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第二十五話 愛を伝える方法
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ヘルミーネは地下室のドアがノックされる音を聞いて、はじめて朝が訪れていた事を知った。
朝日が射す窓もない部屋なのだから、知らずにいても当然ではある。だが仮に窓があったとしても、ヘルミーネが朝の訪れに気が付けたとは思えない。一睡もせぬまま続いた心の葛藤は、それほど深く彼女を自分の中に閉じ籠めてしまっていた。
ノックをしたのはグロリエンがヘルミーネの為に寄越した侍女である。侍女とはいってもおそらくは王国の工作員だ。彼女はテキパキとヘルミーネの身だしなみを整えると、今度はあらかじめ用意していた朝食をテーブルへと並べ始めた。
ヘルミーネは特に空腹を感じてはいない。しかし何も手を付けなかったら侍女が困るだろうと、形だけの食事をとったようだ。
「ありがとう、美味しかったわ」
「紅茶のお代わりは如何ですか?」
「大丈夫。もうあとは一人で平気だから、貴女は帰っていいわよ」
すると侍女は一礼してから、「グロリエン王太子殿下よりお言付けが御座います」と言って背筋を伸ばした。
途端、それまで精気のなかったヘルミーネの瞳に妖しい光が宿る。
「えっ! グロリエン殿下は何て?」
「はい、本日の平和友好会議にヘルミーネ様はご出席なされませんようにとの事です。会議終了次第グロリエン王太子殿下はこちらに参ると仰っておられました」
「それだけ?」
「はい、それだけです」
「そう……ありがとう」
侍女が帰った後、ヘルミーネはグロリエンの事を考えながら部屋の中を行きつ戻りつしている。
(私が会議に出席したら何か不味い事でもあるのかしら。いいえ不味いに決まってるわ。今の私は何かしらの精神攻撃を受けている状態なんですもの)
その落ち着きのない様子からは、昨夜からの葛藤が今もなお続いている事が見て取れる。それも刻々と激しくなって。
(けど……。もしかしてグロリエン様の方に不都合があるのだとしたら。たとえば私に会わせたくない女性がいるとか……。いいえ、そんなワケあるはずがないわッ! だってそれじゃまるで……)
片時も途絶える事なくヘルミーネを蝕んでゆく加護比翼の鳥。もしアスマンが今のヘルミーネの姿を見たら、思惑通りに暗殺計画が進んでいる事に満足し酷薄な笑みを浮かべたに違いない。
それにしても番を失った比翼の鳥とは何と哀れな鳥なのだろうか。今のヘルミーネはあたかもその番を狂おしく捜し回る片割れの鳥のように見えた────
◇*◇*◇
その頃グロリエンは馬車に揺られながら、手にした一枚の紙を睨んでいた。
彼はペイルディス帝国との平和友好会議が開催される国際会議場へ向かう道すがら、その車中で魔法院から届いた特急郵便を読んでいたのだ。
昨夜ヘルミーネと別れた後すぐに、ヘルミーネの受けた精神攻撃についての質問書を魔法院へ送ったグロリエンは、その回答書が思ったよりも早く届いた事に安堵している。
(──ヘルミーネと同じ症状をおこす可能性は、今のところ三つしかないのか。意外と少ないんだな)
魔法院はフェンブリア王国の賢人たちで組織された王立の研究機関であり、主に魔法と加護についての知識に詳しい。
ちなみにグロリエンは質問書を送ったその足で、精神攻撃をしてきた使用人の捜索も工作員たちに命じていた。そちらの報告は未だない。
(魅了の呪い、悪霊リリスの子、それに加護比翼の鳥か……)
魅了の呪いの可能性が消えているいま、残るは二つとなる訳だ。しかし悪霊リリスの子を呼び出すには、大掛かりな儀式が必要だと書かれている。
グロリエンとヘルミーネがいた現場には、その様な儀式の痕跡は見当たらなかった。
となると残ったのは加護比翼の鳥だ。本来は対象者を強制的に恋愛状態にさせ、その恋愛を成就させるという精神支配系の加護らしい。
しかしそれが何らかの理由で失敗し、片方のみが精神支配されると現在のヘルミーネに酷似した症状となるようだ。
(加護比翼の鳥……)
今の処もっとも可能性が高いのは、この加護による攻撃だなとグロリエンは思った。
加護ならば行為者本人による解除が可能である。もしくは行為者が死亡すれば加護自体の効果も消える。しかしあの使用人の男を今更探しだすのは難しいだろう。となれば解除方法を試すしかないのだが。
(解除方法は恋愛成就のみだって!?)
