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思い出は忘れた頃に訪れる
#8
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秋の穏やかな気温が続いていましたが、今日は昨晩からの雨で少し肌寒く感じます。
寒く感じるものの、雨音が響く室内はいつもより静かで読書に適しています。
リィとフィルマも室内で過ごしており、リィはソファの上で寝そべり、フィルマは器用に本を読んでおります。
私は読書ではなく、昨日再び入手したナツメでコンポートを作っております。
部屋中に甘い香りが広がりますが、お二方が嫌がっていないようで安心します。
煮詰めたナツメを瓶に移し冷ましている間、お二方に許可を得てから部屋の換気をしようと窓を開けます。
湿った冷たい空気が流れ込み、部屋の甘い香りを薄めていきます。
『キー君や』
外を眺めていた私にリィが声を掛けてきます。
「はい」
『あのマリエッタ? って女、一応調べてはみたんだけどさ』
「何かわかりましたか?」
リィがいつもとは違い、少し言いにくそうに答えます。
『トラオは問題ないって言ってんだろ?』
「変わった女性とは仰ってましたが、特別なものは無いとも仰ってました」
『うーん、ならアタイらがこっちに帰って来てからなのかねぇ……』
リィは寝返りを打ってから起き上がり、ソファの肘掛に座ります。
『トラオが調べた時とは違うみたいでさ、あの女空き巣の常習犯さな』
「空き巣ですか?」
『って言っても、大したもん盗む訳じゃなくて、間違って無くした? くらいの小物を盗んでは捨ててるんだってさ』
「捨てるのですか?」
あの気配の無さに加え常習犯なら難しい事ではないのかもしれません。
しかし捨ててしまうとは、ただの嫌がらせとしか思えません。
『意味が分からないだろう? それにキー君も聞いたところでどうしようもないさな、と思って言うか迷ってたんだけど』
「被害に遭われた方の事を思うと、誰かに教えて差し上げるのが良いかもしれませんが」
『一応トラオには言ったら『オレなりに調べてみる』って言ってたし、まぁ近いうちに何とかなるかもしれないさな』
既に手を打ってたとは、リィは仕事が早いです。
『ついでにあの昼行灯の事聞かれたさね』
「あぁ、ルスランと先日お店で遭遇しましたから、そのせいでしょう」
店で目覚めたルスランにオランディへ来た理由を聞きましたが、何とも要領を得ない回答でした。
マスカレードを見に来たとは言ってましたが、あと二週間程もあります。
衣装が仮面がと言ってましたが、どことなく何かを隠しているような雰囲気がありました。
『一応悪いヤツじゃないし、吸血鬼らしいとこが無い事も言っといたが、アイツ何かしたのかい?』
「カーラ様を魅了させておりました」
『はァ? 男相手にかい?』
「私達には能力を使っていないのは分かりますが、ビャンコ様はご存知なかったので仕方なかったかと思います」
ルスランが誰かを瞳で操る場合、分かりやすく瞳の赤みが強くなります。
あの時は特に変化はなかったため、特別何かしていた訳ではないのでしょう。
『何しに来たんだい? あの昼行灯』
「さぁ、マスカレードとは聞いてますが」
『胡散臭いね、まぁこっちに迷惑かけないなら好きにしたら良いさね』
リィの言う通りだと思います。
本当に観光を楽しむためだけに来たのなら、私達には関係の無いことです。
師匠から伝達があった以上何かあるとは思いますが、ルスランが言わないのなら私達が出来ることもありません。
ナツメのコンポートの一部は店に持っていき、一部はドゥイリオ様にお渡ししましょう。
お茶とよく合いますので、気に入っていただけると良いのですが。
───────
本日のモウカハナにはメル様とミケーノ様がご来店されております。
