6 / 53
第一章 柴イヌ、冒険者になる
第六話 イヌの魂
しおりを挟む
オレはどこかでまだ人間の身体になってしまった事に、実感が持てないでいたのかもしれません。
でも人間のリリアンさんが間違いなく人間の身体だと言った以上、もはや疑う余地はなさそうです。
「コテツ殿、人間の身体になる病気とは一体何なのですか?」
リリアンさんが心配そうにオレに訊いてくれました。この人はいつも優しいですね。
「オレ、柴イヌなんです。こんな人間の身体になってしまいましたが、本当はモフモフの素晴らしい毛並みと愛くるしい尻尾があったんです。四本の足でしっかり歩けて、声だってちゃんと吠えることが出来て……きっとリリアンさんもそんなイヌのオレを見たら、思わず可愛い! と言ってしまうでしょう。なにせ人気ナンバーワンとまで言われていましたからね……フッ。しかしご主人様と会うために病気になったのです」
「えっと……はあ……」
「ご主人様はそんな可愛い柴イヌだからこそオレを飼ってくれたんです……でもオレはもうイヌの身体でないから、ご主人様に捨てられてしまうかもしれません」
「あっ! そのコテツ殿の病とはもしかして
──」
リリアンさんもようやくこの恐ろしい病気のことを分かってくれたようですね。
「はい……」
「そうだったのですか。でも無理ないと思います……そんな過酷な人生を歩んでこられて。もし私だったら気が狂っていたかもしれません……」
ん、過酷な人生? いや、こんな身体になる前は幸せでしたが。
「なるほど、心の病ですか……それはさぞかしお辛いでしょうね……」
は? 心の病?
「ご事情を存じ上げない私が申し上げるべきではないとは思います。でも! いくら主従関係だからと言って、人間を犬扱いしていいわけありません。ましてや犬でなけれは価値がないと思い込ませてしまうほど、コテツ殿の心を追い詰めるなど鬼畜の所業ですっ!」
「いやリリアンさん? オレ本当にイヌなんですけど……」
「いいえ違いますっ! コテツ殿は人間ですッ! 心の傷について他人の私が気安く言える事はありませんが……それでもどうか忘れないで下さい、コテツ殿は誰かの為に自分以外のものになんかならなくていいんですッ!」
そう言ってリリアンさんはポロリと涙をこぼしました。何をオレに伝えたかったのかよく分かりませんでしたが、オレを思って一生懸命だったのは分かりました。
「オレ、早く病気を治したいです」
「はい、私では力不足でしょうけど、もしよければお役に立たせて下さい」
だけど今のオレはイヌなのか人間なのか、一体どっちなのかな?
あっ、そういえばご主人様に会えるからと、この知らない場所に連れて来てくれたおじさんが言っていましたね。オレはイヌのタマシイをもった人間になるんだって。
タマシイって何なんでしょう?
「リリアンさん、タマシイって何ですか?」
「えっ、魂ですか? う~ん、難しいですが肉体を必要としない純粋で完全な自分……みたいな? よく分かりませんが!」
肉体って身体のことですよね。それがなくても自分なのですか? ほんとよく分かりませんね!
「タマシイと身体はどっちが自分なんでしょう?」
「それはやっぱり魂じゃないでしょうか」
なんとっ! おじさんはオレがイヌのタマシイを持っていると言っていました。それなら、身体は人間でもタマシイがイヌのオレはやっぱりイヌで間違いないですよねっ!
そっか──人間の身体を持ったイヌというだけのことですか。
なら焦らず病気が治るのを待ちましょう。尻尾もモフモフの体毛もなくて寂しいですが、我慢強い柴イヌに泣き言は似合いません。
「リリアンさんッ!」
「はい?」
「ありがとうございますッ!」
「へっ?」
オレはリリアンさんへの感謝の気持ちを、おもいっきり顔にペロペロすることで表しました!
「ちょっ! こ、コテツ殿? ま、まさかドキドキプレイをここで!?」
おや? ドアの向こうにいたモニカさんがすごい勢いで入ってきましたね。
「あらやだ、やっぱりこうなったんじゃないの! 油断も隙もないわねっ」
「も、モニカ! な、なんだよ急に入ってきてっ!」
「あんまり遅いからわざわざ仕事の手を止めて来てみたんじゃない。そしたらこれだもの……」
「こ、これってなんだ! 何もしていないからなっ! てか、タイミング良すぎだろ? お前外の鍵穴から覗いていて邪魔しにきたんじゃないのかッ!?」
「ひ、人を覗き女みたいに言わないでよ、下で仕事してたわよっ! てか、するならするで仲間に入れろって言ったでしょっ!」
「するかっ! この変態女ッ!」
はて? モニカさんは最初からずっと扉の向こうにいましたよね?
