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<大正:英国大使館の悪魔事件 解決編>
ローレンスさんの密命
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「そうですわね……まず初めに、今回の事件ですけれど、主に三人の方が中心と成りますわ。一人は前大使閣下、一人は公使閣下、そして、もう一人のお方……ですわ。ですから、出来るだけ時系列に順序だててご説明しますわね」
「最初に前大使閣下のお話しですわ。そういえば、この中で前大使閣下にお会いになった事がお有りの方は、ストーカーさんだけかしら?」
「いえ、私も以前お会いしたことが有りますよ。とても物腰の柔らかい、温厚な方でした」
そう、上村さんが答える。
まあ、外務官僚ですものね。
「前大使閣下に付いては、関わった方々のお話しや、燃えてしまいましたけれど、書庫に納められていた蔵書を見ても、そのお人柄を偲ばれますわ。もっともオタクでは有られたみたいですけれど♪」
前大使閣下が所蔵していた魔導書は、全て偽物だったわ。
それは、間違って集められた物なんかじゃなく、敢えて、そういう物を集めていた。
ご自身の趣味が、まかり間違えば危険な物に成ると、わきまえていたから。
「話は三年程前に遡りますわ。前大使閣下と、その特殊な趣味を共有なさっているお友達の皆さんが集まって、降霊会を定期的に催す事に成りましたの。まあ、降霊会と言っも、名の有る霊能者や魔術師を呼んで、術を見せて貰う程度の他愛もないものだと伺っていますわ」
「その特殊な趣味のお友達と言うのは、ローレンスの手帳に挟まれていた名簿のメンバーと言う事ですかな?」
「ええ、その通りですわ、ストーカーさん。もっとも、あの名簿に書かれていたお名前は、降霊会に参加されていた方々が名乗っていた、偽名、というかニックネームの様な物でしたけれど。因みに前大使閣下はダンテ・アリギエーリと、名乗って居られた様ですわ」
「神曲ですか……まあ、似合うかどうかはともかく、らしい選択ですな」
「お聞きした限り、その降霊会は前大使閣下の人柄もあって、当初は和気あいあいとしたもので有ったと。ですが、発足から一年ほど経って、前大使閣下がある白人の男性を連れて来られたとの事ですわ。恰幅が良く、少々横柄な人物でらしたと伺っていますわ。暫くして、その人物が覆面をされて、参加する様に成ったとのこと。フフフ♪何か後ろめたい事でも思い付いたのかしら♪」
「確か、公使の自室の金庫から、白い覆面が発見されたと報告を受けているが……その人物が公使だと?」
「ええ、大使閣下。当時、降霊会に参加されていた方数人に、覆面を見て貰って確認が取れていると伺っていますわ」
「それで、お嬢さん。その前大使と、公使の特殊な趣味……降霊会と仰いましたかな。その降霊会とローレンス君の事件は何か関係が有るのですかな?」
「勿論ですわ、ですけれど、お話しは順序だてて♪」
「覆面の人物……公使閣下が降霊会に参加する様に成って、降霊会の様相が一変することに。次々に身なりの良い人物が参加される様に成って、降霊会と言うより、まるで社交界の様相でらしたと。前大使や古い参加者の方達は、皆さんウンザリされていたらしいですわ。そして……それから半年程経った頃、今から約一年半程前の話ですわね、前大使閣下がお亡くなりになったのは」
「覚えていますよ。突然、お倒れに成って……そして、そのまま……」
ストーカーさんが、暫し目を閉じ、思い返す様に、そう話す。
「その後、降霊会は公使閣下が、主催者を引き継ぎに成られた様なのですけれど……さらに趣が一変したと。何しろ、公使閣下の主催する降霊会では、アヘンを使っていたという話ですわ。勿論、アヘンは降霊会で使うだけでなく、その会員の皆様をお相手に御商売も」
「公使の自室から見つかった、例の帳簿はその商いの物と?」
「その様ですわ、大使閣下。公使閣下にとって、この降霊会は実に都合の良いものだったのでしょうね。前大使閣下だけでなく、当初から参加者されていた皆さんも、有力者の方達ばかり。ある種のステータス目当てのお金持ちの方達を呼び込むのは、簡単でしたでしょうし、しかも、降霊会と言う秘密を共有できる場、アヘンの即売会場としては、都合が良かったと思いますわ、とっても♪」
「ミス蘆屋、貴女の仰り様は、公使が前大使の降霊会を乗っ取る為に近付いた、そして……その為に前大使を公使が……と。貴女は、そうお考えに成っているのでは有りませんかな?だとすれば、公使が前大使を害したと云う、何か証拠の様な物はお持ちか?」
