魔王だが、弟子の勇者たちが追放されまくってるそうだな? ~かわりに魔王自ら勇者パーティに潜りこんだら、なんか勇者が詰んだ~

ねぎさんしょ

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第3章 前衛タンク

第90話

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『せやかてアホですやん。めっちゃアレですやん。あのスケなめ散らかしてますやん。ふつーしばき回しますやん』

 西部の方言うまいなマロネ。
 イールギットのこと大好きだっただけある。

『さっきの見て、よくゼルス様が死ぬかも~とか思えますね? 目ンたまついてましたあいつ?』

「姫のお目々きれいだったぞ? はしばみ色っていうの? あれは魔族の中じゃ見ないなあ……」

『っは……ハアアアアアアっ? なんスか? なんスかそれ、浮気? 浮気!? 浮気っスかマジっスかちっくしょうゼルス様秘蔵の酒瓶ぜんぶ割ってやるううう!!』

「やめろ絶対やめろ何が浮気だッ!? わけのわかんねえこと言うな!」

『マロネのおめめもきれいですもん! きれいですもんっ! キーキーッ!』

「わかったわかった、帰ったら穴あくほど見てやるから! 1回テンション落とせ!」

『へい』

「お、おう……すばやくて重畳」

『てゆーか、ど~せゼルス様のことだから、「勇者隊を率いながらも部下を危険にさらすことない義侠心の持ち主でさらに自らカバーできる範囲を超えた原因を取り除くということは自分の力を知っているということで謙虚な心もあるこれは真の勇者セオリナ姫激萌え」とか思ってるんでしょ?』

「め……めちゃくちゃな早口でのご指摘、痛み入りますなあ……!」

 まさにそう思ってたけど。
 だって。ねえ。だって。

「ほんとだったらすごいじゃないか! ほんとだったら勇者じゃないか!」

『まあ……ほんとだったら、ってのがついてるだけ、今までのご経験が活きてると思うことにしますが』

「ぐぬぬぬ。なんでおまえがそんなえらそうなんだ……」

『マロネは最初から、人間なんぞ信じちゃいません。セオリナとやらも、まがい物の勇者だと思います』

「何を根拠に?」

『あんな遠い目する真の勇者いてほしくないですし』

「願望キタコレ」

『それはともかくとしても、さっき死んでた・・・・からです』

 そこだな。
 不死隊。
 セオリナは、知ってて当然みたいに……むしろ、自分の隊が不死隊と呼ばれているから、俺やアリーシャが入ってきたと思っていたようだった。
 俺の情報収集が甘かっただけで、おそらく軍の内部では有名なんだろう。

 兵隊が死なない部隊。
 サーガなんかじゃ、たまに見る話ではあるが……

『あの剣のスキルを、やたらと頼みにしてるみたいでしたけど。スタンなんて、さほど珍しいわけでもなし……効かない相手も多いわけで』

「確かにな。俺の感覚でも、マロネと同じだ」

『だしょ? だしょ? うそっぱちですって、やっぱり。ほんとは万単位で部下死なせてますって』

「だが、そんなうそって成立するか? そもそもつこう・・・と思わないだろう。戦いを避けてきた結果とも思えん。グルキオストラにはセオリナから向かっていったんだ、民の生活を守るという実に勇者チックな理由で」

『う……それは~……』

「俺はよけいなことをしてしまったようだな。テミティならきっとああすると思って、1人でグルキオストラを止めたが……部隊の兵卒としていっしょに逃げていれば、姫がどう切り抜けたかわかったのに」

『! マロネひらめいちゃいましたっ☆』

「許可しない」

『えー』

「トンデモモンスター喚び出して、勇者隊襲わせようってんだろ。ダメだぞ、そんな逆八百長みたいなこと! この魔王が許さぬ!」

『久々の魔王らしからぬお言葉あざーす……っと』

 口をつぐむマロネにあわせて、俺は振り返った。
 馬から下りた魔法使い、ユグスがこっちに近づいてくる。

 その手には、小さな革袋。
 かたわらにはアリーシャもついてきている。

「ゼルスンよ……」

「ユグス殿……」

「っくふぅわーーーっはっはっはっはっはっ!! ざまぁねえのう!!」

「うぬぬぬ、やっぱりな……!」

 小バカにされるとわかってたわ!!

「早晩こうなるとワシャ思っとったわい! 追放じゃ追放じゃ、がわははははははは!」

「くっ……! ロームンなら、騎士ロームンなら別れを惜しんでくれたはずなのにっ……!」

「知るかい! おら、おやさしくておやさしくてしょうがない姫様からのお恵みじゃ。持っておうち帰れ」

「ぬうー。遺憾でありますサー」

「なんじゃ? なぜくやしがる」

「そりゃあまあだって」

 くやしい……だろ?
 あれ? くやしくないのか? 普通は。

「ふん。何の不満があるのやら。その袋の重さがわからんのか?」

「はあ……確かに重いですサー」

「破格の除隊金じゃ。貴様にはもったいないが、規則で決まっとるもんはしょうがない。ほんの数日行軍して、ちょろっと危ない目にあって、それだけせしめたなら上出来じゃろが」

「……姫にも申し上げましたが。兵隊は死んでなんぼ、なのでは?」

「はっ! この期に及んでイキるのう。それは姫様が最もお嫌いになる考えじゃ。この部隊ではゆるされん」

「なるほど……」

 損か、得か。
 それでいえば、なるほどユグスの言う通り、俺は得をしたのかもしれないな。
 近くの村酒場で、しばらくどんちゃん騒ぎができるだけの金貨が、袋に入ってるんだろう。

 だが……
 能力不足。
 テミティのあの言葉には、もうひとつ意味があった気がしてならない。
 死ぬとか死なないとか、そういう戦いの場での意味じゃなく……

 セオリナがなぜ、兵士を1人も死なさずにすんでいるのか。
 テミティはそれを、見切れなかった。
 だから部隊にしがみつくことなく、追放されるままに出てきた。
 そういうことだろう? やっと言葉が足りたぞ、テミティよ。

「連れも、いっしょに出てゆくか? いちおう2人分あずかったが」

 ユグスの言葉に、アリーシャが視線を合わせてきた。
 ほんの1秒にも満たない時間。
 それだけで、俺の意図をすべて拾ってくれる。

「いえ。わたしはまだ、この部隊で経験を積ませていただきたく思っております」

「左様か? まあ、おぬしのほうが、集団行動の適性も高そうじゃし、ワシとしちゃ助かるが……」

「よろしくお願いいたします」

「っぷふ! さびしいのうゼルスン! 2人で来たのに1人で帰る気分はどうじゃ――」

 ぺこ、と俺はユグスに頭を下げた。
 そのまま言う。

「アリーシャのこと、よろしくお頼みする」

「……な……ふ、ふんっ! なんじゃい……調子の狂う……」

「よろしくお頼み、しましたぞ」

 よくよく。
 ゆめゆめ。
 忘れないでほしいものだな……?


**********


お読みくださり、ありがとうございます。

次は7/10、19時ごろの更新です。
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