つまりヘルミーネの状態異常を消滅させる方法は、ヘルミーネ自身がグロリエンと愛し合っている実感を持たねばならないという事のようだ。
(これって俺がヘルミーネに愛情を示せば、状態異常が消えるって事か?)
それでヘルミーネの助けになるのなら、グロリエンに躊躇う理由はない。そもそも彼はすでにヘルミーネを愛しているのだから。
だがここで肝心なのは、『気持ちは伝えなければ伝わらない』という至極当たり前な恋愛の法則である。現にグロリエンの秘めたる愛情はヘルミーネに届いてはいない。
だから直接的に愛情を伝え、ヘルミーネに実感してもらう必要がある。
(う~む。やはり直接的となるとプロポーズがいいのだろうか……)
そこでグロリエンは頭を抱えてしまう。ヘルミーネより強くなってこそ彼女に相応しい男としてプロポーズが出来ると、グロリエンはずっとそう考えてきた。
だが彼は未だヘルミーネに一度も勝てた事がない。つまりグロリエン的にはまだヘルミーネに相応しい男になってはいないのだ。
(って事は、俺は君にまだ相応しくない男だけど、結婚して貰えますかって言う様なものじゃないか?)
たとえヘルミーネの為だとはいえ、これでは不誠実すぎるとグロリエンは二の足を踏んでしまった。
(いや駄目だろ。俺的には絶対却下だッ)
そこでグロリエンは今更ながら気がついた。何もプロポーズにこだわる必要は無いのだと。
要するにこの比翼の鳥という加護は、互いに愛し合っているという記憶を刷り込ませる異能なのだろう。ならば自由恋愛でもこと足りるはずだ。
(つまりヘルミーネとラブラブカップルになれって事か!)
あまりにも単純明快な答えであったが、それだけに一番効果がありそうでもあった。
だというのにグロリエンは実に情けない顔をして溜め息を吐く。
(困った、俺の最も苦手な分野だぞ……)
ヘルミーネとラブラブの自分をちょっと想像しただけで、グロリエンは耳まで赤くして照れ始めた。
しかしこれしか手段がないのなら照れている場合ではない。大きく深呼吸をしたグロリエンは握りしめた拳を天井へ向けて突き出すと、自分自身を叱咤する。
「俺は何を狼狽えているんだッ、ラブラブカップルやってやろうじゃないかっ!」
思わず声を大きくしてそう宣言したグロリエンに、馭者が何事かと振り向いた。
「殿下、何か仰いましたか?」
「あ、いや、何でもない、よ……」
「ハッ、間もなく会議場に到着致します」
グロリエンはそそくさとして王太子の威厳を取り繕い、これから始まる会議に気持ちを切り替えようとする。
しかしそのすぐ側から、ヘルミーネの心配をしていまう始末なのだ。
(あいつ、部屋で大人しく待っていてくれてるかな……)
正直いまのグロリエンは、会議で帝国との平和を語るどころではない。
世界の平和を標榜する自分がこれでは情けないとも思うのだが、今は少しだけ世界平和に目を瞑ってもらおうとグロリエンは思った。
◇
三日間開催される平和友好会議では、初日から両国の若い貴族たちが活発に意見を交換し合っていた。
王国と帝国がこの会議をどこまで本気に考えているかは分からない。しかし少なくともこの場の様子は、両国の未来に明るい兆しを感じさせるのに十分な熱量がある。
そんな中で一人だけ未来に関心など全くなさそうに、腕を組んで沈思している男がいた。アスマン伯爵である。
(やれやれ、ヘルミーネが欠席するとは誤算であったな。加護の効果を確かめたかったのだが……)
