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第二章 柴イヌと犬人族のお姫様
第二十一話 モニカの転勤
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「どうだっ、百五十万キンネあるぞ! これでローンの半分は返済だなっ!」
「おお、儲けなすったねリリアンさん」
「まあな、迷宮で大当りだ!」
本日オレはリリアンさんと一緒に武器屋さんに来ています。
リリアンさんは迷宮というところのお仕事から帰ってきて、報酬を一杯もらったそうでとてもご機嫌です。
「本当は結婚できる壺というのを買うつもりでいたが、グッと我慢して借金の返済にまわしたのだぞ。ありがたく思えよ店長!」
残念な人を見る目でリリアンさんを見ていたお店のおじさんは、今度はオレに振り向いてニカっと笑いました。
「そうそうコテツさん、ちょうど良かった! 例の犬の牙、さっき工房から完成品が届きましたぜ!」
「なにっ? わ、私にも見せてくれっ!」
リリアンさんが興奮しています。オレはすっかり忘れていましたが。
「どうですっ! こいつは凄い逸品ですぜ! たんと見てくだせえっ」
うわぁ……なんというか、グロいです。柴イヌの牙のような上品さがありません……
これじゃまるでオオカミさんの牙ですね、下品です!
「こ、これは素晴らしいッ! 黒竜の牙を使っているのだよな!? すごいな……角度によって白金のように輝くぞっ!」
「さすがリリアンさんはお目が高い! コテツさん、早速付けて具合を確かめてみてくだせえ」
ええっ……なんか気持ち悪いですが……
でもまあ、注文しておいて今さらいらないとも言えませんよね、仕方ありません。
なのでオレはそのグロいものを歯にはめました──カチャッ
「似合いますか?……」
「素敵ですコテツ殿っ! カッコ良すぎですッ!」
「どうだい歯の噛み合わせ具合は? 不都合はないですかね?」
「はい、ピッタリです。じゃあもう外していいですか?」
「コテツ殿っ! なにか試しに噛んでみてくださいっ! 威力を見てみたいですッ!」
ええっ……そんなのどうでもいいのですが……
「試すのにちょうどいいジャンク品がありますぜっ! まずはこの革の籠手を!」
おじさんもリリアンさんもノリノリですね……仕方ありません──ガブリッ
「おおっ! まるで桃を食べるような滑らかさで噛み切りましたなっ! じゃあ次はこの鉄の兜でいきましょう!」
「頑張って! コテツ殿っ!」
「はい…………ガリッ」
「わあっ! コテツ殿すごいですっ! 鉄がまるで木のように千切れましたよッ!」
「こいつはスゲエやっ! じゃあ最後はこの鋼の鎧でいきましょうか!」
ええっ……まだやるんですか?……
「あっ、コテツ殿! この鎧はあのウルクたちと戦った時に、ウルクの指揮官が着ていたのとほぼ同じものですよっ!」
「んっ、そうなんですか?」
これには興味を引かれました。あのときは全力で噛んでもめちゃくちゃ硬かったですからね。この牙をつけたらどうなるのか、ちょっと全力で試してみましょうか!
「リリアンさん、あの時みたいに全力で噛み千切ってみますねっ!」
「はいっ! ワクワクしますッ!」
オレはアゴに目一杯力を込めて鋼の鎧に噛みつきますっ!──シャリッ
「キャーーッ! ひと噛みで鋼が剥ぎ取られましたっ! すごい、すごいですーっ! だ、抱きついていいですかッ?」
リリアンさん、興奮しすぎです……てかもう抱きついているじゃないですか。
「いやあ、ここまで凄まじいとは思いませんでしたぜ……確かに黒竜の牙で作る短剣は鋼も斬ることは出来るが、そりゃ剣の達人が遣った場合ですからねえ」
「店長、コテツ殿も武術の達人だぞっ」
「なるほど、どおりで」
ほほう、これはスゴいですね。ほとんど抵抗なく噛み千切ってしまいましたよ。
ますます「デキるオス」になっていく自分が恐いですっ!
