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<狙われた町と黒い沼>
黒の魔力結晶
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「単刀直入に申し上げて、難しいでしょうな……。私自身は、これからの産業に欠かせ無い物に成ると、考えて居るのですがね。未だ一般的には、海の物とも山の物とも付かない物ですから、堅実な銀行家がどう評価するか……」
「しかし、そのヘルマス一家ってのは、その海の物とも山の物とも付かない物ってのに大枚はたいて、町ごと買うってのか?」
「まあ、恐らく彼らにとっては、一種の投機でしょうな。儲かれば良し、ダメなら別の事で儲ければ良いと。ですから、ほら、彼らはこの廃坑だけで無く、町ごと買うと。最悪、石油ビジネスに失敗しても、この町を歓楽街にでも変えれば、近くにヌーグも有りますからな、元ぐらいは取れると踏んだんでしょうな」
廃坑の底に湧き出た原油の確認も終わり、トマスも加え町まで戻る。
トマスは別れ際、役に立つかどうかは分らんが、廃坑の地下に眠る油田の話は町長にしておくと言っておった。
もし、銀行家に先見の明が有り、リスクを背負える覚悟が有るなら、もしかするかもと。
ワシから言わせれば、前世の産業革命後の世界を見れば、手つかずの油田など、喉から手が出るほど欲しいものだが……。
ま、どう転ぶか不確定要素の有る油田の事はともかくとして、もう一つ、確実な方の手段に関して、ジムに聞いておく事が有る。
「ところでジム、話は変わるが……少々、色付きの魔力結晶の特性に付いて教えて貰えんか?」
「ん?どうしたんだい旦那、随分唐突だな」
「いや、なに、実は黒の森とやらで集めた、ワシのコレクションの一つを手放そうと考えておる。で、どれを手放すか、その参考にしようと思ってな」
「ああ、そう言や、色付きのトロール・ベアを斃したって言ってたっけ。しかし、旦那も知っての通り、町がこんな状態じゃあ、此処にゃ買い手なんか居無えぜ」
「確か明日、銀行の頭取とやらが来るんだろう。ソイツに商談を持ちかけようと思ってな」
「成るほど、抜け目の無え旦那だ。良いぜ。で、何色の魔力結晶を持ってんだい?」
「そうだな、確かワシのコレクションに有るのは、赤、青、水色、黄、緑、白、そして黒だ」
「おいおい、そいつはコンプリートじゃ無えか。旦那、あの黒の森で、一体どんだけ修羅くぐって来たんだ……?」
「まあ、それなりにな。で、お前さんの赤は火の属性、昼間に聞いた青は風の属性、それと、黄色はそれを持っとったトロール・ベアが、石礫を飛ばして来おったから恐らく土だろうとは想像付く。他の色の属性を知りたい」
「良いぜ、そうだな先ずは、水色は水の属性だ、その名の通り、魔道具を使って水を生み出したり飛ばしたりできる。この大陸じゃあ慢性的な水不足だからな、結構重宝がられてるぜ。次に緑は、木の属性だ。まあ、木の属性とは呼ばれてはいるが、植物全般だな。この魔力結晶を使って植物の成長を促したり出来るんだ。コイツも、この大陸じゃあ重宝がられているんだが、まあ、戦闘に使えるモンじゃ無えな。そんで、白は聖属性だ。傷をいやしたり、汚れた物を浄化したり、そう言う魔道具で使われる。戦場では最も世話に成る魔力結晶さ」
「成るほど、で、黒は?」
「黒は死の属性さ」
「死?誰ぞ呪うか、死者でも操るか、するのか?」
「ハハ、まあ大昔、そんな罰当たりな奴も居たらしいが、今時そんなアホする奴は居無えよ。毒の錬成に使うんだ」
「毒?それは、それで、物騒とも思うが……」
「いや、錬成した毒で誰かを毒殺するって分けじゃ無い。まあ、偶にそんな犯罪で使われることも有るらしいが、一般的には、ネズミや害虫の駆除、それと、農薬なんかにして、畑に撒いたりして使うのさ。黒の精霊結晶から錬成された毒は、科学的に合成された毒なんかと違って、一定期間経過すると完全に無毒化するんだ。だから、より安全に扱えて便利なんだよ」
成るほど、考えられたものだな。
そう言うふうに有効利用されるならば、手放したとて悪用される心配もあるまい。
「うむ、参考に成った。時に明日、布の袋か何ぞ借りれるか?ワシの頭より二回り大きなスイカが収まる程度の物が、入用なんだが」
「ああ、それは別に構わんが……旦那のコレクションってのを売った儲けで、スイカでも買うのかい?」
「まあ、話し合いとやらの帰りに、子供達にスイカでも買って帰るのも悪く無いんだが、明日、チョット土産でも持って行こうかと思ってな」
「土産?誰にだい。トマスや町長にって分けでも無いんだろ」
「ああ、その銀行の頭取とか申す物にな」
「成るほど、商売相手に付け届けって奴か。旦那、案外見かけに寄らず、商売人だな」
「フッ、まあな」
丁度、牧場の白い家が月明かりに照らされて見えてくる。
もう暫くも経たん内に夜も明けると思うが、少々仮眠を取らせて貰うとしよう。