「いいえ、さすがに、一年と半年も前の事、私はその様な証拠は持って居りませんわ。それに、そもそも前大使閣下の死を調べるのは私のお仕事では有りませんもの。どちらかと言えば、それは……大使閣下のお仕事なのでは?だからこそ、大使閣下はローレンスさんに調査を命じてらっしゃったのでは、有りませんの♪」
「最初に前大使閣下のお話しですわ。そういえば、この中で前大使閣下にお会いになった事がお有りの方は、ストーカーさんだけかしら?」
「いえ、私も以前お会いしたことが有りますよ。とても物腰の柔らかい、温厚な方でした」
そう、上村さんが答える。
まあ、外務官僚ですものね。
「前大使閣下に付いては、関わった方々のお話しや、燃えてしまいましたけれど、書庫に納められていた蔵書を見ても、そのお人柄を偲ばれますわ。もっともオタクでは有られたみたいですけれど♪」
前大使閣下が所蔵していた魔導書は、全て偽物だったわ。
それは、間違って集められた物なんかじゃなく、敢えて、そういう物を集めていた。
ご自身の趣味が、まかり間違えば危険な物に成ると、わきまえていたから。
「話は三年程前に遡りますわ。前大使閣下と、その特殊な趣味を共有なさっているお友達の皆さんが集まって、降霊会を定期的に催す事に成りましたの。まあ、降霊会と言っも、名の有る霊能者や魔術師を呼んで、術を見せて貰う程度の他愛もないものだと伺っていますわ」
「その特殊な趣味のお友達と言うのは、ローレンスの手帳に挟まれていた名簿のメンバーと言う事ですかな?」
「ええ、その通りですわ、ストーカーさん。もっとも、あの名簿に書かれていたお名前は、降霊会に参加されていた方々が名乗っていた、偽名、というかニックネームの様な物でしたけれど。因みに前大使閣下はダンテ・アリギエーリと、名乗って居られた様ですわ」
「神曲ですか……まあ、似合うかどうかはともかく、らしい選択ですな」
「お聞きした限り、その降霊会は前大使閣下の人柄もあって、当初は和気あいあいとしたもので有ったと。ですが、発足から一年ほど経って、前大使閣下がある白人の男性を連れて来られたとの事ですわ。恰幅が良く、少々横柄な人物でらしたと伺っていますわ。暫くして、その人物が覆面をされて、参加する様に成ったとのこと。フフフ♪何か後ろめたい事でも思い付いたのかしら♪」
「確か、公使の自室の金庫から、白い覆面が発見されたと報告を受けているが……その人物が公使だと?」
「ええ、大使閣下。当時、降霊会に参加されていた方数人に、覆面を見て貰って確認が取れていると伺っていますわ」
「それで、お嬢さん。その前大使と、公使の特殊な趣味……降霊会と仰いましたかな。その降霊会とローレンス君の事件は何か関係が有るのですかな?」
「勿論ですわ、ですけれど、お話しは順序だてて♪」
「覆面の人物……公使閣下が降霊会に参加する様に成って、降霊会の様相が一変することに。次々に身なりの良い人物が参加される様に成って、降霊会と言うより、まるで社交界の様相でらしたと。前大使や古い参加者の方達は、皆さんウンザリされていたらしいですわ。そして……それから半年程経った頃、今から約一年半程前の話ですわね、前大使閣下がお亡くなりになったのは」
「覚えていますよ。突然、お倒れに成って……そして、そのまま……」
ストーカーさんが、暫し目を閉じ、思い返す様に、そう話す。
「その後、降霊会は公使閣下が、主催者を引き継ぎに成られた様なのですけれど……さらに趣が一変したと。何しろ、公使閣下の主催する降霊会では、アヘンを使っていたという話ですわ。勿論、アヘンは降霊会で使うだけでなく、その会員の皆様をお相手に御商売も」
「公使の自室から見つかった、例の帳簿はその商いの物と?」
「その様ですわ、大使閣下。公使閣下にとって、この降霊会は実に都合の良いものだったのでしょうね。前大使閣下だけでなく、当初から参加者されていた皆さんも、有力者の方達ばかり。ある種のステータス目当てのお金持ちの方達を呼び込むのは、簡単でしたでしょうし、しかも、降霊会と言う秘密を共有できる場、アヘンの即売会場としては、都合が良かったと思いますわ、とっても♪」
「ミス蘆屋、貴女の仰り様は、公使が前大使の降霊会を乗っ取る為に近付いた、そして……その為に前大使を公使が……と。貴女は、そうお考えに成っているのでは有りませんかな?だとすれば、公使が前大使を害したと云う、何か証拠の様な物はお持ちか?」
「いいえ、さすがに、一年と半年も前の事、私はその様な証拠は持って居りませんわ。それに、そもそも前大使閣下の死を調べるのは私のお仕事では有りませんもの。どちらかと言えば、それは……大使閣下のお仕事なのでは?だからこそ、大使閣下はローレンスさんに調査を命じてらっしゃったのでは、有りませんの♪」
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