グロくて気持ち悪いですが、イヌの牙としては大満足の武器ですね。
「ありがとうございます! オレこの牙、気に入りましたっ!」
「そう言ってもらえると頑張った甲斐もあるってもんです! 武器屋冥利につきますよっ、うっうう……」
「良かったな店長っ! うっうう……」
なんで二人して泣いているのでしょうか? よくわからない人たちです……
リリアンさんと一緒にギルドに戻ったあとも、リリアンさんはまだ興奮が冷めやらないようでした。
自分の新しい剣が出来たときもそうでしたが、リリアンさんはよっぽど武器がお好きなようです。
「コテツ殿、もう一回、もう一回だけ犬の牙を付けてみせて下さいっ!」
「えっ? またですか? まあいいですけど……カチャッ」
「ああっ! カッコ良すぎですっ! な、なんだかお腹の下が熱くなっちゃって、今すぐ放置プレイを解除して欲しくなってきましたっ! つ、続きをしたっていいんですよっ? キャッ」
なんか怪しい匂いがしていましたね……これ以上リリアンさんに牙を見せるのは危険な気がしてきました。
「人が死ぬほど忙しく働いている時に、頭の中がお花畑の馬鹿女を見ることほど殺意が湧くことはないわね」
「な、なによモニカ、ちょっとぐらいいいでしょっ」
「死ねばいいのに、死ねばいいのに、死ねばいいのに」
「や、やめてっ! そんな呪いかけないでっ! あんたの場合は洒落にならないんだからねッ!」
「フンだっ、昔の話は禁止よ」
「わ、わかっているわよ……」
モニカさんが来てくれたおかげでリリアンさんの興奮が鎮まってくれたようです。助かりました。
「コテツさん、その牙とっても強そうですね。なんだかその牙を見ていると、コテツさんに首筋の血を吸って欲しくなっちゃいますわっ! あんッ」
「モニカ、あんッ、てなんだ? あんッて」
「ちょっと想像したらゾクッてしただけよ、いちいちうるさいわね」
「そういうお前の頭の中もお花──」
「おーい、モニカくーん、どこだあ!?」
「げっ、支部長っ!」
ギルドの偉いおじさんも忙しそうですね。汗と脂で顔をテカテカさせている姿は、ご主人様を彷彿させる甘美な匂いを漂わせてくていれます。すぅはぁ~。
「Cランク依頼不履行の賠償の件、あの書類を至急に作成して欲しいんだ!」
「はいはい、分かりましたわ。はぁ、いつになったら人員を増やして貰えるのかしらっ!」
「あっ、その事だけどね、王都から事務員二名と受付嬢一名が新たに配属されることになったよ」
「まあ良かった! 受付嬢も来るのなら私は会計に専念できますの?」
「うーん、それがね、どうもモニカくんは転勤になるという話がでていてねえ」
「えっ? それってもしかして前からお願いしていた王都の受付嬢ですかっ!? あの玉の輿コースのっ!」
「い、いや、詳しいことはまだ何もわからんのだよ、ただ近いうちに正式な辞令がくると思うよ」
モニカさんがとても喜んでいます。ちょっと邪な匂いも混ざっていますが、何かいいことでもあったのでしょうか?
「ヨッシャーアっ!」
と思ったらリリアンさんも喜んでいました。
「いひひ、モニカ、あんたが居なくなると思うと寂しいけれど、仕事だもの仕方ないな。どこへなりと行ってくれたまえ!」
「えっ? モニカさん、居なくなってしまうのですか? オレ、そんなのイヤですけどっ!?」
「心配ないですよコテツ殿、モニカとは何も会えなくなるわけではないのです。仕事場が王都という遠い場所になるだけの事ですからねっ!」
「じゃあ王都という場所に行けばいつでも会えるのですね?」
オレはご主人様のようにモニカさんが居なくなってしまうと思いドキッとしましたが、そうではないようで安心しました。
「その通りですよ、でもホークンの街ではこれからは私とコテツ殿の二人っきりになってしまいます。だから二人っきりで仲良くして、二人っきりで頑張っていきましょうね! 二人っきりでッ!」
「フッ……ふふふっ、甘いわねリリアン」
「な、なにがよ……」
「コテツさんは何のためにこの街に来たのかしら?」
「冒険者になって働くためでしょ。まさか私と恋に落ちるためとか思っていないわよ! あ、でも二人っきりになったらそうなっちゃうかもっ! キャッ」
「愚か者めっ! あんたは大事なことを忘れているわっ。そもそもコテツさんがこの街に来たのは、主人のキモオタさんを探すのが目的じゃなかったかしら?」
「そうですっ! オレはご主人様を探していますっ、でも……全然見つかりません」
ションボリ。
「そ、そうだった……だ、だけどそれが何なのよ?」
「フフフ……コテツさんっ!」
「はいっ! モニカさんっ!」
「私と一緒に王都へ行きませんか? 王都はこの街よりずっと大きくて、ずっと一杯人がいますわ。キモオタさんを見つけられる可能性もここよりずっと高いですわよ?」