『おのれ、二人でさせるか』って呟きながら入ってきたのに、なんでウソを言うのでしょうか?
あ、わかりました!
「モニカさんは照れ屋さんなのですね! ずっと扉の外でハアハアしていたのになぜ入ってこないのか不思議でしたが、そういうわけでしたかっ」
「えっ? コテツさんはどうしてそれを知っているんですの!?」
「イヌは耳がいいので全部聴こえていましたよ!」
「やっぱりか……この覗き女めっ! コテツ殿、こいつは見掛けは金髪をアップにして、いかにも仕事の出来そうなクールビューティですが、中身は変態なので近寄っては駄目ですよっ! ちなみにメガネは伊達ですっ」
「と、とにかくッ! コテツさんの種族は判ったんでしょ? さっさと教えなさいよねっ」
「はいっ! オレは人間の身体をした柴イヌ族ですっ」
「えっ? コテツさん?」
「ちょ、ちょっとモニカこっちに来い……」
「な、なによ」
「あのな、色々とコテツ殿には深く辛い事情があるんだ。それで少々お心も病んでおられる……でも人間で間違いないからそう登録しておいてくれ」
リリアンさんがモニカさんを引っ張って、コソコソ話をしています。
しかもまだオレを人間だと言っていますね。でもまあ、もうどうでもいいかな。
オレはオレですからね、どう見えようとオレが自分をイヌだとわかっていればそれでいいんですっ!
「よくわからないけど……まあ、わかったわ……チラッ」
さっきからモニカさんとリリアンさんがオレのことをチラチラ見ていているのですが、まだ何か用があるのでしょうか?
「おいモニカ、あんまり裸を見るなよ! コテツ殿に無礼じゃないかっ」
「なによリリアン、あんただって見てるじゃないッ! チラッ、てかあんた、あの立派なモノを独り占めとか許さないわよっ?」
「ば、馬鹿っ、うるさいっ! コテツ殿、我々は先に行っておりますので、服を着たら下に降りてきてくださいね」
「いやよ、私はもっとイケメンの裸を見たいんだからっ!」
「モニカっ、黙れっ!」
ほんとに不思議な人たちです。お互い敵意もないのに何であんなに仲が悪いのでしょうか?……
ところでリリアンさんが服を着ろと言っていましたが、冗談じゃありません。
こんな窮屈なもの二度と着たくはないです。なので全部噛み破ってしまいましょう!
ボロボロになった服を見るのは、妙な満足感がありますね。というか、ここ最近ずっと噛んでいなかったので牙がウズきます。
ちょっとだけここにある家具を噛ましてもらおうかな……いえ! 決してイタズラしたいのではありません。これはイヌにとっての健康法なのです。
と言うことで──この硬そうな分厚いテーブルの端っこを……
──バキッ。
「……ぎゃっ!」
お、おかしいです、ひと噛みしただけなのにテーブルの端っこが砕け散りました。見つかったら確実に怒られる……絶対にオレがやったと白状してはダメなやつですね。
てか、何でしょうこの噛む力は。あきらかに異常でしょッ! もしかしてこれも『デキるオス』になったせいでしょうか?
とにかく危険なので本気で噛むのは禁止にしましょう。甘噛みする時はとくに注意です!
リリアンさんとモニカさんが今のテーブルが噛み砕けた音に気づいていないといいのですが……オレはそっと二人に聞き耳を立ててみました。
「ねえリリアン、さっき話してたコテツさんの深い事情ってなんなの?」
「うん……ちょっと私の口からは今はまだ言えないんだ。ただ……もし私がコテツ殿のような目にあっていたら、おそらくもう正気ではいられなくなっていると思う」
「そんなに酷い過去が?」
「ああ……だから、モニカもコテツ殿の変な言動には目を瞑ってやってほしい」
「そっかあ、わかったわ……」
ふう、どうやらオレの話をしていたようですが、テーブルのことはバレてはいないようです。ならばここは怪しまれないように、あえて堂々と登場した方が良さそうですね。
「あれ? コテツさん!?」
「モニカさん、リリアンさん、お待たせしましたっ!」
「こ、コテツ殿っ? な、なぜ裸のままなのですかっ!?」
なぜとは? オレはこんなことに驚いているリリアンさんの方が不思議です。イヌがハダカなのは当たり前じゃないですか。
「服は窮屈でキライなのでビリビリに破いておきました。ハダカが最高です」
なんだかこの家にいる人全員がオレを見て騒いでいますね。
ん? リリアンさん、オレの前で手を広げて何をしているのですか?