ヘルミーネがグロリエンに匿われている予測はついていた。しかしペイルディス帝国の秘密諜報員がいくら優秀だとはいえ、グロリエンの隠れ家を易々とは見つけられるとは思えない。
それだけに比翼の鳥に侵されたヘルミーネの現状を、この会議で確認しておきたかったのだ。
(ふむ。だがまあ王太子の表情に別段憔悴したところはみられないし、となるとやはり修羅場はまだ先か)
この暗殺計画の成否がヘルミーネ次第であるだけに、アスマンとしても気が揉めるところだろう。
それにヘルミーネが返り討ちにあった場合の準備もある。修羅場に居合わせる必要はないが、グロリエンの回復を待たずに急襲はしたい。
そうなれば最悪公の場でグロリエンを殺す事になるだろう。しかしアスマンはそれでも構わないと考えている。
帝国としてはグロリエンさえ死んで居なくなれば、フェンブリア王国との戦争もやぶさかではないのだ。
(それはそれで楽しそうだな──)
そんなアスマンが微かに笑みを浮かべた時、扉の外から何やら騒がしくする人々の声が聞こえてきた。
「ただいま確認して参りますので、どうか暫くお待ち下さい!」
一体外では何が起きているのだろうかと、貴族の若者たちも会議を中断させて外の様子を窺っている。
「私は出席者ですわ、何も問題ございません。そこを退きなさいっ!」
その声に表情を変えた者が二人いる。グロリエンとアスマンだ。
(ヘルミーネ!?)
バンッと大きな音を立てて両開きの扉が開けられると、果たしてそこに見えたのは確かに仁王立ちしたヘルミーネの姿であった。
朝日が射す窓もない部屋なのだから、知らずにいても当然ではある。だが仮に窓があったとしても、ヘルミーネが朝の訪れに気が付けたとは思えない。一睡もせぬまま続いた心の葛藤は、それほど深く彼女を自分の中に閉じ籠めてしまっていた。
ノックをしたのはグロリエンがヘルミーネの為に寄越した侍女である。侍女とはいってもおそらくは王国の工作員だ。彼女はテキパキとヘルミーネの身だしなみを整えると、今度はあらかじめ用意していた朝食をテーブルへと並べ始めた。
ヘルミーネは特に空腹を感じてはいない。しかし何も手を付けなかったら侍女が困るだろうと、形だけの食事をとったようだ。
「ありがとう、美味しかったわ」
「紅茶のお代わりは如何ですか?」
「大丈夫。もうあとは一人で平気だから、貴女は帰っていいわよ」
すると侍女は一礼してから、「グロリエン王太子殿下よりお言付けが御座います」と言って背筋を伸ばした。
途端、それまで精気のなかったヘルミーネの瞳に妖しい光が宿る。
「えっ! グロリエン殿下は何て?」
「はい、本日の平和友好会議にヘルミーネ様はご出席なされませんようにとの事です。会議終了次第グロリエン王太子殿下はこちらに参ると仰っておられました」
「それだけ?」
「はい、それだけです」
「そう……ありがとう」
侍女が帰った後、ヘルミーネはグロリエンの事を考えながら部屋の中を行きつ戻りつしている。
(私が会議に出席したら何か不味い事でもあるのかしら。いいえ不味いに決まってるわ。今の私は何かしらの精神攻撃を受けている状態なんですもの)
その落ち着きのない様子からは、昨夜からの葛藤が今もなお続いている事が見て取れる。それも刻々と激しくなって。
(けど……。もしかしてグロリエン様の方に不都合があるのだとしたら。たとえば私に会わせたくない女性がいるとか……。いいえ、そんなワケあるはずがないわッ! だってそれじゃまるで……)