「えっ、ほんとですかっ!? ならオレ、モニカさんと一緒に行きますっ、ご主人様を見つけたいですッ!」
「ガーーーンッ! そ、そんな、コテツさん……」
「オーホホホっ! そういうことですわリリアン、ごめんあそばせ。オーホホホッ!」
「がーん、がーん、がーん……ま、待ってくれモニカ……」
「私、仕事が溜まっていますので失礼いたしますわ、オーホホホ」
「あっ、モニカくん! まだこんなところで油を売っていたのか?」
「支部長、いま仕事に戻るところですわ」
「君にたった今、王都から辞令が届いたよ。やはり転勤だった」
「まあっ! 嬉しいッ!」
「そのうえ支部長への大出世つきの栄転だぞ、すごいなっ!」
「まあっ!……って、えっ?」
「転勤先のギルド支部はデントロン地方のタリガの町だ。まあ小さな町だが初支部長としては妥当な勤務地だろう、頑張るんだぞっ!」
「た、タリガの町って、超ど田舎の辺境の町じゃ……」
はて? どういうことでしょうか? モニカさんは王都へは行かないのですかね?
「クスクス、モニカ支部長昇進おめでとう! クスクスっ」
「リリアンさん、何がおめでたいんですか?」
「それはですねコテツ殿、モニカがこの街よりずっと小さくて、ずっと人が少なくて、ずっとキモオタ様が見つかる可能性の低い超田舎町へ支部長という偉い地位で転勤することになったからですよッ! クスクス」
どうやらモニカさんは王都へは行かないようです。ならオレ一人でみんなと別れてまで王都へは行きたくはないですね。
それに田舎町というところへもわざわざモニカさんと一緒に行く意味もなさそうです。
「そうですか、その田舎町へもお仕事で行くんですよね? ならまたモニカさんとは会えますよね?」
「その通りですよコテツ殿、クスクス」
なんだかモニカさんが呆然としたまま動きませんね。
まあ、何はともあれおめでたくて良かったです!
「おお、儲けなすったねリリアンさん」
「まあな、迷宮で大当りだ!」
本日オレはリリアンさんと一緒に武器屋さんに来ています。
リリアンさんは迷宮というところのお仕事から帰ってきて、報酬を一杯もらったそうでとてもご機嫌です。
「本当は結婚できる壺というのを買うつもりでいたが、グッと我慢して借金の返済にまわしたのだぞ。ありがたく思えよ店長!」
残念な人を見る目でリリアンさんを見ていたお店のおじさんは、今度はオレに振り向いてニカっと笑いました。
「そうそうコテツさん、ちょうど良かった! 例の犬の牙、さっき工房から完成品が届きましたぜ!」
「なにっ? わ、私にも見せてくれっ!」
リリアンさんが興奮しています。オレはすっかり忘れていましたが。
「どうですっ! こいつは凄い逸品ですぜ! たんと見てくだせえっ」
うわぁ……なんというか、グロいです。柴イヌの牙のような上品さがありません……
これじゃまるでオオカミさんの牙ですね、下品です!
「こ、これは素晴らしいッ! 黒竜の牙を使っているのだよな!? すごいな……角度によって白金のように輝くぞっ!」
「さすがリリアンさんはお目が高い! コテツさん、早速付けて具合を確かめてみてくだせえ」
ええっ……なんか気持ち悪いですが……
でもまあ、注文しておいて今さらいらないとも言えませんよね、仕方ありません。
なのでオレはそのグロいものを歯にはめました──カチャッ
「似合いますか?……」
「素敵ですコテツ殿っ! カッコ良すぎですッ!」
「どうだい歯の噛み合わせ具合は? 不都合はないですかね?」
「はい、ピッタリです。じゃあもう外していいですか?」
「コテツ殿っ! なにか試しに噛んでみてくださいっ! 威力を見てみたいですッ!」
ええっ……そんなのどうでもいいのですが……
「試すのにちょうどいいジャンク品がありますぜっ! まずはこの革の籠手を!」
おじさんもリリアンさんもノリノリですね……仕方ありません──ガブリッ
「おおっ! まるで桃を食べるような滑らかさで噛み切りましたなっ! じゃあ次はこの鉄の兜でいきましょう!」
「頑張って! コテツ殿っ!」
「はい…………ガリッ」
「わあっ! コテツ殿すごいですっ! 鉄がまるで木のように千切れましたよッ!」
「こいつはスゲエやっ! じゃあ最後はこの鋼の鎧でいきましょうか!」
ええっ……まだやるんですか?……
「あっ、コテツ殿! この鎧はあのウルクたちと戦った時に、ウルクの指揮官が着ていたのとほぼ同じものですよっ!」
「んっ、そうなんですか?」
これには興味を引かれました。あのときは全力で噛んでもめちゃくちゃ硬かったですからね。この牙をつけたらどうなるのか、ちょっと全力で試してみましょうか!
