸び、その立ち姿には、これまでにないほどの静謐な強さが宿っていた。

そして、ミィナが話し始めた。

「みなさん、聞いてください……」

ルダルが、その言葉に気づき、少し驚いたようにアマトとミィナの方へ顔を向けた。

広場に集まった人々の視線も、自然とミィナに向けられる。

彼女は静かに歩み出ると、戦士たちの亡骸が並ぶ方へ向き直り、
胸元に手を当て、そっと深く頭を下げた。

「みなさんの活動を見ながら、私に、今何ができるか、ずっと考えていました……」

ミィナの声は震えていたが、決して弱々しいものではなく、
むしろ、何かを決意した者の、凛とした響きがあった。

「私は何も力を持たない弱き者です。
それでも……この方々、そしてここにおられる皆様の気持ちを、少しでも和らげることができたら……」

そう言うと、ミィナはそっと足元に膝をつき、
次の瞬間には、透明な人型のスライムの姿へと変わっていった。

その姿のまま、ミィナは天を仰ぎ、両手をそっと掲げる。
そして、静かに目を閉じた。

それに続いて、アマトも彼女の背後に立つと、掌から淡い光が流れ出し、ミィナの全身を包み込む。

光が、優しく、暖かく、まるで春の陽だまりのように、ミィナを満たしていく。
その光景を、ルダルも、村人たちも、ただ息を呑んで見つめていた。

やがて、ミィナの体全体が淡い金色の輝きに包まれると、
彼女はそっと口を開き、はっきりとした声で言葉を紡いだ。

「――”恩恵《おんけい》"」

その瞬間、ミィナの両手から柔らかな光の粒が溢れ出し、
空へと舞い上がっていく。
無数の光の粒は、ふわりと風に乗り、夜空の中で静かに空高く舞い上がる。
そして、ある高さで光の粒が弾けると、
まるで天から降る祝福のように、無数の”光の雪”が静かに降り注ぎ始めた。

それは、誰もが言葉を失うほどの美しさだった。
”光の雪”は、亡骸にそっと触れ、その体に淡い光を宿し、
人々の頬や髪にも優しく降り積もった。

「これは一体……」

ルダルが小さく呟き、手のひらに舞い降りた光の粒をじっと見つめた。
その声には、驚きと、どこか祈るような響きがあった。

そして、信じられない光景がゆっくりと広がり始める。

朽ち果てた亡骸の肉体が、まるで時間が巻き戻されるかのように、
少しずつ再生し始めたのだ。
欠けていた腕が戻り、砕けた骨が繋がり、引き裂かれた皮膚が滑らかに修復されていく。
やがて、すべての亡骸が、かつての戦士としての姿を取り戻し――
その顔は、何かをやり遂げたかのように、安らかな笑みをたたえた表情へと変わっていた。

人々は言葉を失い、ただ涙を流した――

人型の姿に戻ったミィナが、そっと涙を拭いながら振り返り、
村人たちに向かって、震える声で言葉を紡いだ。

「……せめて、元の体のままで……送ってもらえたらと……」

その言葉を聞いた瞬間、村人の中から誰かが、かすれた声で呟いた。

「……奇跡だ……」

その一言が、静寂を破る鐘の音のように響き、
次々と声が重なる。

「奇跡だ!」
「奇跡だ!!」

やがて、村人たちは一斉に膝をつき、土に額を押し付け、
ミィナとアマトに向かって深く頭を下げた。
嗚咽が広がり、感謝の言葉が途切れ途切れに溢れた。

ミィナは、少し驚いたように目を見開き、そして柔らかく微笑んだ。

「さあ、みなさん。最後のご挨拶を……」

その言葉に、村人たちは次々と顔を上げ、涙を流しながら、
それぞれの亡き者に向かって、震える声で別れの言葉を告げ始めた。

ルノアが笑顔のまま親指で鼻をこする。

エメルダが小さく息を吐き、微笑みながら呟く。

「……全く。ミィナのやつ、また持っていきやがったな」

その時、アマトは村人たちに背を向けたまま、ただ黙って、
広場の片隅で横たわるグレオニウスをじっと見つめていた。
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