魔王だが、弟子の勇者たちが追放されまくってるそうだな? ~かわりに魔王自ら勇者パーティに潜りこんだら、なんか勇者が詰んだ~

ねぎさんしょ

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第3章 前衛タンク

第84話

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 第3勇者隊は、統率のとれた部隊だった。
 あるいは、全員で統率をとろうとしている部隊だった。
 いや……そういう意思の行き届いた部隊をこそ、すなわち統率のとれた部隊というのかもしれないが。

 まあ。
 その。
 つまりだ。

「♪オークの女は いい女ーっ!」

 みんなで歩調をそろえながら歌う行軍歌が、いろいろ示してるってことだ。
 はい、オークの女はいい女ー!

「♪サイクロプスでも かまわないーっ!」

 サイクロプスでもかまわないー!
 いやそんなことないだろ。

「♪ペガサス群れると かわいくなーい!」

 ペガサス群れるとかわいくなーい!

「♪エルフのビンタは 破壊力ー!」

 エルフのビ、え、どーゆーこと?

「声が小さいぞ!! おい新入り、もっと腹から歌わんか!?」

「サーイエッサー!」

 行軍歌ってそういうんじゃなくない?
 いやまあ、いい訓練にもなってるのかもしれないが。

 ともあれ俺たちは、や、我々部隊は、順調に行軍を続けているのであります。
 自分とアリーシャが加わって3日ほど。
 目的地である「帰らずの洞窟」へ向け、気迫を込めて前進中なのであります。
 つーか、

「帰らずの洞窟って、さがせば各国にひとつはありそうなネーミングだよな、と思うであります」

「何か言ったかゼルスン!?」

「サーノーサー!」

「もうへこたれたのか!?」

「サーノーサー!」

「体力があまってるなら、あそこの岩場まで先行偵察に行ってこい! 走れ!」

「サーイエッサー!」

 ロームン騎士の命令に従い、駆け足の隊列から抜け出して、俺は槍を担ぐようにして走った。
 ああ、そう、うん。槍。
 部隊に加入したとき支給されたのだ。
 こういうの、スキル以外じゃあんまり持たないから、なんか新鮮だぞ。ふふふふ。カッコイイ。

 息など乱れるはずもなく、目標の岩場まで到達した。
 異常ナシであります。
 しかも水場を発見。ゼルス二等兵、めっちゃ優秀なのでは……
 ……ん。

「どうした? なにか見つけたか」

「近くに大型モンスターがいるようです、サー!」

 戻ってきた俺の報告に、馬上のロームン騎士が顔をしかめた。

「大型の……?」

「岩場の向こうに水辺があり、ぬかるみに足跡が残されておりましたサー! 自分が寝転がってつま先ちょっと出るかな、ぐらいの大きさでありましたサー!」

「そうか。いや、うん、あのやめろそれ」

「はいサー!?」

「そのサーっていうのやめろ! なんなんだそれ、ずっとやってるけど!?」

 えっ、人間の軍隊ってそーゆーんじゃないの!?
 特に新人はこうしろって、だってマロネが、だって。
 ……そうか。
 マロネか。
 ぜったいに許さない。

「駆け足、前進」

「は。全隊、駆けあぁーーーしッ!」

 見た目のわりにはよく通る声で、魔法使いユグスが姫の命令を復唱する。
 このユグスとロームンが、部隊の中でも別格の扱いらしい。

 ロームンは正式な国仕えの騎士。
 ユグスは契約冒険者上がりだというが、今の様子を見ても、部隊の中で幹部と認められてるんだろう。
 仮に、俺がここで成り上がるとしたなら、ユグスルートなわけだが……
 ふ~む……

「ン何を見とるんじゃい、クソガキャア……」

 ひい、見てるのばれてた。
 お馬さんの上からすごまないで高くてこわい。

「ワシの顔がそんなにおもしろいか、ええ?」

「サーノーサー!」

「ワシに愛嬌がないちゅうんか、コルア!?」

「サ、サーノーサー!」

「ふん。よう覚えとけよ、ワシゃまだ貴様を信用したわけではないからの。姫様の素直さはなにより尊いが、それだけにジジイは心配じゃ……ろくでもない若造にだまくらかされてしまわれぬか……」

 ご心痛しんつういかばかりか、サー……
 でも自分、たぶんサーより年上だと思うでありますサー。

「よいかクソガキ。貴様は冒険者隊じゃ、このワシの指揮下のな。今は数が少なく、ワシと貴様ら以外におらんが」

「少なすぎでは?」

「じゃかましい。正規兵と違って、貴様らのように現場で雇われる者が多いんじゃ。戦力も大事じゃが、素性にも警戒せねばならん。貴様らも、少しでも怪しい動きをしたら……」

「サー怪しくありませんサー!」

「言動だけで追放してやりたいわい。ほりゃ走れ! 遅れるでないわ!」

 ふむ……
 冒険者と正規兵は違う、か。そりゃそうだ。
 するとユグスこいつ、テミティの追放に関係してたりするのか?

 能力不足だのという追放理由は、もとより妙だと思っていたが。
 いろいろ当たりをつけなくちゃならんな……

「マロネよ」

 駆け足で置き去りにするように、小声で遠くへ呼びかける。

『は~いあなたのマロネです離れていても心はそばに』

「テミティ、お姫さんになにかやらかしたのか? 聞いてみてくれ」

 お姫さんのキッシュ奪って食ったとか。
 何回も足踏んだとか。
 人間とドワーフ、女と女、幾重にも垣根を乗り越えて禁断の関係に至ったとか。

『あ~。そういえば、マロネど忘れしておりました』

「む?」

『テミっち、今朝出てっちゃいました。置き手紙置いて。ラグラドヴァリエのとこ行きますって』

 ほう。
 は?
 うん。……うん?
 ……え。
 なっ……!?

『追いかけたほうがいいです?』

「追えッ!!」

 叫んでから。
 駆け足中の皆様の視線が、当然俺に集中したことに気づいて。
 俺は。その。
 いや。
 何やってんだテミティよ!?

「お……お、おえっ、おえっ! あ~走りすぎて気分悪くなってきた。歳かなあ~」

『あはははでしょうねえ』

 ぶっとばすぞ。


**********


お読みくださり、ありがとうございます。

次は6/10、19時ごろの更新です。
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