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第二章 柴イヌと犬人族のお姫様
第二十九話 復讐の理由
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獣人のアジェルさんたちが帰ったあと、モニカさんとリリアンさんは今回の依頼について話し合っていました。
オレはというと、番犬として目を光らせている真っ最中です!
「えっ! 今回の獣人奪還の依頼には、モニカも呪術師として参加するって!?」
「リリアン、声が大きいっ! さっき半殺しにした子分の他にも、オスカーの子分がどこで見張っているか分からないのよ」
「大丈夫ですよモニカさん! 番犬のオレがしっかり見張っているんでっ!」
「まあ! 頼もしいですわ、コテツさんっ」
ふふ、当然ですね。柴イヌは番犬のエキスパートですから!
「てか、モニカは冒険者時代に呪術師だったことをギルドでは隠していたろ? てっきり呪術を捨てたのだと思っていたけれど……」
「呪術を愛する私が捨てるわけないでしょ。しかも天才だし!……隠していたのは、心の傷をそっとしておいて欲しかったからなの」
「そうだったのか……」
「でもそれも今日で終わりよ! ついに訪れたオスカーへの復讐を機に、忌まわしい過去とは決別するわ。そして私は元のモニカへと戻るのよッ!」
「それは私も賛成だっ! だけど冒険者資格がないのに依頼に参加してもいいのかな?」
「もちろんよくないわ、だから内緒でよ」
「ええっ!? 大丈夫なのか?」
「バレなきゃ平気よ! そのための手は打つしね」
「そ、そうか」
「クックックッ、誘拐犯のオスカーを捕えて犬人族に引き渡し、あの糞野郎を獣人の野蛮な法律で裁くんだわ。そして死ぬよりツラい目にあわせてやるのよッ!」
うわあ、モニカさんからものすごい恨みの匂いがしてきました……なんか怖いです。
「いやしかし、万が一犯人がオスカーでなかったらどうするんだ?」
「その時はその時よ。別に問題ないでしょ、復讐はまたの機会にするだけの事ね」
あれ? オレは確かオスカーさんにイジメられるモニカさんを守るために、一緒に来たはずですが……なんか全然その必要がないような?
てか、なんでモニカさんはそんなにオスカーさんを恨んでいるのでしょうか? オレはモニカさんにそのことを訊いてみました。
「コテツさん、私を馬鹿な女とお笑いください。しかしもはや話さねばなりますまい、私とオスカーの過去の愛憎劇を……!」
「愛憎劇もなにも、モニカが一方的に騙されただけじゃないか」
「お黙りリリアンっ! たくっ──コテツさんは、オスカーが私の元カレだった事はご存知でしたね?」
「はいっ! 昔は仲良しで、今は仲良しではないって意味ですよね?」
「ええ、オスカーは私の初めての男でしたの。まだウブだった私は不覚にも夢中になってしまって……」
「顔だけはイケメンだからな」
「お黙りったらっ! で、ある時ですの、隣国との国境紛争の傭兵として、オスカーのパーティーで冒険者依頼を受けた事があったのですわ」
ふむ、もう話が難しくて分からなくなってきました。でも一応聞いているフリはしておきましょう。
目を閉じて頷いていれば、それらしく見えるものです。
「オスカーという男は職種がアサシンで、別れてから知ったのですが無類の殺し好きだったんです。私を恋人にしたのも、私の呪術で狂戦士化をしたかった為で……私は騙されてまんまとその呪術を使ってしまい……」
「コテツ殿、狂戦士化の呪詛は戦争での使用を禁止されているんですよ。敵味方の区別なく殺しまくるもので」
むう、目を閉じて頷いていたら眠くなってきました。ヤバいですね、寝てしまいそうです……コックリ。
「私も禁呪なのは知っていたので一度は断ったのです、でもオスカーに偽造された軍の使用許可証を見せられて……結局私が騙されたせいで大勢の兵士たちが、狂戦士となったオスカーに無残にも殺されてしまうはめに──」
グウ……グウ……
「モニカのせいでは断じてないっ! あの糞野郎のせいだからな、自分を責めるなよ! また病んでしまうぞ?」
「ありがとう、リリアン。でも……今でもあの時死んでいった兵士たちの叫び声が聞こえてきて……」
ハッ! 寝てましたっ!
てかいつの間にかに、モニカさんがすごく悲しんで心を痛めた匂いをさせてます!
