美少年異世界BLファンタジー 籠の中の天使たち

キリノ

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第二部 ドラゴンシティ

最初の調教

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「いやだ、行きたくない。ここに……ずっといる」 
「駄目だって。どうせ、監督がきてペナルティもらっておしまいだ。早く行こう」
「絶対行かない」
 食堂の椅子に座り込んだまま、リオはきっぱりと宣言した。
「……もう、どうすんだよ……」
 傍らで光は困ったように肩をすくめた。
 入所してもう一ヶ月になるというのに、リオは課題の時間になるとぐずってばかりである。 
 毎朝すんなりと起きてきて、皆と一緒に食事をすませ、お茶の一滴まですすった後なのに、肝心なレッスン前になるといつもこうだ。
 その上、自由時間や、課題がセックスに関係のない、一般教養的な授業の時には、泣いたカラスが、の歌と同じくらいけろっとしているのだから、わからない。 
「俺たちが行かなきゃ、多分連帯責任で皆が罰を受ける。だから、行こう」
 やだ、とリオは顔をそらせた。光はいつもその台詞で脅すけれど、今まで連帯責任など、一度も課せられた事はない。
「いたな。リオ。迎えに来たぜ。ほら、首に掴まれよ。抱っこして連れていってやる」 
「京ちゃん」
 聞き慣れた声に、リオは顔を上げた。
 目の前にば、いつの間にか京と、もう一人、同じ服を着た男が立っていた。京だけでなく、施設に監督官は沢山いるのだ。
 京が来た途端、てこでも動かぬ風だったリオの表情が一気に和らぐ。
「ほら、よ」
 京は、椅子の横で身を屈めた。拗ねた顔つきのまま、リオはその首に手を回す。 
「今から何の授業なんだ?」 
「……乳首調教」 
「楽勝じゃないか。三十分だけだろ。頑張れよ」 
 男の肩口に顔を埋めて、少年は小さくため息をついた。
「ったく……監督が甘やかすから、こいつこんなわがままになるんですよ」
 ぼそりと光は呟いた。京は、聞こえない風で、リオを抱いたまま、すたすたと前を歩いていく。運ばれながら、リオはドキドキと、これからの事を考えていた。
 乳首調教。実は、ここに来てから、リオが学んでいるのは、それだけなのだ。
 だけど、裸の胸に看護士の愛撫を受ける、というソフトな段階はとっくに終わり、今はかなりハードなものになっている。
 昨日の担当曰く、本日の乳首調教は、皮のベルトで四肢を拘束した上、三人がかりで攻めるのだと言う。 
 想像しただけで涙が込み上げてくる。いい加減慣れろよ、と光は言う。誰に聞いても、リオみたいに入所当時と同じテンションで拒絶するパターンは異例らしい。 
 お兄ちゃんたちはともかく、光に自分の気持はわからない、とリオはいつも思っていた。幹部候補の光は、トレーニングに参加こそするものの、実践はしない。見学するだけだ。
「お前はリオの扱いに慣れてるよなあ。俺は毎回てこずるのに」 
 もう一人の監督が、感心したように言った。
「いつでも俺を呼べよ。リオの相手なら大歓迎だ」 
「ほら、またそうやって甘やかす」
 京の言葉に、光はぼそりと呟いた。

 教室では、もう課題が始まっていた。 
 早々とベッドに拘束された仲間達の姿に、リオの恐怖心は、極限に達したようだった。 
「やだやだやだっ。御願い、させないで。嫌だっ」 
 京の首にひしとしがみつき、離れようとしない。 
 看護人が二人がかりで小さな体を男から引き剥がす。 
 わーん、と本格的に泣き始めたリオを、京は、よしよしと抱きしめると、
「しっかり押さえてろ」 
 と看護士たちに小声で指示をした。 
 身動きできない状態にさせたまま、京は、縞模様のシャツのボタンを外していく。 
「京ちゃんやめて……脱がさないで」 
 リオは懇願した。 
「脱がさないと、課題がこなせないだろう? 恥ずかしがる事はない。もう何回裸になったと思ってるんだ。お前が自分で脱げないから、こうやって脱がしてやってるんじゃないか」 
「下は、嫌だ。御願い、許して」 
「同じ事を毎回言わせるんじゃない」 
 ボタンは全てはずされ、はらりと上着が落ちる。 
「つけろ」 
 男の命令で、看護士は、医療用ベッドの上に、小さな体をひょいと持ち上げ、両手を拘束する。 
「ああっ。御願い、外して」 
 たらたらと泣き続けるリオの唇に、徐に京はキスをした。 
「んー、んんっ」 
 口の端からよだれが洩れる。 
 少女のように愛らしい顔は、涙と唾液でぐちょぐちょだった。 
 巧みに追い上げる慣れた舌使いに、リオの動きが小さくなる。やがて、ぐったりとおとなしくなったリオから体を離し、 
「下も脱がせるぞ。それも決まりだから、いい子にできるな」 
 と男は言った。 
 そろそろと綿素材の縞模様が脱がされて、すんなりとした白い、子鹿のような足と、ピンク色の可愛らしい性器があらわになった。
 「可愛いよ。リオ。俺はもう行くけど、看護士の皆さんにたっぷり可愛がってもらえよ」 
 京は、ちゅっと額にキスをする。 
「行かないで。京ちゃん」 
 縋るような目に 
「俺もずっとここにいたいよ。だけどそういうわけにはいかないんでな。本当は今だって、仕事抜けてるんだ。また、別な課題の時に会おうぜ」 
 振り切るように、男は背を向けた。 
 ドアの外には、同僚が待っていた。
「お前って、子供の面倒みるのがうまいよなあ。俺は、いつもあの子には手を焼くんだが」 
「……あの子は特別だよ。俺にとっては……」
「ん?」
「……いや、なんでもない」
 二人が歩き始めた時、部屋の中から悩ましい声が響いてきた。
「あ、ああっ……はあん……ん……」 
 リオである。 
 あんなに嫌がっていたのが、もしかしたら演技かと思えるほどの、艶めいた声。 
 京は頭を左右に振った。 
「さあ、仕事しようぜ。あいつのあんな声聞いてたら、頭おかしくなっちまう」 
「あ、ああ」 
 京は早足でそこから立ち去る。
 ドアの向こうで、リオの声は、すすり泣きへと変っていった。
 鋭い笛の音と共に、たった三十分とは思えないほど長く苦痛に満ちた課題が終わる。
「よく頑張ったね。今日もとても可愛かったよ」
 看護士はリオの頭をよしよしと撫で、四肢の戒めを解いてくれた。
 どんなに泣いて嫌がっても、いざ課題が始まれば、一番愛らしく悶えてみせるのはリオなのだ。だからこそ、様々なわがままを大目に見てもらえているのである。叱られるどころか、指導員たちは皆褒め上手で、いつもリオを激励してくれるけれど、本人としては複雑だった。
「さあ、もう下りていいよ」
 名残おしげに看護士は、そっとリオの太ももを撫でる。
 くすんと鼻を鳴らしながら、リオはベッドを下り、バスケットの中の衣服を取った。

 その時、ふわり、と芳しい花の薫りが漂ってきた。リオはぶんと顔を上げる。
「あ……沙蘭」
 呟きが聞こえなかったのか、それとも無視されたのか。
 沙蘭は振り向きもせず綺麗な姿勢で通り過ぎた。
 この銀髪の美少年が、壁から三つ目のベッドにいた事を、フロアに入った時から気がついていた。今日こそは話かけようと思ったのに、沙蘭には全く隙がない。
 部屋も別だが、食事や休憩時間まで、その他の少年達とは行動を別にしていて、見えないバリアが体の回りに張りめぐらされているようだった。

「ねえ、沙蘭はいつもどこで食事してるの?」
 昼食の時間。
 食堂でふと漏らしたリオの問いかけに、和やかだった周囲の雰囲気が一変する。
「知らないよ。あいつの事なんか」
 ぼそりと一人が言い、他の者も頷いた。
「言っただろ? あいつは人殺しだって。仲間だなんて思わなくていいよ。だからもう気にするな」
 隣で光がぼそりと言った。
「そんなの……嘘だ」
「嘘じゃない。……あいつは、自分の恋人を殺したんだよ。赤夜叉に取り入るために」
 光はきっぱりとそう告げた。
 人殺しという、物騒なフレーズ以上に、恋人という言葉がリオの胸にずしんと重くのしかかった。
 沙蘭……恋人がいたんだ。あんなに綺麗だから当然だと思うものの、何故だか胸がちくちく痛む。
「本人は否定しなかったよ。あの金髪の奴、一星と一緒にずっと前から計画してたって、もっぱらの噂だ。とにかく俺たちはあいつの事は信用しないし、あいつだって俺たちと仲良くしようだなんて、これっぼっちも思ってないだろうな。最初から個室だったし、綺麗だからって、いい気になってんだぜ」
「……一星と沙蘭は、何か……繋がりがあるの?」
 初めて沙蘭を見た時、そういえば、彼は一星の名を呼んでいた。何やら、怪しい色を帯びた、あの囁き。思い出すと、胸に新たな痛みが走る。
「幼なじみらしい。一星と沙蘭と、そして沙蘭の恋人、三人一緒に召還されたらしいぜ。ちなみに、もう一人は一星の兄貴だ」
 光は言った。
「それって、いつの事? ただの噂だよね。だって、一星がここに来たのってすっごく前だって聞いてるもん」
「まあ、そうだけど……さ」
 光は口ごもり、面倒そうに背伸びをした。
「でも、本当だと思うぜ。沙蘭と一星の目はなんだか怖いよ。蛇みたいだ」
 そして話題は打ち切られる。いつもは穏やかな光が、沙蘭の話になるといきなり敵意を剥き出しにするのが不思議だったが、それ以上の事は、もう何も話てくれなかった。
 沙蘭に対する、この気持が何なのか、リオにはまだわからない。
 でも、彼が近くにいるだけで、心の奥が焼けたように熱くなって、心臓が早鐘を打ち始めるのだけは事実だった。
 誰がなんと言おうとも、機会があれば、沙蘭と話をして、出来れば友だちになってもらいたい。それなのに、そんなチャンスは訪れず、リオの思いは、報われぬまま、虚しくつのるだけだった。

 その夜。

 寝苦しさに目を開けると、至近距離に男の裸の胸があって、リオは抱きすくめられていた。
「だ、誰?」
 叫び声は、大きな手のひらに吸収される。
 両目を大きく見開けば、暗闇の中、相手の顔が段々と浮かび上がってきた。
「光……」
 見知った顔が、下りてくる。
「ん……んんっ……」
 両手首をつかみ、リオを布団の上に貼り付けながら、光はゆっくりと唇をこじ開け、長い舌を差し入れてきた。
「ん……、どうして……?」
 いつの間にか衣服は脱がされている。内腿に、当たる固いものが、ひやりとした恐怖を沸き上がらせた。
「沙蘭の事なんか、気にするなよ。お前には俺がいるじゃないか。ん?」
 光の指が、そっとリオの乳首をつまむ。
「いやっ……どうしたの? 光、嫌だ」
「昼間の調教で、まだ立ち上がってる……。お前がここを舐められて啼いてるの、すごく可愛くて……たまらなかったよ」
 言いながら、光は桃色の芽を口に含んだ。まるで待ちかねていたかのように、リオの乳首は男の口に馴染み、舌に転がされ、愛らしく形を変えた。
「嫌っ……ああっ……誰か……ねえっ……やめさせてっ……」
「皆俺の味方だよ。助けなんてこない」
 光は言った。
「監督室からも、うんと離れてる。何をしたって、ここでならきっとばれないよ。諦めて、じっとしてて……優しくしてあげるから」
 ちゅぱっと音を立て、乳首から唇は離れた。
 そして再びリオの唇をふさぐ。
 片方の手がそろそろと下腹へと下りていった。
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