「見るなーっ! コテツ殿の裸を見るなーっ! 見た奴はぶった斬るぞっ!」
「リリアンさん、何を怒っているのですか? ハダカはキライですか? ハダカは気持ちいいですよ? 一緒にハダカになりましょうよ」
「えっ? それは、あの、ふ、二人きりの時なら喜んで……」
「あら? リリアンが裸になるなら私だってなるわよ!」
「黙れモニカ! この変態女!」
二人がまたケンカを始めました。オレはちょっと眠くなったので、隅っこのほうで寝ることにします。
「あれ? コテツ殿は?」
「あ、あそこよリリアン、あそこで裸のまま寝ているわ、|床(ゆか》にうずくまって……」
「コテツ殿……もしかしたらずっとああして生きてきたのかもしれない」
「えっ、まさか!? でもそっかあ、闇が深いのね……ああん、闇を抱えながら健気に生きてるイケメンって萌えるわぁ~!」
「馬鹿っ! 馬鹿モニカっ! そんなこと言ってる暇があったらコテツ殿に毛布をかけてやってくれ!」
「はいはい、わかったわよ」
「私はコテツ殿に新しい服を買ってくる。それまでコテツ殿の面倒をたのんだぞ」
「リリアン、あんた結構本気なのね……」
「なんか言ったか?」
「ううん、なんにも。それより早く買ってらっしゃい」
ああ、床がひんやりしてて気持ちいいですね。ハダカ最高です!
でも人間のリリアンさんが間違いなく人間の身体だと言った以上、もはや疑う余地はなさそうです。
「コテツ殿、人間の身体になる病気とは一体何なのですか?」
リリアンさんが心配そうにオレに訊いてくれました。この人はいつも優しいですね。
「オレ、柴イヌなんです。こんな人間の身体になってしまいましたが、本当はモフモフの素晴らしい毛並みと愛くるしい尻尾があったんです。四本の足でしっかり歩けて、声だってちゃんと吠えることが出来て……きっとリリアンさんもそんなイヌのオレを見たら、思わず可愛い! と言ってしまうでしょう。なにせ人気ナンバーワンとまで言われていましたからね……フッ。しかしご主人様と会うために病気になったのです」
「えっと……はあ……」
「ご主人様はそんな可愛い柴イヌだからこそオレを飼ってくれたんです……でもオレはもうイヌの身体でないから、ご主人様に捨てられてしまうかもしれません」
「あっ! そのコテツ殿の病とはもしかして
──」
リリアンさんもようやくこの恐ろしい病気のことを分かってくれたようですね。
「はい……」
「そうだったのですか。でも無理ないと思います……そんな過酷な人生を歩んでこられて。もし私だったら気が狂っていたかもしれません……」
ん、過酷な人生? いや、こんな身体になる前は幸せでしたが。
「なるほど、心の病ですか……それはさぞかしお辛いでしょうね……」
は? 心の病?
「ご事情を存じ上げない私が申し上げるべきではないとは思います。でも! いくら主従関係だからと言って、人間を犬扱いしていいわけありません。ましてや犬でなけれは価値がないと思い込ませてしまうほど、コテツ殿の心を追い詰めるなど鬼畜の所業ですっ!」
「いやリリアンさん? オレ本当にイヌなんですけど……」
「いいえ違いますっ! コテツ殿は人間ですッ! 心の傷について他人の私が気安く言える事はありませんが……それでもどうか忘れないで下さい、コテツ殿は誰かの為に自分以外のものになんかならなくていいんですッ!」
そう言ってリリアンさんはポロリと涙をこぼしました。何をオレに伝えたかったのかよく分かりませんでしたが、オレを思って一生懸命だったのは分かりました。
「オレ、早く病気を治したいです」
「はい、私では力不足でしょうけど、もしよければお役に立たせて下さい」
だけど今のオレはイヌなのか人間なのか、一体どっちなのかな?
あっ、そういえばご主人様に会えるからと、この知らない場所に連れて来てくれたおじさんが言っていましたね。オレはイヌのタマシイをもった人間になるんだって。
タマシイって何なんでしょう?
「リリアンさん、タマシイって何ですか?」
「えっ、魂ですか? う~ん、難しいですが肉体を必要としない純粋で完全な自分……みたいな? よく分かりませんが!」
肉体って身体のことですよね。それがなくても自分なのですか? ほんとよく分かりませんね!