片時も途絶える事なくヘルミーネを蝕んでゆく加護比翼の鳥。もしアスマンが今のヘルミーネの姿を見たら、思惑通りに暗殺計画が進んでいる事に満足し酷薄な笑みを浮かべたに違いない。
それにしても番を失った比翼の鳥とは何と哀れな鳥なのだろうか。今のヘルミーネはあたかもその番を狂おしく捜し回る片割れの鳥のように見えた────
◇*◇*◇
その頃グロリエンは馬車に揺られながら、手にした一枚の紙を睨んでいた。
彼はペイルディス帝国との平和友好会議が開催される国際会議場へ向かう道すがら、その車中で魔法院から届いた特急郵便を読んでいたのだ。
昨夜ヘルミーネと別れた後すぐに、ヘルミーネの受けた精神攻撃についての質問書を魔法院へ送ったグロリエンは、その回答書が思ったよりも早く届いた事に安堵している。
(──ヘルミーネと同じ症状をおこす可能性は、今のところ三つしかないのか。意外と少ないんだな)
魔法院はフェンブリア王国の賢人たちで組織された王立の研究機関であり、主に魔法と加護についての知識に詳しい。
ちなみにグロリエンは質問書を送ったその足で、精神攻撃をしてきた使用人の捜索も工作員たちに命じていた。そちらの報告は未だない。
(魅了の呪い、悪霊リリスの子、それに加護比翼の鳥か……)
魅了の呪いの可能性が消えているいま、残るは二つとなる訳だ。しかし悪霊リリスの子を呼び出すには、大掛かりな儀式が必要だと書かれている。
グロリエンとヘルミーネがいた現場には、その様な儀式の痕跡は見当たらなかった。
となると残ったのは加護比翼の鳥だ。本来は対象者を強制的に恋愛状態にさせ、その恋愛を成就させるという精神支配系の加護らしい。
しかしそれが何らかの理由で失敗し、片方のみが精神支配されると現在のヘルミーネに酷似した症状となるようだ。
(加護比翼の鳥……)
今の処もっとも可能性が高いのは、この加護による攻撃だなとグロリエンは思った。
加護ならば行為者本人による解除が可能である。もしくは行為者が死亡すれば加護自体の効果も消える。しかしあの使用人の男を今更探しだすのは難しいだろう。となれば解除方法を試すしかないのだが。
(解除方法は恋愛成就のみだって!?)
つまりヘルミーネの状態異常を消滅させる方法は、ヘルミーネ自身がグロリエンと愛し合っている実感を持たねばならないという事のようだ。
(これって俺がヘルミーネに愛情を示せば、状態異常が消えるって事か?)
それでヘルミーネの助けになるのなら、グロリエンに躊躇う理由はない。そもそも彼はすでにヘルミーネを愛しているのだから。
だがここで肝心なのは、『気持ちは伝えなければ伝わらない』という至極当たり前な恋愛の法則である。現にグロリエンの秘めたる愛情はヘルミーネに届いてはいない。
だから直接的に愛情を伝え、ヘルミーネに実感してもらう必要がある。
(う~む。やはり直接的となるとプロポーズがいいのだろうか……)
そこでグロリエンは頭を抱えてしまう。ヘルミーネより強くなってこそ彼女に相応しい男としてプロポーズが出来ると、グロリエンはずっとそう考えてきた。
だが彼は未だヘルミーネに一度も勝てた事がない。つまりグロリエン的にはまだヘルミーネに相応しい男になってはいないのだ。
(って事は、俺は君にまだ相応しくない男だけど、結婚して貰えますかって言う様なものじゃないか?)
