殿堂入りした愛なのに

たっぷりチョコ

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こーゆう運命なのか

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 中間テストが終わった。
「あー順位落ちた」
 渡り廊下に張り出されている中間テストの順位表を見ながら有吉が落胆の声をあげる。
「トップ10からはずれたね」
「絶っ対、鉄のせいだ! 夜中に電話してきたり休みの日は大学の研究でこき使われたり。抗議してやるっ」
 ぷんぷん怒る有吉。それでも鉄さんに呼ばれたら喜ぶんだよねーーと心の中で呆れながら自分もクラスでの順位を確認する。
「うそ」
 下から見ても見当たらないと思ったらトップ10以内、それも9位に入ってる!!
 有吉の袖を引っ張りながら有吉にも確認してもらう。
「お、マジだ! すごいじゃん鈴村、やったな!」
「うわーっっ、中1以来だっ」
 喜んでいると、
「Sクラスの三春、1位だって。しかも5教科満点。ヤバくね?」
「勉強教えて欲しいー」
「次元が違うって(笑)」
 通りながら話す男子たちの会話に思わず有吉と見つめ合い、すぐさまSクラスの順位を確認するとマジだった。
「うわーーエグイ。オレモベンキョウオシエテホシイーー」
 なぜか棒読みの有吉。目が死んでる。
「すごいなぁ、三春くん」

 何度か一緒に勉強したけどやってることは予習復習と、そんな特別なことはしてるように見えなかった。ただ、集中力がすごかった。耳栓をしてなくても声をかけても気づかないくらいの集中力。なのになぜかその場から離れようとするとすぐ気づくのが不思議だ。(腕掴まれた時は心臓止まるかと思った)
 実はまだ三春くんに好きと言ってない。何度もチャンスはあったし試みたんだけど邪魔されたりタイミング悪くて言えなかったり。
 三春くんの本気を知ってちゃんと気持ちに応えたいって思ってるのに・・・。うぅ。

 
「鈴村ぁーー! 9位おめでとう!!」
「あ、ありがとう。三春くんもすごいね、5教科満点」
「成績キープすんのむずい。もっと褒めて」
「う、うん。すごいすごい偉い」
 昼休みは三春くんと屋上で昼食をとる約束をしてる。今日はふたりそろって敷地内にあるコンビニで買ったお弁当だ。
「借りてるファイルとかノートいつ返せばいい?」
「いつでもいいよ。見てくれるの嬉しいけどそんなに面白いものじゃないと思うけど。特に赤点ばっかの最初のほうとか」
「そんなことないよ! 三春くんの一生懸命さが伝わっておれもやる気出るっていうか、なにげに三春くんのおとうさんが書きこみしてるアドバイスが目からウロコっていうか」
「え、オレじゃなくて親父?」
 しゅんっとわかりやすいくらい落胆する三春くん。
「えーと違くて。とにかくおれの知らない3年間が詰まってるから見てて飽きないっていうか」
 三春くんの成長がひしひし伝わるグラフとか字の汚さがわかるノートとか見ててきゅんきゅんするとか恥ずかしくて言えない。あと、三春くんの匂いがして落ちつくなんて口が裂けても・・・。(嗅いでるところを有吉に見られて思いっきりドン引きされた)
「うそうそ。オレのこと知ろうとしてくれてる鈴村、マジ好きっ」
 トンッと肩をくっつけてくる三春くん。
「三春くん・・・」
 こ、これはチャンスだ。自然な流れで「おれも好き」て言えるチャンスだっ。
 今だっ、と口を開こうとしたら三春くんに先を越される。
「あのさーずっと言いたいことあったんだけど、言っていい?」
「な、なんでしょう」
 言えなかったことに地味にへこみながらオレに寄りかかってお弁当を食べる三春くんの次の言葉を待つ。

