魔王だが、弟子の勇者たちが追放されまくってるそうだな? ~かわりに魔王自ら勇者パーティに潜りこんだら、なんか勇者が詰んだ~

ねぎさんしょ

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第3章 前衛タンク

第91話

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 なにやらぶつくさこぼしながら、ユグスが俺に背を向ける。
 そのあとに従うアリーシャも、セオリナ同様、こっちを振り返らなかった。

 それでいい……
 頼んだぞアリーシャ……
 魔王、さびしくなんてないから……

『ジジイに図星突かれた気分はどうっスか~? プークスクス』

「おまえ……マジでいっぺんひと晩中、ベッドで物みたいに扱ってやろうか……」

『ええっ!? きゃ~んっ、ゼルス様の魔王らしいところに魔王魔王されちゃう~!? マロネ大ピンチかも! オナシャスッ!!』

「いい……やっぱいやだ……勝てる気がまったくせんわ」

『ま~、冗談は2人きりのときにもっかいやるとして。アリーシャたんを残したのはなぜです?』

「ん? ああ、まあな」

『そんなことしなくても、別にマロネ、ゼルス様のおゆるしなくこの隊を焼き尽くしたりはしませんよ? マジで。マジでマジで』

 お……?
 なんだなんだ、こいつ。
 声の調子こそ冗談めかしてるが……ラグラドヴァリエのときより激怒しキレてるんじゃないか?

 そーゆーのちょっと、愛いとか思っちゃう。
 帰ったら、ま、頭のひとつもなでてやるか。

「セオリナをさぐってくれるつもりなんだろう、アリーシャは。マロネにも、同じことを頼むつもりでいたがな」

『お。ガッテンで……いた・・? どういうことです? 部隊のほうを調べろってことかしらん?』

「いいや、するな」

『ほ?』

「勇者隊については、いっさい調べる必要はない。下手に動いて、万がいち痕跡が残ったらことだ。マロネには、テミティの……ラグラドヴァリエのほうのバックアップに、本腰入れてもらおうか」

 マロネからの返事はなかった。
 なにやら考えこむ様子のあと、じわじわと不機嫌さが沈黙ににじんでくる。
 出せるんじゃねーかよ、そういう雰囲気……

『なんか……な~んかあ~……ゼルス様だけ、いろいろわかっちゃった感じですう~?』

「おお。わかっちゃった。かもしれない」

『なにそれ!? ずるいずるいずるい~! 浮気はするしわかっちゃうし、ずるい~っ!』

「どういう感想だよ……しょーがないだろ? ただでさえマロネは現場にいなくて、俺はいるわけだし」

 部隊が、グルキオストラの解体にかかっている。
 俺はそろりときびすを返し、平原を南へと戻りはじめた。
 槍も投げちゃったから、手ぶらで……

 ……な……
 なんか、確かに……さびしい……!
 ちょっとまってやっぱゴメンナサイして部隊に戻らせてもらおうかなっ!?

『そのまま魔王城うちまで帰ってきてくださいよ~。マロネ、い~っぱいお慰めしちゃいますよっ? うふふっ☆』

「チッ……珍しくまともにかわいくなりやがって。やれやれ……、マロネ。感覚同調をゆるす」

『お~……えっ?』

「俺の五感とおまえの五感を重ねてよい。少しのあいだだけだぞ」

『っっっ……身にあまる光栄!!』

 人間の、高位司祭なども扱うスキルのひとつ、感覚同調。
 遠く離れた相手の情報を、識るのではなく体験することができる。
 わざわざ言葉で表現しなくても、ものの数秒で状況を伝達できるわけだな。
 我が勢力下では俺と、案の定マロネだけが使うことができる。

 極めて便利なスキルだが、普段はやらない。
 絶対やらない。
 術者同士の完全な合意がいるし、消費エネルギーが大きいし、時間があるときは魔力感応でしゃべればそれでじゅうぶんだし。
 なにより……

「いいぞ、接続して。こっちは感覚を開いた――」

『接続しましたヨッシャもう放さねえゼルス様ゼルス様ゼルス様ハアハアハアハア!!』

「ひやあああああああなにやってんのこの子ッ!?」

 相手の感覚もこっち来ちゃうからうおおおおおおなにこれ下半身がああああああ!?

『もっとギューしてそこんとこもっとギューしてそいでもってこすってやんやんやんやんっ♪』

「らめええええええ熱いいいいいデリケートな部分が熱いのおおおおおおお!!」

『好き好き好き好きめっちゃ好き好きゼルス様も絶対好きでしょオラ好きって言えやああああああ!!』

「のおおおおおおお接続解除ッ!!」

『きゃんっ』

 ハア……ハア……!
 や、やはりか……! 危ないところだった……
 反逆を企ててもいない部下に体を乗っ取られるところだった……

 遠目には、さびしく歩み去る俺が突然荒野に身を投げ出し、叫びながら七転八倒しているように見えただろうか。
 ように、ってかそうなんだが。
 おのれ……!

「マロネ……マロネてめえ……!」

『ハアっ……ハア……げほっ、ハア……て、てへっ。ちょっと悪ノリしちゃいました、ごめりんしゃんっ☆』

「咳き込むぐらい欲望ブン回しといて、さらっと流してもらえるとでも思ったかね……!? おまえがそーゆーことばっかするから、これ気軽に使えないんだからな!? てか当初の目的忘れてるだろ!」

『え~、人聞きの悪い~。忘れてませんよお』

「ほう!? 言ってみろや!!」

『うふふふ、まあ~、上手に隠してるみたいですけどお』

 さっきのジジイ、
 と、マロネの声色が数段階落ちた。

龍臭い・・・、ですね。人間じゃない。なるほど』

「……ふん」

『勘違いしてる、いや、させられてるのは勇者姫のほう、ですか。……ゼルス様、どうなさるおつもりで?』

 まあ……
 さすが、と言っておこうか。
 ヘンタイでなければ、これ以上ない右腕なんだけどなあ。ヘンタイでなければ。

「なにも変わらん。テミティが追放された、本当の理由がわかればいい」

『勇者姫はやっぱりまがい物っぽいですねえ』

「さてな? わからんぞ。いずれにせよ、追放理由のおおもとがセオリナであろうが、違っていようが、正当なものならば今後の修行に反映させる。不当ならば……」

『ならば』

「がっかりする」

 遠く離れた本拠地で、マロネががっかりしている気配が伝わってきた。
 なんでなんで?


**********


お読みくださり、ありがとうございます。

次は7/15、19時ごろの更新です。
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