話し合いとやらがワシの思惑通り進んだとして、それで事が収まるとも思えん。
今までの経緯を考えれば、そのゴロツキ共がひと悶着起こすかもしれんからな
「しかし、そのヘルマス一家ってのは、その海の物とも山の物とも付かない物ってのに大枚はたいて、町ごと買うってのか?」
「まあ、恐らく彼らにとっては、一種の投機でしょうな。儲かれば良し、ダメなら別の事で儲ければ良いと。ですから、ほら、彼らはこの廃坑だけで無く、町ごと買うと。最悪、石油ビジネスに失敗しても、この町を歓楽街にでも変えれば、近くにヌーグも有りますからな、元ぐらいは取れると踏んだんでしょうな」
廃坑の底に湧き出た原油の確認も終わり、トマスも加え町まで戻る。
トマスは別れ際、役に立つかどうかは分らんが、廃坑の地下に眠る油田の話は町長にしておくと言っておった。
もし、銀行家に先見の明が有り、リスクを背負える覚悟が有るなら、もしかするかもと。
ワシから言わせれば、前世の産業革命後の世界を見れば、手つかずの油田など、喉から手が出るほど欲しいものだが……。
ま、どう転ぶか不確定要素の有る油田の事はともかくとして、もう一つ、確実な方の手段に関して、ジムに聞いておく事が有る。
「ところでジム、話は変わるが……少々、色付きの魔力結晶の特性に付いて教えて貰えんか?」
「ん?どうしたんだい旦那、随分唐突だな」
「いや、なに、実は黒の森とやらで集めた、ワシのコレクションの一つを手放そうと考えておる。で、どれを手放すか、その参考にしようと思ってな」
「ああ、そう言や、色付きのトロール・ベアを斃したって言ってたっけ。しかし、旦那も知っての通り、町がこんな状態じゃあ、此処にゃ買い手なんか居無えぜ」
「確か明日、銀行の頭取とやらが来るんだろう。ソイツに商談を持ちかけようと思ってな」
「成るほど、抜け目の無え旦那だ。良いぜ。で、何色の魔力結晶を持ってんだい?」
「そうだな、確かワシのコレクションに有るのは、赤、青、水色、黄、緑、白、そして黒だ」
「おいおい、そいつはコンプリートじゃ無えか。旦那、あの黒の森で、一体どんだけ修羅くぐって来たんだ……?」
「まあ、それなりにな。で、お前さんの赤は火の属性、昼間に聞いた青は風の属性、それと、黄色はそれを持っとったトロール・ベアが、石礫を飛ばして来おったから恐らく土だろうとは想像付く。他の色の属性を知りたい」
「良いぜ、そうだな先ずは、水色は水の属性だ、その名の通り、魔道具を使って水を生み出したり飛ばしたりできる。この大陸じゃあ慢性的な水不足だからな、結構重宝がられてるぜ。次に緑は、木の属性だ。まあ、木の属性とは呼ばれてはいるが、植物全般だな。この魔力結晶を使って植物の成長を促したり出来るんだ。コイツも、この大陸じゃあ重宝がられているんだが、まあ、戦闘に使えるモンじゃ無えな。そんで、白は聖属性だ。傷をいやしたり、汚れた物を浄化したり、そう言う魔道具で使われる。戦場では最も世話に成る魔力結晶さ」
「成るほど、で、黒は?」
「黒は死の属性さ」
「死?誰ぞ呪うか、死者でも操るか、するのか?」
「ハハ、まあ大昔、そんな罰当たりな奴も居たらしいが、今時そんなアホする奴は居無えよ。毒の錬成に使うんだ」
「毒?それは、それで、物騒とも思うが……」
「いや、錬成した毒で誰かを毒殺するって分けじゃ無い。まあ、偶にそんな犯罪で使われることも有るらしいが、一般的には、ネズミや害虫の駆除、それと、農薬なんかにして、畑に撒いたりして使うのさ。黒の精霊結晶から錬成された毒は、科学的に合成された毒なんかと違って、一定期間経過すると完全に無毒化するんだ。だから、より安全に扱えて便利なんだよ」
成るほど、考えられたものだな。
そう言うふうに有効利用されるならば、手放したとて悪用される心配もあるまい。
「うむ、参考に成った。時に明日、布の袋か何ぞ借りれるか?ワシの頭より二回り大きなスイカが収まる程度の物が、入用なんだが」
「ああ、それは別に構わんが……旦那のコレクションってのを売った儲けで、スイカでも買うのかい?」
「まあ、話し合いとやらの帰りに、子供達にスイカでも買って帰るのも悪く無いんだが、明日、チョット土産でも持って行こうかと思ってな」
「土産?誰にだい。トマスや町長にって分けでも無いんだろ」
「ああ、その銀行の頭取とか申す物にな」
「成るほど、商売相手に付け届けって奴か。旦那、案外見かけに寄らず、商売人だな」
「フッ、まあな」
丁度、牧場の白い家が月明かりに照らされて見えてくる。
もう暫くも経たん内に夜も明けると思うが、少々仮眠を取らせて貰うとしよう。
話し合いとやらがワシの思惑通り進んだとして、それで事が収まるとも思えん。
今までの経緯を考えれば、そのゴロツキ共がひと悶着起こすかもしれんからな
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