ほとんど同じ時刻にご来店され、今はお食事が済みアツカンを飲みかわしていらっしゃいます。
「最近プレゼント用に小物を買う人が多くて、マスカレード近いなぁって思います」
「そういや再来週だったな、今年はどうすんだ?」
「まだ決まってないんですけど、僕はリュンヌの貴族みたいなのにはしないつもりです」
「今年はメルみたいなのが珍しいんじゃねぇか? 大変だろ貸衣装」
「はい、今年は本当にすごいです。他のお店でも売れてるらしいんで、来週からドレス着てる人増えると思いますよ」
メル様の言葉に、ミケーノ様が呆れたように眉をさげます。
「よくやるよなぁ、着るのも脱ぐのも大変だろ?」
「そうですね、髪も頑張らないといけませんし」
「シオがサラマン温泉で何かするって言ってたけどよ、ドレスの奴ばっかじゃ厳しくなるのかもなぁ」
「確かに、でもシオさんなら何かしそうですよね」
「そうだな、俺たちが心配する事でもねぇか」
そう言ってミケーノ様が笑い、つられてメル様も笑います。
「今年は恋人同士で予約に来るお客さんが多いんです、店長も忙しいけど楽しそうで明るいです」
「なんか知り合いのホテルもそうだってよ、今年はモメ事多かったからだろうな。男の方が挽回しようとしてるって話だ」
「そうなんですね」
「あとそうだ、例のオレンジの髪のいただろ? アイツ働いてたホテル、クビになったって聞いたな」
「クビ? って、ついに何かしたんですか?」
ミケーノ様がビュッフェの際に聞いた話を簡単に説明なさいます。
メル様は心当たりがあるのか、話の途中から苦笑いをなさっています。
「相手で態度変える子だなぁって思ってましたけど、思ったより酷いですね」
「なんかカーラはお前の反応で気づいたっつってたな」
「お客さん相手にダメなんですけど、すごく露骨に変えるからつい」
「ホテルの奴も同じこと言ってたな、クビになる前からそう思ってる奴多かったんだってよ」
メル様はお店での事を思い出したのか、少し眉根を寄せオチョコを傾けます。
それから小さく息をついて、オチョコをテーブルに置きます。
「クビになったのもそれが理由なんですか?」
「いや、客室の鍵束盗んだからとは聞いたが」
「えっホテルのですか?」
ミケーノ様のお話によれば、夜間に外出されたお客様から「鍵を紛失してしまった」と受付に相談があった事が始まりです。
「あれ、鍵って受付に渡しませんか普通?」
「なんか急いでたらしくて鍵持ってっちまったんだってよ、たまにそういう客もいるらしいから珍しい事でもないんだと」
受付の方がすぐに合鍵を使って客室へ案内しようとしたところ、鍵束がいつもの場所に店で見当たらず。
やむを得ずたまたま空室だった部屋にご案内し、その間に鍵屋を呼ぶ羽目になったそうです。
幸いお客様と揉める事はなく、宿泊料金を安くする事で対応なさったとか。
「それで、その子が鍵束を持ってたんですか?」
「そこがハッキリはしねぇんだが……支配人が誰に聞いても出て来なかったんだが、ソイツに聞いた少し後に元の場所に戻ってたってんだと」
「うーん、それだとその子が犯人とは言い難いですね」
メル様の仰る通りだと思いますが、かなり怪しいと思われても仕方ないように思います。
「あぁ、だがその後でソイツが客室から出てくるところを見た奴が出てきてな。最初は客室係だからだと言ってたが、鍵束の騒動の後ソイツ客室に入る仕事から外されたんだ。だからどうやって入ったか問い詰められて、何も説明しないまま出勤しなくなって、そのままクビになったんだとよ」
「じゃあ結局真相は闇の中、ですか?」
「みたいだな。合鍵作ったんじゃねぇか? って疑いもあるから、客室の鍵全部取り替えたってよ。この忙しい時期に災難だよなぁ」
ミケーノ様はトックリから二つのオチョコへお酒を注ぎ、メル様が少し慌てた様子で受け取ります。
「盗難被害とか無かったんですかね、合鍵作るなんて他に目的が分からないですし」
