ゲームキャスターさくら

てんつゆ

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飛行機墜落 高度1万メートル、フライトeスポーツ1

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 町内会のくじ引きで特賞を当てた私は忍さんと忍さんのお姉さんの鳴海さんの3人で沖縄旅行に行き、現在は帰りの飛行機の中で私は観光ガイドを見ながらまったりしているのでした。


「ねぇ桜。さっきからずっとそれ読んでるけど飽きないの?」
「行けなかった場所が結構ありましたので楽しいです。それに次に行く機会があった時の予習にもなりますし」
「まあ桜が楽しいなら別にいいんだけど。――――あ、ナル姉写真見せて」
「ええ、いいわよ」 

 忍さんは余程退屈なのか、隣に座っている鳴海さんがスマホで撮影した写真を見せてもらう事にしたみたいです。 

「では、私は読書の続きでも―――――――おや?」

 観光ガイドのページをめくると広告をいくつか掲載しているページがあったのですが、私はそこに気になる広告を発見したのでした。

「忍さん。もうすぐ新作のデジタルカードゲームのサービスが始まるみたいです」
「へ~。ゲームバーでやったような微妙なやつ?」

 どうやら忍さんは写真を見る事でいっぱいで上の空のみたいです。

「いえ。これはトレーディング要素もあって、ルールも本格的な――――――」

 ――――――ガコン。 

 と音がしたと思った瞬間、一瞬飛行機がぐらついて乗客の皆さんがどうしたんだろ?とざわめき始めた後、しばらくしてからキャビンアテンダントのお姉さんが慌てながら私達の乗っているエリアの扉をあけて駆け込んで来ました。

「お、お客様の中にブレイド・アンド・マジックのプレイヤー様はいらっしゃいませんか?」 

 キャビンアテンダントさんは、なにやら神妙な面持ちで非常事態が起こったかの様にあたふたしています。
 私も一応プレイはしているのですが、どうしたものでしょうか。 

「――――ねえ、桜。私達ブレマジ出来るよね?」
「確かにそうですが、私達の腕前で大丈夫でしょうか。足手まといになる可能性もありますし、ひとまずは様子を見たほうが――――――」 


 私と忍さんがどうした物かと相談していると、後ろの方の座席から。

「私なら多少腕に覚えがあるが構わないか?」

 と、ぶっきら棒ながら少し凛々しさと幼さが合わさったような澄んだ声が聞こえてきました。 

「は、はい。誠に申し訳ないのですがお時間よろしいでしょうか?」
「ああ。ちょうど退屈してた所だ」

 声の人物は席から立ち上がりキャビンアテンダントさんの場所までてくてくと歩いて進んで行き、私達の横を通り過ぎた時に一瞬だけ目が合いました。
 フード付きのパーカーを深く被っていたので顔は良く見えなかったのですが、年は私達と同じくらいの小柄な男の子みたいです。

 少しだけ気恥ずかしくなった私は目線をそらして下を向くと、その人物の手には金色のカバーの本が持たれている事に気がつきました。

 ―――――――あれ? あの本どこかで見た事があったような…………。
 私は記憶の糸を辿っていくと、ある1つの限定書籍に辿り着いたのでした。 

「ああああっ!? それはブレマジ・ゴールデン・ガイドブック!!」 

 私は驚きのあまり座席を立ってしまいました。 

「きゅ、急にどうしたの桜?」
「な、何でもありま――――」 

 平常心を取り戻した私は再び席につこうとしたのですが、キャビンアテンダントのお姉さんが。 

「お客様もブレマジプレイヤーでしょうか?」
「い、いえ。私は――――」
「この本を知ってるって事はお前もやった事があるんじゃないか?」
「そ、それは――――」 

 あの人の持っている本はブレマジ・ゴールデン・ガイドブックと言って公式大会の上位入賞者だけに渡される表紙が金色に輝いている特別な本です。
 私もいつか手に入れたいと思っているのですが、なかなか大会に出る機会が無くて手に入らなかった本が突然目の前に現れたので我を忘れてしまいました。