さっぱり理由かはわかりませんが、おともだちとして慰めてあげたいです。
オレはモニカさんの頭を優しく胸のところで抱いて、その髪をなでてあげました。可哀想に……ヨシヨシ。
「コテツさん……私」
「なんですか? モニカさん」
「私……コテツさんのペロペロで慰めて欲しいですっ」
「いいですとも! ペロペロ」
「ああ~ん! もっと慰めてえっ」
ペロペロ。
「ひ、卑怯だぞモニカッ!」
「ふう、落ち着きましたわ。まあそう言う訳で私は禁呪を使用した罪に問われ、冒険者身分の剥奪と二十年間のギルドによる監視処分をくらったのです……糞野郎のせいでっ!」
おっと、悲しみからまた恨みの匂いに変わりました! 結局、愛憎劇とやらは何だったのでしょうね?
「なので私は積年の恨みを晴らすべく『獣人奪還及びオスカー復讐計画』を立てました! さあ冒険者のみなさんっ、共に頑張りましょうッ!」
「その前に同情を利用したペロペロの要求についての謝罪を求めるっ!」
「リリアン、却下です。ではさっそく依頼人のアジェル姫からの情報をお伝えします。誘拐されたと思われる獣人は二十八名。すでに売買された者もいるでしょうが、なるべく多くの奪還を目指します!」
「ハイっ、支部長、質問ですっ!」
「ハイっ、リリアン、どうぞ」
「支部長はなぜ得意の呪術でオスカーを呪い殺さないんですかっ!?」
「私は呪殺などはしませんよ。なぜなら私自身にも災いが降りかかり、復讐後の人生が台無しになるからです! てか禁呪ですよ?」
「それは怖いですね……」
「では次にオスカーのアジトの捜索についてですが、コテツさんにお願いしたいと思います。出来ますか?」
「もちろん出来ますっ! イヌの嗅覚をナメないでくださいッ!」
ていうか、もう匂いでだいたいの場所は分かっていますがね。
「ではよろしくお願いします。アジト発見後は獣人たちの監禁場所を探しましょう。潜入する事になるので危険を覚悟して下さい」
「支部長っ! 私がまずオスカーたち全員をぶった斬りますッ!」
「リリアン、却下です。獣人たちを見つけられなかったら、ただの大量殺人犯です。馬鹿ですか?」
「くっ! た、確かにっ!」
「私とコテツさんで監禁場所を捜し当てるまでリリアンは待機です。合図があったら存分に暴れて大丈夫。でも殺さないように!」
「ハイっ、支部長、質問ですっ!」
「ハイっ、リリアン、どうぞ」
「合図はどうするんですか?」
「私があらかじめリリアンに呪いをかけておきますので、その呪いが発動したら合図だと思って下さい」
「ど、どんな呪いですか……?」
「ふふふ、後でのお楽しみですっ!」
「全然楽しみではありませんっ!」
オレはモニカさんに、これからすぐオスカーさんたちの居るところへ行くか訊きました。
さっきちょっと集中して匂いを嗅いでみたのですが、正確な場所も分かったので。
「えっ! もう特定できたのですか?」
「はいっ! 小さい町なので簡単です。正確には町から出て、すこし行った先の林の中の家ですね。でもオスカーさんは今そこには居ないようですよ?」
「いつもながら凄いですわね……」
「わはは、どうだ『哀しき犬の技』は凄いだろう!」
だからリリアンさん、その名前はやめてくださいって……
「私もコテツ殿から授かった犬の技の修練を、日々欠かしていません! 一人フリスビー犬は大分上達しましたよっ! 遠吠えは我ながらウットリするほどです。アホな動きも研究が進みました。た、ただ、発情したらオシッコだけが……なかなか自分との戦いに勝てませんっ、くっ!」
そういえばそんなことをリリアンさんに教えたことがありましたね。
すっかり忘れていましたが、改めて聞くと馬鹿みたいなのでやめるべきでしょう。
「発情したらオシッコっ! それなら私は出来そうですわッ! コテツさん、私もコテツさんの弟子にしてくださいっ、そして師弟愛の果てに……キャッ!」
「だ、黙れ変態モニカっ! そんなの兄弟子の私が許さんッ!」
この人たちは真面目に依頼を頑張る気があるのでしょうかね? なんか心配になってきました。
「それでこれからアジトへは行きますか?」
「はっ! そうでしたわね、オスカーが居ないのなら今日はよしましょう。一網打尽にしたいので、各々明日に備えて準備をしておくようにっ!」
「はいっ! わかりましたっ」
その後、モニカさんは町へ買い物をしに行き、リリアンさんは自分のマントに絵を描きだしました。最近夢中で描いているようです。
オレは疲れたので床で寝ます。オスカーさんの匂いが全くしないのが気になりますが。
新しいお日さまが昇るとともに、オレは猛烈にお腹がペコペコだと分かりました。
このギルドにはコックさんがいないんですよね。なので注文してすぐにご飯が食べられません! とても不満です。
「コテツさん、おはようございます。歯を磨いて顔を洗ったら、朝食前に会議をしましょう」
なんですかモニカさん、いきなり。
「イヤです。先にご飯を食べたいです! それに歯なんか磨きたくありませんっ」
「もう、コテツさんは時々すごく頑固ですわね。仕方ありません、ちょとパン屋で朝食を買ってきますわ」
「快便快便! 今日も気分爽快……あ、コテツ殿、おはようございます!」
頑固なのは柴イヌの美徳です! てか、リリアンさんは朝から元気ですね。
「リリアンちょとコテツさんの歯磨きを手伝ってあげといて、私すぐ戻るから」
オレはイヤイヤながらリリアンさんに歯を磨いてもらい、顔を洗われました。
でも、モニカさんが美味しいパンをお腹一杯食べさせてくれたので、オレのキゲンはかなりいいですっ!
