異世界ラグナロク 〜妹を探したいだけの神災級の俺、上位スキル使用禁止でも気づいたら世界を蹂躙してたっぽい〜

Tri-TON

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第三章 咆哮の誇り ※序盤、シリアス、途中、切ない系、終盤、怒涛のカタルシス

第43話 聖泉《おんせん》に還る笑顔たち

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空が茜色に染まるポタ村に、ガルテラ村から次々と幻扉を抜けて戻ってきていた。

その中に、セシアの姿もあった。

セシアの表情には安堵の色がにじみ、長い労働の疲労をにじませながらも、どこか柔らかな笑みが浮かんでいた。


「おかえりなさい、皆さん!」


その様子を目にしたミィナが広場で帰還者たちを迎え、嬉しそうに手を振る。

ミィナの声に気づいたセシアが答える。

「おぉ、あんたたち、そこで何やってるんだ?」

セシアが笑いながらミィナの方へ見て声をかける。

そこには、ルノアとエメルダもいた。

「さっきまでルノアと自主訓練さ。おかげでくたびれたよ」

エメルダが肩を回しながら笑い、隣でルノアが腕を組み、やれやれと肩をすくめる。

「だから、これからフィリアの聖泉へ行こうって言ってたところなんだ。一緒に行かない?」

ルノアの誘いに、セシアは大きく頷き、腰に手を当てながら笑った。

「いいね。よし、一緒に行こう!」

セシアは、そういうと、ミィナたちの方へ歩き出した。


――夜のフィリアの聖泉の女湯


蒸気が立ち込める空間に、笑い声と水音が響いていた。

「セシアさん、結婚うらやましいです!」

ミィナが湯に肩まで浸かりながら、瞳をきらきらと輝かせる。

隣で肩までお湯に浸かるセシアは、軽く笑って答えた。

「そうか? ミィナも、いつかいい男と巡り合えるさ」

肩を揺らして笑うセシアの頬は、湯気でほんのり赤らんでいた。

「そうそう、アマト様は俺に任せな」

ルノアが涼しい顔でそう言い、鼻先をちょんと持ち上げる。

「それはダメっ!」

即座にミィナが声を上げ、ぴしゃっと湯を跳ねさせる。

「確かに、それは聞き捨てならないな」

エメルダが不敵に笑いながら、肩で湯をかき分けた。

「アマト様は、俺のことを好きなんだ!」

「ふっ、魔素供給しかもらえてないくせによく言うよ」

ルノアが鼻で笑い、挑発するような笑みを浮かべる。

「お、おまえっ、言ってはいけないことをっ!」

エメルダが湯をばしゃっと跳ね上げ、ルノアに掴みかかる。

「やめなさい、二人とも!」

ミィナが呆れたように叱りつけると、二人はばしゃばしゃと水しぶきを立てながら、取っ組み合いを続けた。

しばらくバシャバシャと湯が飛び交い、湯気の向こうで笑い声が響く。

その様子をセシアはじっと眺め、ふっと目を細めると、湯面に映る湯気の向こう、空を見上げた。

「お前たちは、本当に仲がいいんだな……

なあ、グレオニウス。アタシたち三人もそうだったよな……」

声はかすかに震え、だが、どこか懐かしさをにじませた。

その時、湯の奥で小さなざわめきが広がった。

ルノアが湯船から立ち上がり、惜しげもなく身体を見せつけながら言い放つ。

「ところで……なあ、シン。お姉さま方の裸はどうだ?」

肩を揺らし、茶化すような笑みを浮かべる。

「う、うるせぇやっ! お、おれは本当はこっちに来たくなかったんだ!」

シンが顔を真っ赤にして、背を向けながら抗議の声を上げる。

「でも……ネトとネネが無理やり連れてきて……!」

「だって、こっちの方が面白いもん!」

ネトが湯の向こうでにやりと笑い、ネネがにっこりと頷く。

「そうだよ、シン。あっちは怖いおじさんばっかりで、こっちの方が安全だもん」

ネネの言葉に、場の空気が和む。

「そうかそうか。なら、しっかり拝んでおけよ。次は男湯に戻るんだから、これが最後だぞ?」

エメルダがそう言って意地悪く笑うと、ルノアと同じように立ち上がり、両腕を腰に当てて仁王立ちする。

「二人とも、からかっちゃだめよ……」

と言いながら、ミィナが心配そうにシンを見る。

「シン君はまだ子供なんだから」

シンは目を潤ませながら心の中でつぶやく。

(ミィナ様……やっぱり、女神様だ……)


湯けむりの中、笑いと賑わいが混ざり合い、夜の聖泉には、穏やかで温かな時間が流れていた。


――夜のフィリアの聖泉の男湯


湯気がもうもうと立ち込める中、湯舟に浸かる男たちの間に、何やらざわめきが起こり始めていた。

「……こんなことが許されていいのか? ネトに続き、シンまで、あんな幸運に恵まれて……!」

ビーノが拳を湯の中でぎゅっと握りしめ、悔しげに呟くと、隣にいたグッチが勢いよく頷く。

「そうだ、許されるはずがない! いや、許してはならない! 平等であるべきだ!」

その声に、他の若者たちも次々と声を上げ、湯の表面がさざめく。

「だが、あっちにはエメルダの姉御がいる。前回のような無謀な突撃は危険だ……」

ビーノの冷静な言葉に、場が一瞬しんとする。

しかし、グッチが力強く拳を突き上げた。

「そう。しかし、今度は違う! こっちにはゼルヴァス十傑、あの牙咆のルダルさんがいる! 無敵だ!」

その声に、男たちの表情が次第に熱を帯び、戦意が満ちていく。

ビーノが湯舟から勢いよく立ち上がり、湯気の中で拳を振り上げた。

「よし、いくぞ! 野郎ども!」

「おぉーーーっ!」

勢いづいた男たちは、湯気と気合を纏い、まるで戦に赴く兵士のように掛け声を上げながら、女湯へ突撃しようと湯殿を飛び出した――

だがその時、湯舟の一角でただ一人、何も聞こえていないかのように目を閉じていた男がいた。

ルダルだ。

「……まさか、フィリアの聖泉に、こうも毎日来るようになるとはな……」

湯に肩まで浸かり、空を仰ぎ見るその横顔には、戦いを終えた戦士の静けさと、過去への想いが滲んでいた。

「……なぁ、グレオニウスよ……」

夜空に向かって、まるで語りかけるようなルダルの声は、誰にも届かず、湯気の中に消えていった。

そして、彼は、直後に起きる女風呂での騒動と男たちの悲鳴を、知る由もなかった――
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