たとえヘルミーネの為だとはいえ、これでは不誠実すぎるとグロリエンは二の足を踏んでしまった。
(いや駄目だろ。俺的には絶対却下だッ)
そこでグロリエンは今更ながら気がついた。何もプロポーズにこだわる必要は無いのだと。
要するにこの比翼の鳥という加護は、互いに愛し合っているという記憶を刷り込ませる異能なのだろう。ならば自由恋愛でもこと足りるはずだ。
(つまりヘルミーネとラブラブカップルになれって事か!)
あまりにも単純明快な答えであったが、それだけに一番効果がありそうでもあった。
だというのにグロリエンは実に情けない顔をして溜め息を吐く。
(困った、俺の最も苦手な分野だぞ……)
ヘルミーネとラブラブの自分をちょっと想像しただけで、グロリエンは耳まで赤くして照れ始めた。
しかしこれしか手段がないのなら照れている場合ではない。大きく深呼吸をしたグロリエンは握りしめた拳を天井へ向けて突き出すと、自分自身を叱咤する。
「俺は何を狼狽えているんだッ、ラブラブカップルやってやろうじゃないかっ!」
思わず声を大きくしてそう宣言したグロリエンに、馭者が何事かと振り向いた。
「殿下、何か仰いましたか?」
「あ、いや、何でもない、よ……」
「ハッ、間もなく会議場に到着致します」
グロリエンはそそくさとして王太子の威厳を取り繕い、これから始まる会議に気持ちを切り替えようとする。
しかしそのすぐ側から、ヘルミーネの心配をしていまう始末なのだ。
(あいつ、部屋で大人しく待っていてくれてるかな……)
正直いまのグロリエンは、会議で帝国との平和を語るどころではない。
世界の平和を標榜する自分がこれでは情けないとも思うのだが、今は少しだけ世界平和に目を瞑ってもらおうとグロリエンは思った。
◇
三日間開催される平和友好会議では、初日から両国の若い貴族たちが活発に意見を交換し合っていた。
王国と帝国がこの会議をどこまで本気に考えているかは分からない。しかし少なくともこの場の様子は、両国の未来に明るい兆しを感じさせるのに十分な熱量がある。
そんな中で一人だけ未来に関心など全くなさそうに、腕を組んで沈思している男がいた。アスマン伯爵である。
(やれやれ、ヘルミーネが欠席するとは誤算であったな。加護の効果を確かめたかったのだが……)
ヘルミーネがグロリエンに匿われている予測はついていた。しかしペイルディス帝国の秘密諜報員がいくら優秀だとはいえ、グロリエンの隠れ家を易々とは見つけられるとは思えない。
それだけに比翼の鳥に侵されたヘルミーネの現状を、この会議で確認しておきたかったのだ。
(ふむ。だがまあ王太子の表情に別段憔悴したところはみられないし、となるとやはり修羅場はまだ先か)
この暗殺計画の成否がヘルミーネ次第であるだけに、アスマンとしても気が揉めるところだろう。
それにヘルミーネが返り討ちにあった場合の準備もある。修羅場に居合わせる必要はないが、グロリエンの回復を待たずに急襲はしたい。
そうなれば最悪公の場でグロリエンを殺す事になるだろう。しかしアスマンはそれでも構わないと考えている。
帝国としてはグロリエンさえ死んで居なくなれば、フェンブリア王国との戦争もやぶさかではないのだ。
(それはそれで楽しそうだな──)
そんなアスマンが微かに笑みを浮かべた時、扉の外から何やら騒がしくする人々の声が聞こえてきた。
「ただいま確認して参りますので、どうか暫くお待ち下さい!」
一体外では何が起きているのだろうかと、貴族の若者たちも会議を中断させて外の様子を窺っている。
「私は出席者ですわ、何も問題ございません。そこを退きなさいっ!」
その声に表情を変えた者が二人いる。グロリエンとアスマンだ。
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