「リリアンさん、あの時みたいに全力で噛み千切ってみますねっ!」
「はいっ! ワクワクしますッ!」
オレはアゴに目一杯力を込めて鋼の鎧に噛みつきますっ!──シャリッ
「キャーーッ! ひと噛みで鋼が剥ぎ取られましたっ! すごい、すごいですーっ! だ、抱きついていいですかッ?」
リリアンさん、興奮しすぎです……てかもう抱きついているじゃないですか。
「いやあ、ここまで凄まじいとは思いませんでしたぜ……確かに黒竜の牙で作る短剣は鋼も斬ることは出来るが、そりゃ剣の達人が遣った場合ですからねえ」
「店長、コテツ殿も武術の達人だぞっ」
「なるほど、どおりで」
ほほう、これはスゴいですね。ほとんど抵抗なく噛み千切ってしまいましたよ。
ますます「デキるオス」になっていく自分が恐いですっ!
グロくて気持ち悪いですが、イヌの牙としては大満足の武器ですね。
「ありがとうございます! オレこの牙、気に入りましたっ!」
「そう言ってもらえると頑張った甲斐もあるってもんです! 武器屋冥利につきますよっ、うっうう……」
「良かったな店長っ! うっうう……」
なんで二人して泣いているのでしょうか? よくわからない人たちです……
リリアンさんと一緒にギルドに戻ったあとも、リリアンさんはまだ興奮が冷めやらないようでした。
自分の新しい剣が出来たときもそうでしたが、リリアンさんはよっぽど武器がお好きなようです。
「コテツ殿、もう一回、もう一回だけ犬の牙を付けてみせて下さいっ!」
「えっ? またですか? まあいいですけど……カチャッ」
「ああっ! カッコ良すぎですっ! な、なんだかお腹の下が熱くなっちゃって、今すぐ放置プレイを解除して欲しくなってきましたっ! つ、続きをしたっていいんですよっ? キャッ」
なんか怪しい匂いがしていましたね……これ以上リリアンさんに牙を見せるのは危険な気がしてきました。
「人が死ぬほど忙しく働いている時に、頭の中がお花畑の馬鹿女を見ることほど殺意が湧くことはないわね」
「な、なによモニカ、ちょっとぐらいいいでしょっ」
「死ねばいいのに、死ねばいいのに、死ねばいいのに」
「や、やめてっ! そんな呪いかけないでっ! あんたの場合は洒落にならないんだからねッ!」
「フンだっ、昔の話は禁止よ」
「わ、わかっているわよ……」
モニカさんが来てくれたおかげでリリアンさんの興奮が鎮まってくれたようです。助かりました。
「コテツさん、その牙とっても強そうですね。なんだかその牙を見ていると、コテツさんに首筋の血を吸って欲しくなっちゃいますわっ! あんッ」
「モニカ、あんッ、てなんだ? あんッて」
「ちょっと想像したらゾクッてしただけよ、いちいちうるさいわね」
「そういうお前の頭の中もお花──」
「おーい、モニカくーん、どこだあ!?」
「げっ、支部長っ!」
ギルドの偉いおじさんも忙しそうですね。汗と脂で顔をテカテカさせている姿は、ご主人様を彷彿させる甘美な匂いを漂わせてくていれます。すぅはぁ~。
「Cランク依頼不履行の賠償の件、あの書類を至急に作成して欲しいんだ!」
「はいはい、分かりましたわ。はぁ、いつになったら人員を増やして貰えるのかしらっ!」
「あっ、その事だけどね、王都から事務員二名と受付嬢一名が新たに配属されることになったよ」
「まあ良かった! 受付嬢も来るのなら私は会計に専念できますの?」
「うーん、それがね、どうもモニカくんは転勤になるという話がでていてねえ」
「えっ? それってもしかして前からお願いしていた王都の受付嬢ですかっ!? あの玉の輿コースのっ!」
「い、いや、詳しいことはまだ何もわからんのだよ、ただ近いうちに正式な辞令がくると思うよ」
モニカさんがとても喜んでいます。ちょっと邪な匂いも混ざっていますが、何かいいことでもあったのでしょうか?