「タマシイと身体はどっちが自分なんでしょう?」
「それはやっぱり魂じゃないでしょうか」
なんとっ! おじさんはオレがイヌのタマシイを持っていると言っていました。それなら、身体は人間でもタマシイがイヌのオレはやっぱりイヌで間違いないですよねっ!
そっか──人間の身体を持ったイヌというだけのことですか。
なら焦らず病気が治るのを待ちましょう。尻尾もモフモフの体毛もなくて寂しいですが、我慢強い柴イヌに泣き言は似合いません。
「リリアンさんッ!」
「はい?」
「ありがとうございますッ!」
「へっ?」
オレはリリアンさんへの感謝の気持ちを、おもいっきり顔にペロペロすることで表しました!
「ちょっ! こ、コテツ殿? ま、まさかドキドキプレイをここで!?」
おや? ドアの向こうにいたモニカさんがすごい勢いで入ってきましたね。
「あらやだ、やっぱりこうなったんじゃないの! 油断も隙もないわねっ」
「も、モニカ! な、なんだよ急に入ってきてっ!」
「あんまり遅いからわざわざ仕事の手を止めて来てみたんじゃない。そしたらこれだもの……」
「こ、これってなんだ! 何もしていないからなっ! てか、タイミング良すぎだろ? お前外の鍵穴から覗いていて邪魔しにきたんじゃないのかッ!?」
「ひ、人を覗き女みたいに言わないでよ、下で仕事してたわよっ! てか、するならするで仲間に入れろって言ったでしょっ!」
「するかっ! この変態女ッ!」
はて? モニカさんは最初からずっと扉の向こうにいましたよね?
『おのれ、二人でさせるか』って呟きながら入ってきたのに、なんでウソを言うのでしょうか?
あ、わかりました!
「モニカさんは照れ屋さんなのですね! ずっと扉の外でハアハアしていたのになぜ入ってこないのか不思議でしたが、そういうわけでしたかっ」
「えっ? コテツさんはどうしてそれを知っているんですの!?」
「イヌは耳がいいので全部聴こえていましたよ!」
「やっぱりか……この覗き女めっ! コテツ殿、こいつは見掛けは金髪をアップにして、いかにも仕事の出来そうなクールビューティですが、中身は変態なので近寄っては駄目ですよっ! ちなみにメガネは伊達ですっ」
「と、とにかくッ! コテツさんの種族は判ったんでしょ? さっさと教えなさいよねっ」
「はいっ! オレは人間の身体をした柴イヌ族ですっ」
「えっ? コテツさん?」
「ちょ、ちょっとモニカこっちに来い……」
「な、なによ」
「あのな、色々とコテツ殿には深く辛い事情があるんだ。それで少々お心も病んでおられる……でも人間で間違いないからそう登録しておいてくれ」
リリアンさんがモニカさんを引っ張って、コソコソ話をしています。
しかもまだオレを人間だと言っていますね。でもまあ、もうどうでもいいかな。
オレはオレですからね、どう見えようとオレが自分をイヌだとわかっていればそれでいいんですっ!
「よくわからないけど……まあ、わかったわ……チラッ」
さっきからモニカさんとリリアンさんがオレのことをチラチラ見ていているのですが、まだ何か用があるのでしょうか?
「おいモニカ、あんまり裸を見るなよ! コテツ殿に無礼じゃないかっ」
「なによリリアン、あんただって見てるじゃないッ! チラッ、てかあんた、あの立派なモノを独り占めとか許さないわよっ?」
「ば、馬鹿っ、うるさいっ! コテツ殿、我々は先に行っておりますので、服を着たら下に降りてきてくださいね」
「いやよ、私はもっとイケメンの裸を見たいんだからっ!」
「モニカっ、黙れっ!」
ほんとに不思議な人たちです。お互い敵意もないのに何であんなに仲が悪いのでしょうか?……
ところでリリアンさんが服を着ろと言っていましたが、冗談じゃありません。
こんな窮屈なもの二度と着たくはないです。なので全部噛み破ってしまいましょう!
ボロボロになった服を見るのは、妙な満足感がありますね。というか、ここ最近ずっと噛んでいなかったので牙がウズきます。
ちょっとだけここにある家具を噛ましてもらおうかな……いえ! 決してイタズラしたいのではありません。これはイヌにとっての健康法なのです。
と言うことで──この硬そうな分厚いテーブルの端っこを……
──バキッ。
「……ぎゃっ!」
お、おかしいです、ひと噛みしただけなのにテーブルの端っこが砕け散りました。見つかったら確実に怒られる……絶対にオレがやったと白状してはダメなやつですね。
てか、何でしょうこの噛む力は。あきらかに異常でしょッ! もしかしてこれも『デキるオス』になったせいでしょうか?