「よしっ! 今日こそ作戦決行だなッ!」
「でもリリアンさん、オスカーさんの匂いはまだ消えたままですよ?」
「えっ? ほんとですか!? 何処かへ行っているのだろうか……」
「うーん、というか何か変です。匂いがしないんじゃなくて、消えている感じなんですよね」
なんでそう思うのかオレもわかりませんが、とても不自然なんです。
「あっ! それって……もしかしたらオスカーはいま、アサシンの技を使っているのかもしれませんわ。昔、そういう技を使ったのを見た事がありますの」
「ほんとかモニカ? でも何でだ?」
「さあ……何かの任務中なのかしら?」
おや? オスカーさんの仲間の人が見張りにやってきましたね。オレはそのことを二人に知らせました。
モニカさんは難しい顔をしてしばらく考えていましたが。
「今日、計画を実行いたいましょう! でもその前に見張りに来た子分を捕まえて、オスカーのことを吐かせてみますわ。私の呪術でっ!」
そう言って薄っすらと笑ったモニカさんが、オレはちょっとだけ怖かったです。
オレはというと、番犬として目を光らせている真っ最中です!
「えっ! 今回の獣人奪還の依頼には、モニカも呪術師として参加するって!?」
「リリアン、声が大きいっ! さっき半殺しにした子分の他にも、オスカーの子分がどこで見張っているか分からないのよ」
「大丈夫ですよモニカさん! 番犬のオレがしっかり見張っているんでっ!」
「まあ! 頼もしいですわ、コテツさんっ」
ふふ、当然ですね。柴イヌは番犬のエキスパートですから!
「てか、モニカは冒険者時代に呪術師だったことをギルドでは隠していたろ? てっきり呪術を捨てたのだと思っていたけれど……」
「呪術を愛する私が捨てるわけないでしょ。しかも天才だし!……隠していたのは、心の傷をそっとしておいて欲しかったからなの」
「そうだったのか……」
「でもそれも今日で終わりよ! ついに訪れたオスカーへの復讐を機に、忌まわしい過去とは決別するわ。そして私は元のモニカへと戻るのよッ!」
「それは私も賛成だっ! だけど冒険者資格がないのに依頼に参加してもいいのかな?」
「もちろんよくないわ、だから内緒でよ」
「ええっ!? 大丈夫なのか?」
「バレなきゃ平気よ! そのための手は打つしね」
「そ、そうか」
「クックックッ、誘拐犯のオスカーを捕えて犬人族に引き渡し、あの糞野郎を獣人の野蛮な法律で裁くんだわ。そして死ぬよりツラい目にあわせてやるのよッ!」
うわあ、モニカさんからものすごい恨みの匂いがしてきました……なんか怖いです。
「いやしかし、万が一犯人がオスカーでなかったらどうするんだ?」
「その時はその時よ。別に問題ないでしょ、復讐はまたの機会にするだけの事ね」
あれ? オレは確かオスカーさんにイジメられるモニカさんを守るために、一緒に来たはずですが……なんか全然その必要がないような?
