ゲームキャスターさくら

てんつゆ

文字の大きさ
37 / 128

リベンジマッチ2

しおりを挟む

 
「あ、あのっ。和希さん!」

 和希さんは私の事に気が付いて足を止めて振り向きました。

「まったく、お前とはなにかと縁があるみたいだな」
「おんなじ学校だったなんてビックリです」
「――それで? 私に何か用でもあるのか?」
「その…………似てる人を見かけたので、もしかしてって思って声をかけたのですが」
「…………用が無いなら私は帰るぞ? それに連絡先は渡してあるから用がある時はそっちに連絡してくれ」

 そう言って和希さんは門から出てバス停の方に向かって行きました。

 ――――せっかくゲームが上手い知り合いが出来たのだから、もっと仲良くなりたいのに中々うまくはいかないみたいです。

 なにかきっかけでもあればいいのですが…………。
 
 あっ!? そう言えば一緒にブレマジで遊ぶ約束をしてたんでした。

「あのっ。今日一緒にブレマジやりませんか?」

 和希さんは再び足を止めてこっちを向きました。

「別に構わないが、18時くらいからでもいいか?」
「は、はいっ。では18時から一緒のチームで遊びましょう!」

 和希さんとチームを組むのは飛行機事故以来で凄く楽しみです。
 上手く行けば一緒に大会に出てくれるようになるかもしれませんし。
 
 …………と、思ったのですが。

「チーム? すまないが私はソロ専用なんだ。だから対戦プレイにしてくれないか?」
「ええっ!? この前は一緒にチーム組んだじゃないですか!?」
「あの時は非常事態だったからな。それに、いちいち仲間を気にしてゲームをするのは面倒だ」
「あの……そこを何とかなりませんか?」
「だいたい何でそんなにチームでやりたいんだ?」
「実は今、大会に一緒に出てくれるチームメイトを探してて、もしかしたら和希さんとは連携もバッチリかなーとか思って――――」
「あいにく私は大会もソロしか興味ないんだ。チームメイトなら他をあたるんだな」

 ――――ガガーン。

 速攻で私のチーム構成が崩れ去ってしまいました。
 和希さんが仲間になってくれたら、切り込み隊長として凄く心強いのに!

 こうなったらもうあれしかないっ!!


「あ、あのっ。だったら今から私と勝負してください!!」
「18時から勝負するだろ?」
「いえ今から和希さんと勝負するのはクラウンデュエルです。私が勝ったらチームで遊んで下さい!」
「…………」

 和希さんは少し考えてから。

「なら1回だけやってやる。お前が負けたらチーム戦は諦めるんだな」
「は、はいっ! では、対戦は学校のeスポ室を使わせてもらいましょう」
 
 私達は対戦をする為の施設へと向かって行きました。

 …………けれど。

「ええっ!? 全部使用中!?」
「ごめんね~。タッチの差で埋まっちゃったんだ」

 施設の管理人さんに聞くと、どうやら全ての部屋が使われているらしく、かなり待たないと順番は回って来ないとの事でした。

「ど、どうしましょう?」
「ここが駄目なら河川敷あたりでやればいいんじゃないか?」
「……河川敷で?」
「簡易フィールドならそれなりの広ささえあれば問題ないだろ?」
「そうなんですか?」
「…………? お前がクラウンデュエルやろって言ってきたんだが…………もしかして、やった事ないのか?」
「いえ。数回やった事はあるんですが……」
「まあいい。設定は私がやってやるから、お前はナビを呼んでこい」
「わかりました」

 私はシャンティに通信を入れて来てもらうと、和希さんと一緒に学校の近くにある河川敷へと移動しました。

 和希さんも自分のナビを既に呼んでいて、今はお互いに10メートルくらい離れた位置で対面しています。


「ルールはこっちが決めて構わないか?」
「はい。私はどんなルールでもいいです」
「だったら、まずはナビを装着しろ」
「わ、わかりました。――――では、シャンティ行きますよ!」
「ほいほいっと」
  
 変身した私はいつも通りの決めポーズ!

「桜花爛漫(おうからんまん) 風宮 桜 参上ですっ!!!!」

 そして、和希さんも続いてポーズを取りました。

「色即是空(しきそくぜくう) 仙道 和希 見参!」

 ああっ!?
 ついに…………ついに念願の2人での決めポーズをする事が出来ました。
 忍さんに何回お願いしても「い、嫌に決まってるでしょ!」と断られた2人での決めポーズが!!!!

 …………っと、それより今は対戦の事を考えないといけませんね。

 これからもずっと一緒にポーズを取って貰うために!!!!

 お互いにポーズが終わった所で和希さんが何やら設定をすると、バイザー越しに仮想フィールドが出現しました。


 これで対戦の準備は完了です。
 そして和希さんが対戦ルールを告げました。

「クラスリミット・フリー、ツー・ライフ、ノーマルフィールド・シングルバトル!」
「わかりました。クラスリミット・フ…………フリー!? スリーじゃなくて!?」
「――――どうかしたのか?」
「えっと……フリーって制限なしって事ですよね?」
「なにか問題でもあるのか? こっちがルールを決めていいって言ったのはお前だろ?」
「い、いえ。大丈夫です。…………では、クラスリミット・フ、フリー。ツー・ライフ、ノーマルフィールド・シングルバトル!」


 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

月弥総合病院

僕君☾☾
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。 また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。 (小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!

処理中です...