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#1@お兄ちゃん
しおりを挟む朝は美味しそうなお母さんの手料理の香りで始まる。いつも仕事が忙しいのに美味しい料理を出してくれるのは嬉しいけど、私が手伝おうとするといつも断られてしまう。
お母さんは弁護士をしている。その為やらなければならい事も沢山ある。負担を少しでも減らしてあげたくて、家事は基本的にお母さんとお兄ちゃん、私で分担して生活している。
忙しいはずなのに料理を作る手は止めずに「おはよう奏音」と毎日挨拶をしてくれる。これは昔からずっと変わらない日課ののうな物。何か手伝おうとお母さんの傍に立つ。
「おはようお母さん。何か手伝おうか?」
「そうねぇ……それじゃあご飯運ぶの手伝ってくれる?」
「それだけ?もう少し手伝わせてよ」
そうボヤいてもお母さんは只微笑むだけ。きっとお父さんに手料理を食べてもらいんだろうけど。それでも下準備だけでも手伝わせて欲しい。言ってもきっとお母さんは断る。それくらい私にだって分かる。
「おはよう奏音」
「お兄ちゃん。おはよう。丁度ご飯できたよ」
「今日も美味そうだな」
「おはよう零。今日はアルバイトかしら?」
丁度朝食を並べ終えた時、お兄ちゃんが起きてきた。お母さんの料理を褒めるお兄ちゃんはラフな格好でリビングに入ってきた。
席に着きながら2人の話を聞いていると、どうやらお兄ちゃんは今日はバイトは休みらしい。
「今日は午後からバンド練習があるくらいかな」
「練習って何時までやるの?」
「夕方までかな……もしかしたら遅くなるかもしれないけど」
お母さんの質問に続いて私が問う。
お兄ちゃんは大学時代の友達からバンドを組んでいるらしい。私はそれ以上の事は何も知らない。私も聞かないし、お兄ちゃんもあまり言わない。
「帰る頃に連絡頂戴ね。その時に夜ご飯食べるかどうかも教えてもらえるかしら」
「了解。連絡するよ」
2人が席に着くのと同時にお父さんも起きてきた。
家族全員が揃ってから食事をとるのが暗黙の了解になっている。
朝食を食べ終えて私は学校へ向かう準備を始めた。お父さんは私が準備している間に会社へ行ってしまった。
「それじゃあ行ってきます」
「奏音大丈夫か?一緒に行くか?」
玄関へ向かおうとしたらお兄ちゃんが着いてきてそう言った。
昔から過保護な所あったけど、私が高校に入ってから余計に酷い。それに待ち合わせしている所にお兄ちゃんが着いてきたら気まずい雰囲気になる。
「大丈夫だよお兄ちゃん。待ち合わせしてるからもう行くね」
「そうか……何かあったら連絡するんだぞ」
「はいはい。今度こそ行ってきます」
過保護だけど私が嫌がる事は絶対しない。断ると残念そうな、心配そうな表情をして念を押すように付け加えた。
それに対して私はちょっと困ったように笑ってみせて玄関を出た。
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