てか、なんでモニカさんはそんなにオスカーさんを恨んでいるのでしょうか? オレはモニカさんにそのことを訊いてみました。
「コテツさん、私を馬鹿な女とお笑いください。しかしもはや話さねばなりますまい、私とオスカーの過去の愛憎劇を……!」
「愛憎劇もなにも、モニカが一方的に騙されただけじゃないか」
「お黙りリリアンっ! たくっ──コテツさんは、オスカーが私の元カレだった事はご存知でしたね?」
「はいっ! 昔は仲良しで、今は仲良しではないって意味ですよね?」
「ええ、オスカーは私の初めての男でしたの。まだウブだった私は不覚にも夢中になってしまって……」
「顔だけはイケメンだからな」
「お黙りったらっ! で、ある時ですの、隣国との国境紛争の傭兵として、オスカーのパーティーで冒険者依頼を受けた事があったのですわ」
ふむ、もう話が難しくて分からなくなってきました。でも一応聞いているフリはしておきましょう。
目を閉じて頷いていれば、それらしく見えるものです。
「オスカーという男は職種がアサシンで、別れてから知ったのですが無類の殺し好きだったんです。私を恋人にしたのも、私の呪術で狂戦士化をしたかった為で……私は騙されてまんまとその呪術を使ってしまい……」
「コテツ殿、狂戦士化の呪詛は戦争での使用を禁止されているんですよ。敵味方の区別なく殺しまくるもので」
むう、目を閉じて頷いていたら眠くなってきました。ヤバいですね、寝てしまいそうです……コックリ。
「私も禁呪なのは知っていたので一度は断ったのです、でもオスカーに偽造された軍の使用許可証を見せられて……結局私が騙されたせいで大勢の兵士たちが、狂戦士となったオスカーに無残にも殺されてしまうはめに──」
グウ……グウ……
「モニカのせいでは断じてないっ! あの糞野郎のせいだからな、自分を責めるなよ! また病んでしまうぞ?」
「ありがとう、リリアン。でも……今でもあの時死んでいった兵士たちの叫び声が聞こえてきて……」
ハッ! 寝てましたっ!
てかいつの間にかに、モニカさんがすごく悲しんで心を痛めた匂いをさせてます!
さっぱり理由かはわかりませんが、おともだちとして慰めてあげたいです。
オレはモニカさんの頭を優しく胸のところで抱いて、その髪をなでてあげました。可哀想に……ヨシヨシ。
「コテツさん……私」
「なんですか? モニカさん」
「私……コテツさんのペロペロで慰めて欲しいですっ」
「いいですとも! ペロペロ」
「ああ~ん! もっと慰めてえっ」
ペロペロ。
「ひ、卑怯だぞモニカッ!」
「ふう、落ち着きましたわ。まあそう言う訳で私は禁呪を使用した罪に問われ、冒険者身分の剥奪と二十年間のギルドによる監視処分をくらったのです……糞野郎のせいでっ!」
おっと、悲しみからまた恨みの匂いに変わりました! 結局、愛憎劇とやらは何だったのでしょうね?
「なので私は積年の恨みを晴らすべく『獣人奪還及びオスカー復讐計画』を立てました! さあ冒険者のみなさんっ、共に頑張りましょうッ!」
「その前に同情を利用したペロペロの要求についての謝罪を求めるっ!」
「リリアン、却下です。ではさっそく依頼人のアジェル姫からの情報をお伝えします。誘拐されたと思われる獣人は二十八名。すでに売買された者もいるでしょうが、なるべく多くの奪還を目指します!」
「ハイっ、支部長、質問ですっ!」
「ハイっ、リリアン、どうぞ」
「支部長はなぜ得意の呪術でオスカーを呪い殺さないんですかっ!?」
「私は呪殺などはしませんよ。なぜなら私自身にも災いが降りかかり、復讐後の人生が台無しになるからです! てか禁呪ですよ?」
「それは怖いですね……」
「では次にオスカーのアジトの捜索についてですが、コテツさんにお願いしたいと思います。出来ますか?」
「もちろん出来ますっ! イヌの嗅覚をナメないでくださいッ!」
ていうか、もう匂いでだいたいの場所は分かっていますがね。
「ではよろしくお願いします。アジト発見後は獣人たちの監禁場所を探しましょう。潜入する事になるので危険を覚悟して下さい」
「支部長っ! 私がまずオスカーたち全員をぶった斬りますッ!」
「リリアン、却下です。獣人たちを見つけられなかったら、ただの大量殺人犯です。馬鹿ですか?」
「くっ! た、確かにっ!」
「私とコテツさんで監禁場所を捜し当てるまでリリアンは待機です。合図があったら存分に暴れて大丈夫。でも殺さないように!」