「名前で呼んでいい?」
「名前?」
「そう! 下の名前。有吉も他の奴も鈴村って呼ぶじゃん。被ってるなー嫌だなーって思ってたんだよね」
「・・・なるほど。おれは別にいいけど」
「マジで? やった! ていうか、下の名前なんて今更だよねー。なんで小学校の頃から呼ばなかったんだろう」
 そう言われるとそうだ。あだ名で呼んでもよかったのでは・・・。と考え込んでいると、
「駆(かける)」
「・・・はい」
 ふいに呼ばれてドキッと心臓が跳ねる。三春くんの青い声で呼ばれてるとなんだか特別な名前みたいだ。
 呼んだ三春くんも照れる。
「なんかくすぐったいね」
「そ、そうだね。慣れないからかな」
「駆もオレのこと下の名前で呼んでね」
「・・・豪・・くん?」
「なんではてな付けんの?」
「なんとなく?」
「記憶曖昧だった?」
 ううん、と首を横に振って笑う。というか、照れくさいだけ。

 お弁当の卵焼きを口に運びながら、名前は言えたのに「好き」がなかなか言えないことに落ち込む。しょうがない、また次頑張ろう。今はもう毎日のように会えるんだからいつでも言える。

「土日のどっちかに動物園行かない?」
 お弁当を食べ終えた三春くんがスマホの画面を見せてきた。
「都内の動物園だね」
「今月からカピバラの赤ちゃん展示公開だってさ。見たくない? オレ、生で見たことないんだよねー」
「三春くんてカピバラ好きなんだ」(ちょっと意外)
「・・・好きっていうか、中間テスト終わったし駆とどっか行けたらなーって」
 視線をそらしながら照れる三春くん。
「え・・・」
「駆、動物好きじゃん。初デート、行かない?」
 じっと見つめられ、おれまで照れる。
「い、いいね! 行こうっか」
 
 うおぉぉぉ、初デート!! 付き合ってるみたいだ!(付き合ってます)
 
「なんかカピバラって強そう」
「え」
「あれ? 肉食動物じゃないの?」
「カピバラはめちゃくちゃ草食系動物だよ。ネズミだし。モルモットとかと一緒だよ」
「マジ! 見た目強そうなのに」
「そう、かな?」(おっとりしてる顔だと思うけど?)
「いつ行く? 今週の土曜は?」
「えーと・・・、あ、ごめん、部活だ」
 スマホのスケジュールアプリを見ながら謝ると、わかりやすいくらいにしゅんっと落ち込む三春くん。
「じゃー来週は?」
「来週はー・・・後輩のかてきょだ、ごめん」
「かてきょ?」
「家庭教師だよ。うちの学校、バイトの代わりにポイント制があって、他の生徒の勉強を見るとポイントがもらえるんだ。電子マネーみたいな感じでポイントで物買ったりできるからみんなけっこうポイント貯めるようなことやってるよ。他にも掃除とか教師の手伝いとか」
「なにそれ! ていうか、オレも駆に勉強教わりたいっ!!」
 食い入るように言われ、一歩後ろに下がってしまった。
「・・・中間テスト満点とる人に教えることないと思うけど・・・」
「ガーンッ」
 手を地面について盛大に落ち込む三春くん。
「なんかごめん。すぐには無理だけど予定調整するから動物園行こう!」
 とにかく明るく言ってみる。
「うん、よろしく」
 三春くん、半べそ顔だ。(なんか面白い)
「動物園でいいの? 行くなら三春くんも楽しめるようなところのほうがいいんじゃ・・・」
 正直、動物園はおればかり楽しんじゃいそうでっ・・・。カピバラの赤ちゃんなんて見たすぎる。
「絶対楽しいから大丈夫!」
 めちゃくちゃ断言された。
「三春くんて動物好きだったっけ?」
「ていうか、駆と行くから絶対楽しいに決まってる」
「おれ?」
「小学校ん時、よく動物とか昆虫の話してくれたじゃん? オレ、あれけっこう好きだったんだよねー。普段は大人しくてあんまり表情変わんない駆が動物の話になるとめちゃくちゃ喋るし活き活きするし」
「うっ・・・でもけっこう一方的に喋ってたし」
「なんで? オレさ、図鑑とか全然読んだりしないし昆虫とか観察するよりバスケとかしてるほうが好きだったから、オレの知らないこといろいろ知ってる駆ってすげーって思ってた」
「・・・話聞いてるとき反応薄いから合わせてくれてるだけかと思ってたけど、そんなふうに思っててくれてたんだ」
「え?! オレ、反応薄かった?! それ絶対、駆の邪魔しないようにって黙ってただけだって。つまんないとか全然思ってない」
「つまんない・・・」
 固まるおれに余計なことを言ったと慌てる三春くん。
「全然思ってないって! そーゆうこと言う奴いたけど、オレはめちゃくちゃ楽しんで聞いてたから!!」
 鼻息荒くして否定してくれる三春くんに嬉しくてつい顔が緩む。
「ありがとう、三春くん」
「つーか、下の名前で呼んで」
「あ、そうだった」
 改めて、
「ありがとう、豪くん」
「ん」
 照れつつもじっと見てくる三春くんにおれの頭にはてなが浮かぶ。何か訴えてるような・・・。堪らず、
「どうかした? 顔になにかついてる?」
 食べカスがついてるのかと、自分の頬を触るけどなにもついてなさそうだ。
「・・・なんでもない。もうそろそろチャイム鳴るし、このへんで切り上げよう」
「? そうだね」
 首のうしろに手を回しながら三春くんが背中を向けて立ち上がった。なんか腑に落ちない気持ちになりつつも、次は教室移動だったと思い出しせっせと残りのおかずを食べてお弁当を空にした。