とにかく危険なので本気で噛むのは禁止にしましょう。甘噛みする時はとくに注意です!
リリアンさんとモニカさんが今のテーブルが噛み砕けた音に気づいていないといいのですが……オレはそっと二人に聞き耳を立ててみました。
「ねえリリアン、さっき話してたコテツさんの深い事情ってなんなの?」
「うん……ちょっと私の口からは今はまだ言えないんだ。ただ……もし私がコテツ殿のような目にあっていたら、おそらくもう正気ではいられなくなっていると思う」
「そんなに酷い過去が?」
「ああ……だから、モニカもコテツ殿の変な言動には目を瞑ってやってほしい」
「そっかあ、わかったわ……」
ふう、どうやらオレの話をしていたようですが、テーブルのことはバレてはいないようです。ならばここは怪しまれないように、あえて堂々と登場した方が良さそうですね。
「あれ? コテツさん!?」
「モニカさん、リリアンさん、お待たせしましたっ!」
「こ、コテツ殿っ? な、なぜ裸のままなのですかっ!?」
なぜとは? オレはこんなことに驚いているリリアンさんの方が不思議です。イヌがハダカなのは当たり前じゃないですか。
「服は窮屈でキライなのでビリビリに破いておきました。ハダカが最高です」
なんだかこの家にいる人全員がオレを見て騒いでいますね。
ん? リリアンさん、オレの前で手を広げて何をしているのですか?
「見るなーっ! コテツ殿の裸を見るなーっ! 見た奴はぶった斬るぞっ!」
「リリアンさん、何を怒っているのですか? ハダカはキライですか? ハダカは気持ちいいですよ? 一緒にハダカになりましょうよ」
「えっ? それは、あの、ふ、二人きりの時なら喜んで……」
「あら? リリアンが裸になるなら私だってなるわよ!」
「黙れモニカ! この変態女!」
二人がまたケンカを始めました。オレはちょっと眠くなったので、隅っこのほうで寝ることにします。
「あれ? コテツ殿は?」
「あ、あそこよリリアン、あそこで裸のまま寝ているわ、|床(ゆか》にうずくまって……」
「コテツ殿……もしかしたらずっとああして生きてきたのかもしれない」
「えっ、まさか!? でもそっかあ、闇が深いのね……ああん、闇を抱えながら健気に生きてるイケメンって萌えるわぁ~!」
「馬鹿っ! 馬鹿モニカっ! そんなこと言ってる暇があったらコテツ殿に毛布をかけてやってくれ!」
「はいはい、わかったわよ」
「私はコテツ殿に新しい服を買ってくる。それまでコテツ殿の面倒をたのんだぞ」
「リリアン、あんた結構本気なのね……」
「なんか言ったか?」
「ううん、なんにも。それより早く買ってらっしゃい」
ああ、床がひんやりしてて気持ちいいですね。ハダカ最高です!
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。
みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。
勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。
辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。
だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!
【マグナギア無双】チー牛の俺、牛丼食ってボドゲしてただけで、国王と女神に崇拝される~神速の指先で戦場を支配し、気づけば英雄でした~
月神世一
ファンタジー
「え、これ戦争? 新作VRゲーじゃなくて?」神速の指先で無自覚に英雄化!
【あらすじ紹介文】
「三色チーズ牛丼、温玉乗せで」
それが、最強の英雄のエネルギー源だった――。
日本での辛い過去(ヤンキー客への恐怖)から逃げ出し、異世界「タロウ国」へ転移した元理髪師の千津牛太(22)。
コミュ障で陰キャな彼が、唯一輝ける場所……それは、大流行中の戦術ボードゲーム『マグナギア』の世界だった!
元世界ランク1位のFPS技術(動体視力)× 天才理髪師の指先(精密操作)。
この二つが融合した時、ただの量産型人形は「神速の殺戮兵器」へと変貌する!
「動きが単調ですね。Botですか?」
路地裏でヤンキーをボコボコにしていたら、その実力を国王に見初められ、軍事用巨大兵器『メガ・ギア』のテストパイロットに!?
本人は「ただのリアルな新作ゲーム」だと思い込んでいるが、彼がコントローラーを握るたび、敵国の騎士団は壊滅し、魔王軍は震え上がり、貧乏アイドルは救われる!
見た目はチー牛、中身は魔王級。
勘違いから始まる、痛快ロボット無双ファンタジー、開幕!
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる