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目を覚ますと、そこは見覚えのない部屋の中だった。
その部屋の中央に、まるで天井から吊り下げられるように私は立たされていた。
どうして私は、こんな所に居るのだろうか?
そんな疑問が浮かんだ瞬間、私の頭の中には苦々しい記憶が鮮明に蘇ってきた。
理由も分からず敗北して、そしてたくさんの人の目の前で無残に弄ばれた。
思い出すたびに胸の奥から悔しさが溢れ、目じりからは思わず涙が零れてしまいそうになる。
しかしそれとは逆に、全く別の感情も芽生え始めている。
その良く分からない感情は、幸福感に似ていた。
支配されることに対する幸福感、そしてまた彼に触れてほしいという期待。
「私、いったいどうなっちゃったの?」
ありえないはずの感情に困惑していると、不意に目の前の扉が音を立てて開いた。
「やぁ、目が覚めたかい?」
その声を聴いて、なぜか胸がキュンと高鳴る。
まるで恋する乙女のようなその反応に戸惑いながら、私は部屋に入ってきた男――アインをキッと睨む。
「まだそんな顔ができるなんて、予想以上にしぶとい正義だな」
「いったい、何を言っているの? さっさと私を解放しなさい!」
「残念だけど、それはできない。それに、今さら解放されてどうするつもりだ? お前の痴態はたっぷりと撮影されて、今頃はSNSなんかで拡散されている頃だ。もう、正義のヒロインになんて戻れないぞ」
「くっ……。あなたって本当に最低ね」
そんな最悪な現実を突きつけられて、私の心は折れてしまいそうになる。
それでも気丈に振舞っていると、ニヤニヤ笑うアインはゆっくりと私に近づいてくる。
そしておもむろに私の胸元まで手を伸ばすと、グッと何かを押し付けられた。
「んあっ、ああぁああっ!」
その瞬間、私の中に意味不明な意識が流れ込んでくる。
まるで世界の全てを恨むような黒い感情と、ただ一人の男に対する呪いのような強烈な愛情と劣情。
全てを書き換えられるような感情の激流に思わず悲鳴が漏れ、身体はそれから逃れようとガタガタと暴れまわる。
そんな私の姿を楽しそうに眺めながら、アインが私の耳元でそっと囁く。
「我慢しなくていいんだ。感情に身を任せて、お前の全てを差し出せばいい」
「身を、任せて……。全てを、差し出す……」
彼の言葉が私の頭に刷り込まれていって、ボンヤリとした思考はゆっくりと私の元を離れていく。
しかし、すんでのところで私はその意識を繋ぎとめる。
脳裏に浮かんだのは、最愛の彼の存在。
秋野くんの顔が思い浮かべながら、私は必死に流れ込んでくる感情に耐えていた。
「ここまで意志が強いと、さすがに面倒になってきたな」
「ふふっ……、いい加減諦めなさい。私は、あなたの思い通りになんてならないんだから」
こうやって耐えていれば、きっと秋野くんが助けを連れてきてくれる。
そんな淡い期待だけを頼りに、私はただ耐える以外の選択肢はなかった。
「確かに、このままじゃ埒が明かない。だから、君の希望を全部壊してあげよう」
そう言ってアインが仮面を外すと、そこに居たのは信じられない人物だった。
「秋野、くん……?」
「やぁ、美幸。驚いたかい?」
「そんな、嘘……。どうして秋野くんが……」
「そうしてって、もう分かっているだろう? 君を陥れたアインの正体は、俺だったのさ」
嘘だ……。
そんなこと、ありえない……。
心が現実を直視することを拒否して、私の思考は完全に停止してしまう。
そしてその隙を、彼は見逃さなかった。
「くっ、あああぁああぁぁああっ!!」
私の思考は一気に黒く塗りつぶされ、目の前が真っ暗になる。
ここがどこかも分からないほどの暗闇の中で、遠くに一筋の光が見えた。
その光を求めるように意識を伸ばしていくと、やがてその光の中から小さな人影が現れる。
だんだんはっきりと見えてくるその人影の正体は、私自身。
今まで着たことのないような淫らな衣装で着飾った私は、私を見つめて妖しく微笑みながら手を差し伸べてくる。
その手を取ってはいけない、そう本能が警告を発する。
それでも私は、その誘いを断ることができなかった。
差し出された手を取った瞬間、目の前の私が光の粒になって私の中へと吸い込まれていった。
その最後の一粒が吸い込まれて、そして私は新しい私へと生まれ変わるのだった。
────
ひときわ大きな悲鳴を上げて動かなくなった彼女を見て、俺は少しだけ不安になる。
もしかして、失敗してしまったのだろうか。
力なくだらんとしている彼女の身体を支えながら拘束を解くと、どうやら息はしているらしい。
そのことにホッと一息ついていると、やがて彼女の身体に変化が始まった。
純白だった衣装は黒く滲み、形そのものも際どい物へと変わっていく。
スカートは少し動けば下着が見えてしまいそうなほど短く、ザックリと開いた胸元からは大胆に谷間が露わになっていく。
まるで堕落した姿を見せつけるかのように、清楚だったロイヤルフォーチュンのイメージがことごとく破壊されていく。
そして変化が終わり、俺の目の前に居るのは風俗嬢のようなイヤらしい衣装を着た一人の少女だった。
正義の味方だったころの面影も残しながら、それでも全く別物になった彼女がゆっくりと目を覚ました。
その部屋の中央に、まるで天井から吊り下げられるように私は立たされていた。
どうして私は、こんな所に居るのだろうか?