 
「あ。有吉、自動販売機寄ってから教室戻るね」
「わーかった。オレの分もよろしく!」
「・・・カフェオレでいい?」
 ブイサインする有吉と別れて渡り廊下にある自動販売機に向かう。
 梅雨の時期は雨ばかりといっても湿度が上がって体育の授業のあとは汗もかいて喉が渇く。
 自動販売機に生徒手帳をかざしてピッとカフェオレのボタンを押す。次に自分のお茶のペットボトルのボタンも。
 顔写真付きの生徒証カードが生徒手帳に入っていて、実はそれが優れモノで、学校内で貯めたポイントをこのカードでお金として使えるのだ。(提案してくれたOBに感謝)
 取り出し口から買ったものを取り出していると、
「鈴村くんだ。どーも~」
 振り返ると、三春くんの友達の綾瀬くんがニコニコと笑顔で手を振っていた。ぺこりと頭を下げる。
「こんにちは。自動販売機に用ですか?」
「そーでーす」
「もう使い終わったんでどうぞ」
 何も持ってない方の手で自動販売機を譲るしぐさをしてその場から一歩横にずれると、綾瀬くんがニコニコしたまま「どーもー」と言って自動販売機の前に立った。

 第一印象がチャラそうな人だったけど、確かにいつもニコニコしてて胡散臭い感じで何を考えてるのか読めないけど、わりと礼儀正しいし絶対良いところの家柄だ。
 缶とペットボトルを両手で持って歩き出そうとしたところで綾瀬くんがまた話しかけてきた。
「体育着ってことはこれから?」
「あ、いや。終わったところで。汗かいて喉乾いちゃったんで」
「あーなるほど」
 ピッとボタンを押す音がしたあと、また綾瀬くんが、
「そーいえば、三春とつきあってるんだね」
「ぅえ?! し、知ってるの?!」
「うん、三春に毎日のろけ話聞かされてる」

 な、なんだと?!

「まさか、Sクラス・・・みんな・・・」
「さすがにそれはないから安心して」
 買ったばかりのいちごオレをゴクゴクと飲む、綾瀬くん。(甘いもの好きだ)
「知ってるの自分だけだと思う。三春ってけっこー周りをちゃんと見てるっていうか、話す相手見極めてるっていうか」
「・・・三春くんと仲、いいんだね」
「まー部屋隣同士だし、わりと気が合うんだよね。あ、安心して? 自分、女の子がめちゃくちゃ好きなんだよね。今のところ男には興味ないから」
「あ・・・はい」
 良い人・・・なのかな? 三春くんも仲良くしてるみたいだし。
「あーそーいえば、三春がこぼしてたよ」
「え?」
「まだ駆から好きって言ってもらってないって」

 !!!!!
 な、なんだと?!!!

