上 下
104 / 182
<ヌアザの攻防>

ゴブリンとの前哨戦 【切り裂く、魔銃】

しおりを挟む
パン、パン、パン!
レッドキャップの周りを固めるゴブリンを三匹撃ち殺す。

赤い頭が此方こちらを向く。
ワシは弾切れに成った十四年式をホルスターに戻し、軍刀を両手で八双に構える。

ヤツが、銃を抜く。
ん?
ヒゲがチリチリと……これは!

咄嗟に、岩陰に飛び込む。
何度も、黒の森で体験した事だ。
魔法を放たれる予兆。
とするとあの銃、魔銃か?

あの小男、どうやら奮発したらしい。
まさか、ゴブリン共に魔銃まで与えるとはな。

さて、得体の知れん魔銃だ。
闇雲に切り込むのは危険だが、その正体を見極めたい。
一発撃ってくれんものか……。

これだけの打ち合いのさ中だ。
あまり効果が期待できんが、グラシャ=ラボラスの魔法陣を描き、再び隠身かくりみを施す。
試しに、隣の岩陰に飛び込む。

赤い頭が、ワシを追う。
うむ、やはりヤツには通用せんか。
だが、雑魚ならば。

不幸なゴブリンが、運悪くワシの近くを通り過ぎる。
手早くソイツを岩陰に引きずり込み、首を絞め意識を飛ばす。

そして、そのゴブリンを羽交い絞めにしたまま、一瞬ヤツの前に躍り出て、ゴブリンを離して別の岩陰に飛び込む。
パシュッ!
銃らしく無い銃声。
発火炎マズルフラッシュも無い。
が、刹那、ワシが囮にしたゴブリンの胴が真っ二つに割ける。

ん、何をした?
まるで鋭利な刀で両断されたかの様だ。

見えない刃物か……。
ジムから聞いた話では、この世界の魔法は地、水、火、風、木、聖、死の七つからなる。
とすると、この中で怪しいのは風だな。
鎌鼬かまいたちの様なモノを飛ばしてくると見た。

射程の程は分からんが、銃弾の様に点では無く、刃物と考えれば線での攻撃。
そう考えれば、多少避け難いが、さして脅威では無い。

「成らば、いざ参る!」
岩陰から躍り出て、赤い頭を目指して走り出す。
ヤツがワシに銃口を合わせて引き金を引く。

パシュッ!
ワシは銃口の向く先を読んで、体を前後左右、時には飛び跳ねかわす。
パシュッ!パシュッ!

グヘッ!
巻き添えを喰らって、ゴブリンが一匹切り裂かれる。

フッ、他愛も無い、当然だがまるで素人だな。
ジムの様な達人に狙われれば、そう易々とはかわせんだろうが、のらくらとワシを狙っても、早々当たるものか。

パシュッ!カチャ!
弾切れの様だな。

飛び掛かる様に、その赤い頭に軍刀を振り下ろそうとしたとき。
ヤツが、持っていた魔銃でワシの刃を受け止める。

「ほう、思ったより中々やるでは無いか。だが……!」
アモンの魔法陣で強化された肉体に力を込める。

シャンッ!
ヤツの魔銃が火花を上げ両断される。
当然その後ろにある、ヤツの赤い頭もだ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

保護者つきで異世界転生!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:6

精霊に愛された少女の妹は叶わないからこそ平凡を願う

恋愛 / 完結 24h.ポイント:894pt お気に入り:3,863

『私に嫌われて見せてよ』~もしかして私、悪役令嬢?! ~

恋愛 / 完結 24h.ポイント:142pt お気に入り:46

仮面令嬢と変わり者王子の甘い日々

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:1,251

異世界に来ちゃったけど、甘やかされています。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:610

転生したら血塗れ皇帝の妹のモブでした。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:1,150pt お気に入り:6,298

わたしはお払い箱なのですね? でしたら好きにさせていただきます

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:29,203pt お気に入り:2,540

処理中です...