「ハイっ、支部長、質問ですっ!」
「ハイっ、リリアン、どうぞ」
「合図はどうするんですか?」
「私があらかじめリリアンに呪いをかけておきますので、その呪いが発動したら合図だと思って下さい」
「ど、どんな呪いですか……?」
「ふふふ、後でのお楽しみですっ!」
「全然楽しみではありませんっ!」
オレはモニカさんに、これからすぐオスカーさんたちの居るところへ行くか訊きました。
さっきちょっと集中して匂いを嗅いでみたのですが、正確な場所も分かったので。
「えっ! もう特定できたのですか?」
「はいっ! 小さい町なので簡単です。正確には町から出て、すこし行った先の林の中の家ですね。でもオスカーさんは今そこには居ないようですよ?」
「いつもながら凄いですわね……」
「わはは、どうだ『哀しき犬の技』は凄いだろう!」
だからリリアンさん、その名前はやめてくださいって……
「私もコテツ殿から授かった犬の技の修練を、日々欠かしていません! 一人フリスビー犬は大分上達しましたよっ! 遠吠えは我ながらウットリするほどです。アホな動きも研究が進みました。た、ただ、発情したらオシッコだけが……なかなか自分との戦いに勝てませんっ、くっ!」
そういえばそんなことをリリアンさんに教えたことがありましたね。
すっかり忘れていましたが、改めて聞くと馬鹿みたいなのでやめるべきでしょう。
「発情したらオシッコっ! それなら私は出来そうですわッ! コテツさん、私もコテツさんの弟子にしてくださいっ、そして師弟愛の果てに……キャッ!」
「だ、黙れ変態モニカっ! そんなの兄弟子の私が許さんッ!」
この人たちは真面目に依頼を頑張る気があるのでしょうかね? なんか心配になってきました。
「それでこれからアジトへは行きますか?」
「はっ! そうでしたわね、オスカーが居ないのなら今日はよしましょう。一網打尽にしたいので、各々明日に備えて準備をしておくようにっ!」
「はいっ! わかりましたっ」
その後、モニカさんは町へ買い物をしに行き、リリアンさんは自分のマントに絵を描きだしました。最近夢中で描いているようです。
オレは疲れたので床で寝ます。オスカーさんの匂いが全くしないのが気になりますが。
新しいお日さまが昇るとともに、オレは猛烈にお腹がペコペコだと分かりました。
このギルドにはコックさんがいないんですよね。なので注文してすぐにご飯が食べられません! とても不満です。
「コテツさん、おはようございます。歯を磨いて顔を洗ったら、朝食前に会議をしましょう」
なんですかモニカさん、いきなり。
「イヤです。先にご飯を食べたいです! それに歯なんか磨きたくありませんっ」
「もう、コテツさんは時々すごく頑固ですわね。仕方ありません、ちょとパン屋で朝食を買ってきますわ」
「快便快便! 今日も気分爽快……あ、コテツ殿、おはようございます!」
頑固なのは柴イヌの美徳です! てか、リリアンさんは朝から元気ですね。
「リリアンちょとコテツさんの歯磨きを手伝ってあげといて、私すぐ戻るから」
オレはイヤイヤながらリリアンさんに歯を磨いてもらい、顔を洗われました。
でも、モニカさんが美味しいパンをお腹一杯食べさせてくれたので、オレのキゲンはかなりいいですっ!
「よしっ! 今日こそ作戦決行だなッ!」
「でもリリアンさん、オスカーさんの匂いはまだ消えたままですよ?」
「えっ? ほんとですか!? 何処かへ行っているのだろうか……」
「うーん、というか何か変です。匂いがしないんじゃなくて、消えている感じなんですよね」
なんでそう思うのかオレもわかりませんが、とても不自然なんです。
「あっ! それって……もしかしたらオスカーはいま、アサシンの技を使っているのかもしれませんわ。昔、そういう技を使ったのを見た事がありますの」
「ほんとかモニカ? でも何でだ?」
「さあ……何かの任務中なのかしら?」
おや? オスカーさんの仲間の人が見張りにやってきましたね。オレはそのことを二人に知らせました。
モニカさんは難しい顔をしてしばらく考えていましたが。
「今日、計画を実行いたいましょう! でもその前に見張りに来た子分を捕まえて、オスカーのことを吐かせてみますわ。私の呪術でっ!」
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