そんな疑問が浮かんだ瞬間、私の頭の中には苦々しい記憶が鮮明に蘇ってきた。
理由も分からず敗北して、そしてたくさんの人の目の前で無残に弄ばれた。
思い出すたびに胸の奥から悔しさが溢れ、目じりからは思わず涙が零れてしまいそうになる。
しかしそれとは逆に、全く別の感情も芽生え始めている。
その良く分からない感情は、幸福感に似ていた。
支配されることに対する幸福感、そしてまた彼に触れてほしいという期待。
「私、いったいどうなっちゃったの?」
ありえないはずの感情に困惑していると、不意に目の前の扉が音を立てて開いた。
「やぁ、目が覚めたかい?」
その声を聴いて、なぜか胸がキュンと高鳴る。
まるで恋する乙女のようなその反応に戸惑いながら、私は部屋に入ってきた男――アインをキッと睨む。
「まだそんな顔ができるなんて、予想以上にしぶとい正義だな」
「いったい、何を言っているの? さっさと私を解放しなさい!」
「残念だけど、それはできない。それに、今さら解放されてどうするつもりだ? お前の痴態はたっぷりと撮影されて、今頃はSNSなんかで拡散されている頃だ。もう、正義のヒロインになんて戻れないぞ」
「くっ……。あなたって本当に最低ね」
そんな最悪な現実を突きつけられて、私の心は折れてしまいそうになる。
それでも気丈に振舞っていると、ニヤニヤ笑うアインはゆっくりと私に近づいてくる。
そしておもむろに私の胸元まで手を伸ばすと、グッと何かを押し付けられた。
「んあっ、ああぁああっ!」
その瞬間、私の中に意味不明な意識が流れ込んでくる。
まるで世界の全てを恨むような黒い感情と、ただ一人の男に対する呪いのような強烈な愛情と劣情。
全てを書き換えられるような感情の激流に思わず悲鳴が漏れ、身体はそれから逃れようとガタガタと暴れまわる。
そんな私の姿を楽しそうに眺めながら、アインが私の耳元でそっと囁く。
「我慢しなくていいんだ。感情に身を任せて、お前の全てを差し出せばいい」
「身を、任せて……。全てを、差し出す……」
彼の言葉が私の頭に刷り込まれていって、ボンヤリとした思考はゆっくりと私の元を離れていく。
しかし、すんでのところで私はその意識を繋ぎとめる。
脳裏に浮かんだのは、最愛の彼の存在。
秋野くんの顔が思い浮かべながら、私は必死に流れ込んでくる感情に耐えていた。
「ここまで意志が強いと、さすがに面倒になってきたな」
「ふふっ……、いい加減諦めなさい。私は、あなたの思い通りになんてならないんだから」
こうやって耐えていれば、きっと秋野くんが助けを連れてきてくれる。
そんな淡い期待だけを頼りに、私はただ耐える以外の選択肢はなかった。
「確かに、このままじゃ埒が明かない。だから、君の希望を全部壊してあげよう」
そう言ってアインが仮面を外すと、そこに居たのは信じられない人物だった。
「秋野、くん……?」
「やぁ、美幸。驚いたかい?」
「そんな、嘘……。どうして秋野くんが……」
「そうしてって、もう分かっているだろう? 君を陥れたアインの正体は、俺だったのさ」
嘘だ……。
そんなこと、ありえない……。
心が現実を直視することを拒否して、私の思考は完全に停止してしまう。
そしてその隙を、彼は見逃さなかった。
「くっ、あああぁああぁぁああっ!!」
私の思考は一気に黒く塗りつぶされ、目の前が真っ暗になる。
ここがどこかも分からないほどの暗闇の中で、遠くに一筋の光が見えた。
その光を求めるように意識を伸ばしていくと、やがてその光の中から小さな人影が現れる。
だんだんはっきりと見えてくるその人影の正体は、私自身。
今まで着たことのないような淫らな衣装で着飾った私は、私を見つめて妖しく微笑みながら手を差し伸べてくる。
その手を取ってはいけない、そう本能が警告を発する。
それでも私は、その誘いを断ることができなかった。
差し出された手を取った瞬間、目の前の私が光の粒になって私の中へと吸い込まれていった。
その最後の一粒が吸い込まれて、そして私は新しい私へと生まれ変わるのだった。
────
ひときわ大きな悲鳴を上げて動かなくなった彼女を見て、俺は少しだけ不安になる。
もしかして、失敗してしまったのだろうか。
力なくだらんとしている彼女の身体を支えながら拘束を解くと、どうやら息はしているらしい。
そのことにホッと一息ついていると、やがて彼女の身体に変化が始まった。
純白だった衣装は黒く滲み、形そのものも際どい物へと変わっていく。
スカートは少し動けば下着が見えてしまいそうなほど短く、ザックリと開いた胸元からは大胆に谷間が露わになっていく。
まるで堕落した姿を見せつけるかのように、清楚だったロイヤルフォーチュンのイメージがことごとく破壊されていく。
そして変化が終わり、俺の目の前に居るのは風俗嬢のようなイヤらしい衣装を着た一人の少女だった。
正義の味方だったころの面影も残しながら、それでも全く別物になった彼女がゆっくりと目を覚ました。
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