異世界大正ロマン 帝都の魔導小町 ~悪魔なんて召喚しませんわ、猫を召喚しますの♪~

春古年

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<大正:英国大使館の悪魔事件 解決編>

助けた命

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横長のローテブルを挟んで、奥の三人掛けのソファーに大使御家族が座り、左右の二人人掛けのソファーには、左にストーカーさん、右に参事官さんが席に着く。
参事官さんは、外から戻られたのか、着ていたコートを脱いで丸める様に畳んで、開いている隣の席に置く。
此方側の三人掛けのソファーには、私と上村さんが腰を下ろしている。
諏訪さん、曹長さん、警部補さんは私達の後ろにお立ちに成っているわ。

「皆様もお揃いになった事ですし、そろそろ、事件のなぞ解きを始めようと思いますわ。ですけれど、その前に皆様に御紹介したい方がいますの。宜しいかしら?」
「うむ。何者かは知らんが、危険を及ぼす様な相手で無いと保証するなら、応接室に通す事を許可しよう」
「フフフ♪少々見た目が怖いかもですが、何方どなたかを傷つける様な事は御座いませんわ。その事は、わたくしが保証致しますわ」

そして、曹長さんに目配せすると、一礼して一旦退出し、暫くするとコンコンとノックの音。
で、入ってらしたのは、手筈通り、コヨーテ姿のイシャイニシュスさん。

皆さん驚いてらっしゃるわ♪
そのうち、一人の方は、少々怯える様な目をしてらっしゃる。
まあ、その誰かさんは、一度さんざん追いかけ回されましたものね。
イタズラの一段階目は、成功ですわ♪

因みに、爺は引き続き玄関の方で、待機する手はずに成っているわ。
万が一にも、アレを敷地の外に出さない為に……。

「ミ、ミス蘆屋、この大きな犬は……?」
その大使閣下の質問に答えたのは、私では有りませんわ。
「あっ!あの時のワンちゃん!」
「え?ステラ、あの時のワンちゃんって?」
「悪魔に噛みついて、追っ払ったワンちゃんよ、お父様♪」

「フフフ♪さすがですわステラちゃん♪その通りですわ♪」
「では、あの夜、ローレンスの近くに有った足跡の持ち主と?」
「ええ、その通りですわストーカーさん」
「しかし、小町、一体どこでその犬を?それに、その証拠の様な物は?」
「詳しいお話は、この後お話ししますわ。証拠に関しては……そうね、必要なら足形を取って、比べてみれば良いと思いますわ」
「雪の上に残った犬の足跡は、我々が型を取っておいた物が。ですので、照合は可能で有ります」
そう、警部補さんが言葉を添える。

「実はステラちゃんに、一つお願いが有りますの。宜しいかしら?」
「わたしに、お願い?」
「ええ、このワンちゃんはあの晩、悪魔からステラちゃんを護ってくれたわ。ですから、このワンちゃんの頭を、良い子良い子して上げて欲しいの♪」
イシャイニシュスさんが、また、え?って顔をされているわ。
やっぱり、コヨーテ姿の方が表情が豊かですわね、この方♪

ステラちゃんは確認する様に、ご両親の顔を見て、大使閣下が軽く頷くと、満面の笑顔でイシャイニシュスさんに近付き頭を撫でる。
「助けてくれて、アリガト♪この子のお名前は何て言うの?」
「フフフ♪イシャイニシュスさんと言うのよ♪」
「イシャイニシュス……さん?」
フフ♪ステラちゃんは、私のさん付けに小首をかしげてるわ。
「アリガト♪イシャイニシュス……さん♪」
と、もう一度お礼。

「ハハ♪これが小町ちゃん言っていたイタズラで?」
そう、上村さんが囁く様に日本語で尋ねてくる。
「いいえ、そうでは有りませんわ。まあ、今のイシャイニシュスさん的には、イタズラされた気分でしょうけれど♪」
「では、何か意味がお有りで?」
「ええ、彼は多くの失われた命を見てきたと思うの。アメリカでは自分以外の一族の全員が、日本でも、ローレンスさんや明治神宮でお亡くなりに成った兵士や警官の方々、もしかするとわたくし達の知らないところでも……。ですから、自分が救ったかもしれない無垢な命が有る、と言う事を知って欲しかったの。勿論、明治神宮で彼に助けられた兵士や警官の方々は多く居たでしょうけれど、戦う術の有る人達と、そうでは無いステラちゃんとでは、別の意味を持つと思うわ。まあ、あの時ウェンディゴは単にステラちゃんを見ていただけで、殺意は無かったかもだけれど……それでもね♪かたきを取って、彼にとって全てが終わった後にでも、ステラちゃんの手の温もりを思い返してくれれば、少しでも彼の生きる糧に成るかもと思いましたの」
虚無感に囚われて、自暴自棄に成らない様に、メンタルヘルスを整えるのは大事な事ですわ。
「なんと、そこ迄考えられてましたか……。確かに、彼の人生はまだまだ先は長いでしょうからな……しかし、それにしても小町ちゃんは本当に、十四歳の女学生で?」
うっ!鋭い方だわ……。
でも、十四歳×二人分と言う事だもの、嘘では有りませんわ!!

「女性の年齢を疑うなんて、マナー違反ですわよ♪」
取り合えず胡麻化しておく。
「ハハハ、こりゃ失敬」

まあ、取り合えず、必要な儀式も終わりましたわ。
「有難う、ステラちゃん」
ステラちゃんは、笑顔のまま奥様の隣の席へ。

「それで、本題に入りたい処なのですけれど……。これからお話しする事は、正直、とてもでは有りませんけれど、ステラちゃんにお聞かせ出来る内容では有りませんわ。それに奥様もお聞きに成らない方が宜しいわ。とても刺激が強過ぎますもの」
「うむ、これから語られる内容に付いては分からないが、私の方にもそれなりの情報は入っている。確かにステラとマーガレットは聞かない方が良いだろう」
そう、大使閣下に促されて、お二人が退出する。
一応、この後お二人は、危険が無い様に、大使館の敷地の外に誘導される手筈よ。

「それでは、本題に入りますわ」
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