「ヨッシャーアっ!」
と思ったらリリアンさんも喜んでいました。
「いひひ、モニカ、あんたが居なくなると思うと寂しいけれど、仕事だもの仕方ないな。どこへなりと行ってくれたまえ!」
「えっ? モニカさん、居なくなってしまうのですか? オレ、そんなのイヤですけどっ!?」
「心配ないですよコテツ殿、モニカとは何も会えなくなるわけではないのです。仕事場が王都という遠い場所になるだけの事ですからねっ!」
「じゃあ王都という場所に行けばいつでも会えるのですね?」
オレはご主人様のようにモニカさんが居なくなってしまうと思いドキッとしましたが、そうではないようで安心しました。
「その通りですよ、でもホークンの街ではこれからは私とコテツ殿の二人っきりになってしまいます。だから二人っきりで仲良くして、二人っきりで頑張っていきましょうね! 二人っきりでッ!」
「フッ……ふふふっ、甘いわねリリアン」
「な、なにがよ……」
「コテツさんは何のためにこの街に来たのかしら?」
「冒険者になって働くためでしょ。まさか私と恋に落ちるためとか思っていないわよ! あ、でも二人っきりになったらそうなっちゃうかもっ! キャッ」
「愚か者めっ! あんたは大事なことを忘れているわっ。そもそもコテツさんがこの街に来たのは、主人のキモオタさんを探すのが目的じゃなかったかしら?」
「そうですっ! オレはご主人様を探していますっ、でも……全然見つかりません」
ションボリ。
「そ、そうだった……だ、だけどそれが何なのよ?」
「フフフ……コテツさんっ!」
「はいっ! モニカさんっ!」
「私と一緒に王都へ行きませんか? 王都はこの街よりずっと大きくて、ずっと一杯人がいますわ。キモオタさんを見つけられる可能性もここよりずっと高いですわよ?」
「えっ、ほんとですかっ!? ならオレ、モニカさんと一緒に行きますっ、ご主人様を見つけたいですッ!」
「ガーーーンッ! そ、そんな、コテツさん……」
「オーホホホっ! そういうことですわリリアン、ごめんあそばせ。オーホホホッ!」
「がーん、がーん、がーん……ま、待ってくれモニカ……」
「私、仕事が溜まっていますので失礼いたしますわ、オーホホホ」
「あっ、モニカくん! まだこんなところで油を売っていたのか?」
「支部長、いま仕事に戻るところですわ」
「君にたった今、王都から辞令が届いたよ。やはり転勤だった」
「まあっ! 嬉しいッ!」
「そのうえ支部長への大出世つきの栄転だぞ、すごいなっ!」
「まあっ!……って、えっ?」
「転勤先のギルド支部はデントロン地方のタリガの町だ。まあ小さな町だが初支部長としては妥当な勤務地だろう、頑張るんだぞっ!」
「た、タリガの町って、超ど田舎の辺境の町じゃ……」
はて? どういうことでしょうか? モニカさんは王都へは行かないのですかね?
「クスクス、モニカ支部長昇進おめでとう! クスクスっ」
「リリアンさん、何がおめでたいんですか?」
「それはですねコテツ殿、モニカがこの街よりずっと小さくて、ずっと人が少なくて、ずっとキモオタ様が見つかる可能性の低い超田舎町へ支部長という偉い地位で転勤することになったからですよッ! クスクス」
どうやらモニカさんは王都へは行かないようです。ならオレ一人でみんなと別れてまで王都へは行きたくはないですね。
それに田舎町というところへもわざわざモニカさんと一緒に行く意味もなさそうです。
「そうですか、その田舎町へもお仕事で行くんですよね? ならまたモニカさんとは会えますよね?」
「その通りですよコテツ殿、クスクス」
なんだかモニカさんが呆然としたまま動きませんね。
まあ、何はともあれおめでたくて良かったです!
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