「ねえ、桜。他にいなそうだし手伝ってあげたら?」
「そうですね。困っているようなので行ってきます」 

 私も覚悟を決めてキャビンアテンダントさんの場所まで歩いて向かい行きました。

「はい。私はそこまで上級プレイヤーでは無いですが、一応出来ます。あの…………後もう1人、私の友達も出来るのですが呼んできた方がいいですか?」
「いえ、操作端末が2つなので問題ありません」 

 操作端末? その飛行機の端末とブレマジに何か関連性があるのでしょうか。 

「それで、私達はどうすればいいんだ?」 


 フードパーカー君がキャビンアテンダントさんに質問をすると。 

「そうでした。ここではなく端末室で説明をいたしますので、少しご同行お願いします」 

 と、どうやら私達は端末室という場所に行くことになったようなので、私は忍さんと鳴海さんにちょっと行ってきますと目配せをしてからキャビンアテンダントさんの後をついて行く事にしました。

 忍さんと鳴海さんは呑気にいってらっしゃ~いと手を降って返してくれたみたいです。 

 しばらく飛行機の中を後ろの方へと進んでいくと、座席の一番うしろにカードキーで施錠されている分厚そうな扉が設置してあり、キャビンアテンダントさんが胸ポケットからカードを取り出しシャカッとカードを機械にすべらせて認証すると、扉に付いている赤いランプが緑色に切り替わって、ゴゴゴと重厚な音を立てながらゆっくりと少しづつ開いて行きました。 

「こちらです」

 私とフードパーカー君はキャビンアテンダントさんの後に続いて部屋の中に入ると、端末室には机の上に2個の鳥型デバイスが置いてありました。
 どうやらこの航空会社のマスコットキャラのツバサールくんがモチーフのデバイスみたいです。

 キャビンアテンダントさんは後ろの扉を閉めて声が他の乗客さん達に聞こえないのを確認すると、現在の状況を話してくれました。 

「実は先程の衝撃で飛行機のローラーを収納している場所のシステムがトラブルを起こしてしまい開かなくなってしまったのです」
「ええっ!? そ、それはかなりマズイ状況では――――ハッ!?」 

 思わず大声を上げてしまった私はしまったと思って急いで口を両手で塞ぎました。 

「すみません。ビックリしてしまって、つい…………」
「大丈夫です。扉は閉めてありますので他のお客様には聞こえませんから」

 どうやら扉がしまっていたおかげで何とか外には声が漏れなかったみたいです。
 次からは気をつけないといけません。

「ふぅ、危なかったです。――――それで、私達は何をすればいいんでしょうか?」
「実はこの飛行機のシステムにブレイドエンジンを利用しているので、メンテナンスをするのにはブレマジプレイヤー様の助けが必要なのです」

 ――――ブレイドエンジン。

 たしかブレイドアンドマジックのゲーム開発に使われたゲームエンジンで、その汎用性の高さから今では医療機器や車のナビなど幅広く使われているようになっていたとガイドブックで読んだ記憶がありました。

「なるほど、この飛行機はそっち系でしたか」
「はい。ですのでお二人には飛行機が空港に到着するまでの間にシステムのトラブル復旧をお願いしたいのですが―――――」 

 少し前にテレビで最近は飛行機の制御にもブレマジエンジンが使われたようになったと見た記憶があるのですが、まさか偶然乗ったこの飛行機に最新のシステムが搭載されていたなんて驚きです。

 確かゲームにログインしたら整備用のマップに移動して、マップ上にある飛行機の故障箇所に対応したオブジェクトに修理ツールを使うか非常用のスイッチを押すと正常に動作するようになる感じのシステムだった気がします。

「はい、大丈夫です。私達に任せてください」
「なら早速始めないか」

 時間が惜しいのかフードパーカー君はフードを脱ぐとフードの下から流れるような長い黒髪が滴り落ち、私はパーカー君の肩にかかった髪の毛を右手ですくう動作に見とれてしまいました。


 …………って、長い髪?
 少し変に思った私は正面に回って顔を覗いてみる事にすると、そこには……………。

「わわっ!? フードパーカーさんでした!?」
「―――――ん? なにか言ったか?」
「いえ、何でも無いです」

 ぶっきら棒な物言いと鋭い目つきからてっきり男の子だと思っていたのですが、どうやら女の子だったみたいです。


 
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