「そういうのも特になかったらしいし、結局なんだったんだか」
「うーん、僕だったらどうするかなぁ……こっそり日記読んじゃったりかなぁ」
「ハハッ、そりゃ怒られんな」
真剣に考えているメル様を見ながらミケーノ様は穏やかに笑っています。
「証拠不十分で逃亡、ですね。なんか他でもそういう事やってそうな気もしますけど、大丈夫なんですかね」
「来週にでもホテルの組合で話すって言ってたから、近いうちに新聞か噂かで広まるだろうよ」
ミケーノ様がオチョコを手にした時、メル様が小さく「あ」と声に出します。
「あの子が名前分かったのって、お客さんの名簿見たからじゃないですか?」
「俺は泊まった事ねぇから違うんじゃねぇか?」
「うーん、じゃあお客さんの中に取引先の名簿持ってた人がいたとか!」
「あー、だがそれだとお前の名前が分かった理由にならねぇだろ」
ミケーノ様からの反論に納得し、メル様の眉間にシワが寄ります。
「っと、このまま話したいんだが」
「あれ、帰っちゃうんですか?」
メル様の眉間が元に戻り、少し驚いたような表情をなさいます。
「明日から夜はマスカレードの準備するから、その分下拵え始める時間早くすんだよ」
そう言って、オチョコの中身を一気に傾けます。
「あの女、最近姿を見ないらしくてな。前まではちょっと変な奴くらいだったけど、もし見かけたら気をつけろよ? 特にキーノス、お前最近会ったんだってな」
「えぇ、ですが何もありませんでした」
「なら良いが、お前変に優しいからなぁ」
それならミケーノ様の方が心配です、とは答えず、会計した伝票をお渡しします。
ミケーノ様はそのまま会計を済ませ、手をひらひらと振りながらお店をあとになさいました。
「ミケーノさんってかっこいいですね、やっぱり」
「私もそう思います」
私はミケーノ様が使っていらした食器類を片付けるため、調理場へ戻ろうかと思います。
メル様は先日と同様に荷物をお席に持ってきております。
おそらく先日の図鑑に関してまた何かお話があるのかもしれません。
寒く感じるものの、雨音が響く室内はいつもより静かで読書に適しています。
リィとフィルマも室内で過ごしており、リィはソファの上で寝そべり、フィルマは器用に本を読んでおります。
私は読書ではなく、昨日再び入手したナツメでコンポートを作っております。
部屋中に甘い香りが広がりますが、お二方が嫌がっていないようで安心します。
煮詰めたナツメを瓶に移し冷ましている間、お二方に許可を得てから部屋の換気をしようと窓を開けます。
湿った冷たい空気が流れ込み、部屋の甘い香りを薄めていきます。
『キー君や』
外を眺めていた私にリィが声を掛けてきます。
「はい」
『あのマリエッタ? って女、一応調べてはみたんだけどさ』
「何かわかりましたか?」
リィがいつもとは違い、少し言いにくそうに答えます。
『トラオは問題ないって言ってんだろ?』
「変わった女性とは仰ってましたが、特別なものは無いとも仰ってました」
『うーん、ならアタイらがこっちに帰って来てからなのかねぇ……』
リィは寝返りを打ってから起き上がり、ソファの肘掛に座ります。
『トラオが調べた時とは違うみたいでさ、あの女空き巣の常習犯さな』
「空き巣ですか?」
『って言っても、大したもん盗む訳じゃなくて、間違って無くした? くらいの小物を盗んでは捨ててるんだってさ』
「捨てるのですか?」
あの気配の無さに加え常習犯なら難しい事ではないのかもしれません。
しかし捨ててしまうとは、ただの嫌がらせとしか思えません。
『意味が分からないだろう? それにキー君も聞いたところでどうしようもないさな、と思って言うか迷ってたんだけど』
「被害に遭われた方の事を思うと、誰かに教えて差し上げるのが良いかもしれませんが」
『一応トラオには言ったら『オレなりに調べてみる』って言ってたし、まぁ近いうちに何とかなるかもしれないさな』