 びっくりしすぎて危うく缶を落としそうになる。
 綾瀬くんがニコニコしながら、
「付き合ってるのになんで言わないのか知らないけど、鈴村くんてひとをもてあそぶような人に見えないし、早く好きって三春に言ってあげて」
 お節介なことしてごめんね~と言いながらイチゴオレのペットボトルを振りながら渡り廊下を渡って行った。

 雷に打たれた衝撃がっ。(打たれたことないけど)
 友達の綾瀬くんに愚痴こぼすくらい気にしてたなんて・・・ショックだっっ。(ガクッ)
 本人に問いただされるより、他人に、第三者に促されるのってなんかけっこうショックだ。
 壁に手をついてしばらく反省したあと、今日こそは言うぞと心に誓って教室へ戻った。

 先に制服姿になっている有吉にカフェオレの缶を渡していると、今来た担任の教師に声をかけられる。近寄ると、
「すぐに制服に着替えて来客室へ行くように」
「もう次の授業が始まると思うんですけど」
「麻生先生には俺から伝えてあるから問題ない。ボタンはちゃんと全部とめておけよ」
 そう言って去って行く担任の教師の背中を見つめながらハッとする。
 おじいちゃんだ。
 おじいちゃんが学校に来てるんだ。
 大慌てで席に戻って制服に着替える。 
 有吉が、
「なんかやらかした?」
「違う。おじいちゃんが来てるみたいなんだ」
「おじい・・・鈴村のおじいちゃんって言ったら付属大学の名誉教授、新名元吾(にいなげんご)!」
 デカい声を出したあと慌てて有吉が口を手でふさぐ。
「ごめん、呼び捨てにして」
「べつにいいよ。ここに本人いないし(笑)」
「でも今、この学校にいるんでしょ。やばっ」
 有吉がわかりやすくテンションを上げている。
 ワイシャツの第一ボタンまでしっかり締め、
「アフリカに行ってるって言ってたのに、いつ帰国したんだろう」
「わーお。相変わらずワールドワイドだな」
「1年のうちほとんど海外飛び回ってるから。前回会ったのは去年の秋ごろ?かな」
「あとで会えたりとかできないかな?」
 ソワソワする有吉に聞いてみるよと言って教室を出る。

 
 おじいちゃんは獣医で付属大学の名誉教授でもある。これはこの学校にいる生徒ならほとんど知ってる。特に獣医や生物関係を目指してる生徒なら一度は会ってみたい『生きた偉人』らしい。

 ちょっと乱れた前髪を整え、ついでに深呼吸をひとつして来客室のドアをノックする。奥から聞き覚えのある渋くて低い声が聞こえ、ゆっくりドアノブを回して部屋の中へ入る。
 半年ぶりのおじいちゃんは窓際に立っていた。
 身長はおれと同じくらいの170。服装は意外とラフな白のポロシャツにくすんだベージュのズボン。そしてなによりおれのおじいちゃんだとすぐわかるスキンヘッドとこんがり焼けた日焼け肌。室内にいるのにイカツイサングラスをかけている。
 おじいちゃんは振り返っておれを見るなりイカツイサングラスをとってニカッと笑った。
「よぉ、我が孫よ! どうだ調子は?」
 両手を広げてウエルカーム! な雰囲気をまき散らす。
 これで70近いとは思えない迫力と活気に15のおれがついつい引く。
 おじいちゃんに近寄ると筋肉質な太い腕をおれの肩にまわしてぐぃっと引き寄せる。
「お、お久しぶりです」
「敬語はいらんいらん! 身内だろ」
「今日はどうしたの?」
「大学の方に用があってな、思ったより時間が余ったから孫の顔でも見ようと思って来たんだ。先生さんは真面目によくやってると褒めていたが、どうなんだ駆の方は。しばらく成績が上がらんて嘆いていただろ」
「あーうん。でも今回の中間テストは思ったよりよかったよ」
「そりゃよかった」
 がはははと豪快に笑う。

 おれにとっておじいちゃんは子供の頃から尊敬していて家族の誰よりも好きな存在だ。おじいちゃんも海外を飛び回って忙しいにも関わらず頻繁におれとラインをしてくれる。
 この学校に合格した時もめちゃくちゃ喜んでくれたのはおじいちゃんだし、日本に帰国した時は直接会いにも来てくれる。両親よりもおれのことをすごく気にかけてくれる。
 でもそれは自分の孫。だけじゃなくおれのことを期待しているわけで。
「どうだ、学校は楽しいか?」
 年期の入った眼力に見つめられ、祖父とはいえヒュッと一瞬息が止まる。
「えーと・・・うん。部活も学校生活も充実してるよ。クラスもほとんどが中等部の人ばかりだし」
「・・・そうか、そりゃよかった。中等部に入学した頃は下ばかりうつむいてて心配したもんだったが・・・今は顔色がいい」
「・・・おじいちゃんにそう言ってもらえてホッとするよ。ほんとに今はけっこう充実してるんだ」
 そうか。と言って目じりのシワをくしゃっとさせてニコッと笑うおじいちゃん。だけど瞳の奥が笑っていない。
 ごくりと自分の喉が鳴る。
 おれの様子をたまたま見に来たというけど、絶対何かある。

