物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう

maricaみかん

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8章 導かれる未来

269話 次に向けて

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 とりあえず、アードラ商会が襲われた件については、一区切りついた感じだな。完全に終わった訳ではないだろうが、俺にできることはほとんどない。

 優先順位を考えたら、次の問題に取り掛かってもいいだろう。スマルト領の運営に関しても、それなりにうまく行っている様子だからな。他の問題も解決しなければ、結果的に今うまく行っているところにも波及しかねない。

 そう考えると、大きい問題から対処したいところだ。インディゴ領やスマルト領に被害が出そうなものを、優先的に。といっても、どちらも関係してきそうだな。人さらいからの人身売買と麻薬の流行だものな。むしろ、平和なところを狙う理由が大きいものだ。

 つまり、まだ休んでいられないということだな。悲しいことだ。そう考えていると、いつものメンバーで集まることになった。まあ、今後の動きについてだろうな。

 ということで、まずは俺から話をすることにした。

「さて、ひとつ目の問題は解決したと言っていいだろう。次はどうする?」
「残っているのは、人身売買と麻薬の流行ですね」

 どう考えても大ごとなのだが、この世界では珍しくもない気もする。前世でだって、治安の悪い国では当たり前にあったことだからな。中世くらいなら、もっと多かっただろう。そう考えると、無い方がおかしいのか。

 ただ、すべてを解決できないとしても、ラナが苦しまなくていい程度には抑えたい。正確に言えば、被害を受けない程度かもな。

 いずれにせよ、俺が動くのは決まりきっている。頼まれたことでもあるからな。

「うーん、どっちも面倒そうだよね。いや、解決した方が良いんだろうけどさ」
「レックス様のお望みのままに。私は、それに従うだけです」
「ご褒美が貰える機会。ちょうど良い」

 気が抜けそうな会話だが、あまり重苦しく考えてもな。重大な事件だからこそ、落ち着いて挑みたい。暗い顔をしていれば、むしろ解決は遠ざかるだろう。これは経験則ではあるが、正しい感覚のはずだ。

 結局のところ、いつも通りに実力を発揮するのが一番いい。そういう意味では、いい空気だと言える。深刻な顔をすればどうにかなるのなら、そうするところだが。現実は違うからな。

「俺としては、ラナが困っているのなら助けたいところだな。いや、民が苦しむのも気にはなるが」
「ありがとうございます、レックス様。それで、どちらの方が気になりますか?」

 人身売買も、麻薬も、かなりの大問題だ。とはいえ、どちらを優先すべきかだよな。誘拐のやり方次第では、死人が出ていてもおかしくない。無理矢理さらう形なら、親を殺してという可能性だってある。

 ただ、麻薬で人が死なないかと言えば、そうでもない。盗賊は絶対に死人が出ていたから優先していたが、今回のふたつは悩ましいな。

 単純に考えれば、被害者の顔が浮かぶのは人身売買の方だ。さて、どうするべきか。

「どうだろうな。麻薬も、かなり厄介なんだよな。みんなだって気を付けてくれよ。あれは、危険なものだ」
「分かったよ! でも、わざわざ粉なんて吸いにいかないよ?」

 そんな単純な話なら、もっと楽だっただろうがな。まあ、知らないのは仕方のないことだ。関わりがなければ、知ろうとすら思わないだろう。

 なら、こちらが伝えるのが大事だよな。どういう危険性があって、どんな問題があるのか。

「いや、食べ物に混ぜたり、飲み物に混ぜたり、薬と偽ったり、いろいろあるんだ」
「ふむ。でしたら、他者の出したものは口にしないのが無難でしょうか」

 シュテルの言葉に頷いておく。信頼できない人から出されたものは、安易に口にできない。現代日本でも、実際にあるらしい手口だからな。飲み物なんかに混ぜておいて、麻薬中毒にするやり口というのは。

 まあ、警戒に値することと理解してくれれば、それでいい。わざわざ麻薬に溺れるだなんて思っていないからな。罠として成立するものなんだと認識してもらえれば十分だ。

「レックス様の魔法なら、どうにかなりそう」
「サラ、良い案だ。とりあえず、最低限の対策を施しておく。アクセサリーを出してくれ」

 頭を撫でつつ、みんなのアクセサリーに魔法を込めていく。とりあえずは、毒対策の魔法と同様のものだな。身体の正常な機能を妨害する物質を弾く。そんな感じだ。

 とはいえ、完璧ではないだろう。ただ、依存症になる事態は避けられるはずだ。現状は、それで十分だ。フィリスと会う機会があれば、もうちょっと進歩させたいが。

 やはり、俺は一人前とは言い難いな。どうしても、誰かに頼ってしまう。必ずしも悪いことだとは思わないが。人に協力してもらえるということ自体が、俺の大きな財産だからな。

「レックス様、それでは、麻薬を優先するということですか?」
「いや、どうだろうな。人身売買については、どうなっている?」
「簡単に説明すると、女子供をさらって、娼館や盗賊に売られる形ですね」

 ラナは淡々と語るが、俺は冷静さを保つのに苦労していた。平和な世界に生きていた人間としては、ありえないことだからな。

 無理やり人をさらって、望まぬ仕事に従事させる。奴隷よりもたちが悪い。

「それは……。率直に言って、許しがたいな……」
「レックス様がお望みならば、根絶やしにいたします」

 シュテルの言葉も、今はありがたい。少し、頭が冷えたからな。俺の怒りに、周囲を付き合わせられない。危険に巻き込んだりできない。そうだよな。

 俺は、みんなの命を預かっているんだ。だからこそ、安易な判断も行動もできない。それを再確認できた。

「いや、無理はするな。こういうものは、組織立って行動するものだ。相手次第では、危険になる」
「なら、僕も頑張るよ! そっちの方が良いでしょ?」
「レックス様が一緒なら、安心。だから、心配いらない」

 うん、みんな俺を信頼してくれているんだな。そんな感じの目で見てくれている。なら、冷静に判断しよう。

 どっちの方を優先すべきか。それは、どちらを先にした方が犠牲を抑えられるかだ。そういう観点なら、即効性が高いのは、人身売買を潰すことだよな。これで良いはずだ。

「それで、どちらからにしますか? あたしは、どちらでも構いませんよ」
「なら、人身売買の方にするか。麻薬に関しては、魔法で症状を抑える手もあるからな」
「分かりました。では、そのように。こちらで、情報をまとめておきますね」
「それにしても、娼館か……。ひょっとしたら、僕達だって可能性はあったよね」
「レックス様がいらっしゃらなければ、あり得たでしょうね。感謝いたします、レックス様」
「同感。だから、いっぱい恩返しする」

 みんな、どこか遠くを見ている。実際、飢えていた時期があったらしい。身売りしていた可能性は、あったのかもな。やはり、俺達の出会いは奇跡に支えられている。いま一緒に居られることに、感謝しないとな。

「そのために無理をしないでくれよ。お前達が幸せであることが一番なんだからな」
「もちろんだよ! これからも、レックス様と一緒に居たいからね」
「かしこまりました。すべては、レックス様のために」
「なら、ご褒美をもっと。それで十分」
「しかし、昔のお前達みたいな人が被害者となれば、気合いが入るな。よし、やるか」

 人さらいと、人を売り買いする人間。そのどちらにも対処しないと、根本的な解決にはならないだろう。難しいはずだし、手間もかかるに違いない。それでも、絶対に成し遂げてみせる。
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