既に手を打ってたとは、リィは仕事が早いです。
『ついでにあの昼行灯の事聞かれたさね』
「あぁ、ルスランと先日お店で遭遇しましたから、そのせいでしょう」
店で目覚めたルスランにオランディへ来た理由を聞きましたが、何とも要領を得ない回答でした。
マスカレードを見に来たとは言ってましたが、あと二週間程もあります。
衣装が仮面がと言ってましたが、どことなく何かを隠しているような雰囲気がありました。
『一応悪いヤツじゃないし、吸血鬼らしいとこが無い事も言っといたが、アイツ何かしたのかい?』
「カーラ様を魅了させておりました」
『はァ? 男相手にかい?』
「私達には能力を使っていないのは分かりますが、ビャンコ様はご存知なかったので仕方なかったかと思います」
ルスランが誰かを瞳で操る場合、分かりやすく瞳の赤みが強くなります。
あの時は特に変化はなかったため、特別何かしていた訳ではないのでしょう。
『何しに来たんだい? あの昼行灯』
「さぁ、マスカレードとは聞いてますが」
『胡散臭いね、まぁこっちに迷惑かけないなら好きにしたら良いさね』
リィの言う通りだと思います。
本当に観光を楽しむためだけに来たのなら、私達には関係の無いことです。
師匠から伝達があった以上何かあるとは思いますが、ルスランが言わないのなら私達が出来ることもありません。
ナツメのコンポートの一部は店に持っていき、一部はドゥイリオ様にお渡ししましょう。
お茶とよく合いますので、気に入っていただけると良いのですが。
───────
本日のモウカハナにはメル様とミケーノ様がご来店されております。
ほとんど同じ時刻にご来店され、今はお食事が済みアツカンを飲みかわしていらっしゃいます。
「最近プレゼント用に小物を買う人が多くて、マスカレード近いなぁって思います」
「そういや再来週だったな、今年はどうすんだ?」
「まだ決まってないんですけど、僕はリュンヌの貴族みたいなのにはしないつもりです」
「今年はメルみたいなのが珍しいんじゃねぇか? 大変だろ貸衣装」
「はい、今年は本当にすごいです。他のお店でも売れてるらしいんで、来週からドレス着てる人増えると思いますよ」
メル様の言葉に、ミケーノ様が呆れたように眉をさげます。
「よくやるよなぁ、着るのも脱ぐのも大変だろ?」
「そうですね、髪も頑張らないといけませんし」
「シオがサラマン温泉で何かするって言ってたけどよ、ドレスの奴ばっかじゃ厳しくなるのかもなぁ」
「確かに、でもシオさんなら何かしそうですよね」
「そうだな、俺たちが心配する事でもねぇか」
そう言ってミケーノ様が笑い、つられてメル様も笑います。
「今年は恋人同士で予約に来るお客さんが多いんです、店長も忙しいけど楽しそうで明るいです」
「なんか知り合いのホテルもそうだってよ、今年はモメ事多かったからだろうな。男の方が挽回しようとしてるって話だ」
「そうなんですね」
「あとそうだ、例のオレンジの髪のいただろ? アイツ働いてたホテル、クビになったって聞いたな」
「クビ? って、ついに何かしたんですか?」
ミケーノ様がビュッフェの際に聞いた話を簡単に説明なさいます。
メル様は心当たりがあるのか、話の途中から苦笑いをなさっています。
「相手で態度変える子だなぁって思ってましたけど、思ったより酷いですね」
「なんかカーラはお前の反応で気づいたっつってたな」
「お客さん相手にダメなんですけど、すごく露骨に変えるからつい」
「ホテルの奴も同じこと言ってたな、クビになる前からそう思ってる奴多かったんだってよ」
メル様はお店での事を思い出したのか、少し眉根を寄せオチョコを傾けます。
それから小さく息をついて、オチョコをテーブルに置きます。
「クビになったのもそれが理由なんですか?」
「いや、客室の鍵束盗んだからとは聞いたが」