 おじいちゃんはおれから離れて客用のソファにドカッと座って学校の事務員さんが淹れてくれただろうお茶をすすった。
 おれも何を言われるんだとドキドキしながら向かいのソファにちょこんと座る。
「駆が生き物に興味を持ってくれたのはすごく嬉しかった。しかもわしと同じ道を目指してくれるのはこのうえなく喜ばしい」
「おじいちゃんにそう言ってもらえるなんておれも嬉しいよ」
「一緒に働くのが今か今かと待ち遠しい」
「うん、頑張るよ」
「どうじゃ、わしとカナダに行かんか」
「カナダ?」
「来週には日本を離れる予定だ」
「来週?! え、急すぎだよ。学校は? 夏休みまでまだあるよ?!」
「今週はあと数日残ってる。検討するも、準備するにも十分だろ」

 うわーでた。
 世界を飛び回るおじいちゃんのこの時間の感覚。ちょっとついていけない。

「この学校は学ぶには最適だ。なんも問題もない。しかし、駆は将来わしと共に働いてもらうにはちと時間がもったいないと思ってな。わしはしばらくカナダの大学に呼ばれてある研究チームに参加することになった。そこは良い教授もそろってるし、設備も日本より充実しとる。生き物がいる環境も良い。駆が学ぶには申し分ない。どうじゃ」
「どうじゃ・・・て。え、おれ、飛び級して大学行くってこと?」
「最初は厳しいだろうからカナダの高校に半年ほど通えばなんとかなるだろ」
「お、おじいちゃん、おれのこと過大評価しすぎだよ」
「なーに言ってるんじゃ! わしの孫だろ。こんな温室みたいなところでのんびり学ぶよりちょっと過酷なところのほうがあっという間に成長する!」

 む、むちゃくちゃな。

「英語は喋れるんだから問題ない。心配ごとがあってもわしがいるから安心しろ」
「えーでも・・・今、すごく充実してて」
「駆の目標は獣医になってわしと一緒に生き物の研究じゃろ! しっかりしろ!」
「は、はい!」
「駆はちょっとガッツが足りんところがある。わしが尻を叩かないで誰が叩く」

 ま、マジか。

「まーしかし、わしも無下な人間ではない。駆の意見は尊重する。しかしよーく考えろ。自分にとって何が大事か」
 





 客室を出て廊下を歩く。
 今、教室に戻れば授業の途中だ。
 やる気も出ず、ふらふら~と中庭に出てベンチに座る。
 曇り空と湿気で余計に身体がだるくなる。

「来週はカナダ・・・か」
 
 ぽつりと言葉が漏れる。
 おじいちゃんの眼力でおれがどれだけ色ボケしてるのかわかった。そんで、へこんだ。
 このままこの学校で着実に進むのも悪くない。むしろ無難だ。(有吉とも以前そう話した)
 でも、のんびりしてていいのかとも思う。おじいちゃんんはあんな外見でまだバリバリ元気だけど70近い。おれと働くのを楽しみにしてくれてるし、おれもおじいちゃんからもっと学びたいことはたくさんある。それに、おじいちゃんとの約束だ。
 以前だったら不安はあるけど迷いはなかったと思う。だけど今は・・・。
 ちらちらと脳裏に三春くんが浮かぶ。
 さすがに「待ってて」とは言えない。カナダに行ったら一時帰国はあっても完全に戻るとしたら3年?それ以上かかるかもしれない。
 曇った空を仰ぎながら、
「好き。って言いたかったな・・・」

 せめて、大学に進学するまでは一緒にいたかった。
 悲しいけど、おれの気持ちは意外と決まっていた。それもまた悲しい。
 好きな人より自分の目標を選ぶことがやるせない反面、やっぱりこうゆう運命なのかとなんとなく悟った。
 殿堂入りの恋はやっぱりどこまでも殿堂で、手の届くものじゃないんだ。
 遠く、想い続けるものなんだ。

 
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