「えっホテルのですか?」
ミケーノ様のお話によれば、夜間に外出されたお客様から「鍵を紛失してしまった」と受付に相談があった事が始まりです。
「あれ、鍵って受付に渡しませんか普通?」
「なんか急いでたらしくて鍵持ってっちまったんだってよ、たまにそういう客もいるらしいから珍しい事でもないんだと」
受付の方がすぐに合鍵を使って客室へ案内しようとしたところ、鍵束がいつもの場所に店で見当たらず。
やむを得ずたまたま空室だった部屋にご案内し、その間に鍵屋を呼ぶ羽目になったそうです。
幸いお客様と揉める事はなく、宿泊料金を安くする事で対応なさったとか。
「それで、その子が鍵束を持ってたんですか?」
「そこがハッキリはしねぇんだが……支配人が誰に聞いても出て来なかったんだが、ソイツに聞いた少し後に元の場所に戻ってたってんだと」
「うーん、それだとその子が犯人とは言い難いですね」
メル様の仰る通りだと思いますが、かなり怪しいと思われても仕方ないように思います。
「あぁ、だがその後でソイツが客室から出てくるところを見た奴が出てきてな。最初は客室係だからだと言ってたが、鍵束の騒動の後ソイツ客室に入る仕事から外されたんだ。だからどうやって入ったか問い詰められて、何も説明しないまま出勤しなくなって、そのままクビになったんだとよ」
「じゃあ結局真相は闇の中、ですか?」
「みたいだな。合鍵作ったんじゃねぇか? って疑いもあるから、客室の鍵全部取り替えたってよ。この忙しい時期に災難だよなぁ」
ミケーノ様はトックリから二つのオチョコへお酒を注ぎ、メル様が少し慌てた様子で受け取ります。
「盗難被害とか無かったんですかね、合鍵作るなんて他に目的が分からないですし」
「そういうのも特になかったらしいし、結局なんだったんだか」
「うーん、僕だったらどうするかなぁ……こっそり日記読んじゃったりかなぁ」
「ハハッ、そりゃ怒られんな」
真剣に考えているメル様を見ながらミケーノ様は穏やかに笑っています。
「証拠不十分で逃亡、ですね。なんか他でもそういう事やってそうな気もしますけど、大丈夫なんですかね」
「来週にでもホテルの組合で話すって言ってたから、近いうちに新聞か噂かで広まるだろうよ」
ミケーノ様がオチョコを手にした時、メル様が小さく「あ」と声に出します。
「あの子が名前分かったのって、お客さんの名簿見たからじゃないですか?」
「俺は泊まった事ねぇから違うんじゃねぇか?」
「うーん、じゃあお客さんの中に取引先の名簿持ってた人がいたとか!」
「あー、だがそれだとお前の名前が分かった理由にならねぇだろ」
ミケーノ様からの反論に納得し、メル様の眉間にシワが寄ります。
「っと、このまま話したいんだが」
「あれ、帰っちゃうんですか?」
メル様の眉間が元に戻り、少し驚いたような表情をなさいます。
「明日から夜はマスカレードの準備するから、その分下拵え始める時間早くすんだよ」
そう言って、オチョコの中身を一気に傾けます。
「あの女、最近姿を見ないらしくてな。前まではちょっと変な奴くらいだったけど、もし見かけたら気をつけろよ? 特にキーノス、お前最近会ったんだってな」
「えぇ、ですが何もありませんでした」
「なら良いが、お前変に優しいからなぁ」
それならミケーノ様の方が心配です、とは答えず、会計した伝票をお渡しします。
ミケーノ様はそのまま会計を済ませ、手をひらひらと振りながらお店をあとになさいました。
「ミケーノさんってかっこいいですね、やっぱり」
「私もそう思います」
私はミケーノ様が使っていらした食器類を片付けるため、調理場へ戻ろうかと思います。
メル様は先日と同様に荷物をお席に持ってきております。
おそらく先日の図鑑に関してまた何かお話があるのかもしれません。
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