物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう

maricaみかん

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8章 導かれる未来

274話 仲間の意味

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 商会の襲撃と人身売買と、ふたつの問題が解決できたと言って良い。完全に何もかもが良くなることはないだろうが、これ以上手を入れても大きな成果はないだろう。そんなところだな。

 ということで、次に着手したいところだ。それが終われば、ラナの抱えている問題は全部解決できる。そうしたら、またお別れだろうな。寂しくはあるが、仕方のないことだ。

 いくらなんでも、ラナとの時間を増やしたいがために、人々が苦しむのを見過ごすつもりはない。そこまで堕ちる気は。

 それに、俺だって、というかブラック家だって、いくつも課題があるからな。インディゴ家ばかりにかかりきりになることはできない。

 今こうしている間にも、ジャンやミルラは仕事を抱えているのだろうからな。それを楽にすることだって、大事な役割だ。ちゃんとしないといけないことだよな。

 ということで、急ぎすぎないようにしつつ、それでも迅速に解決したいところだ。ラナが困ることだって、大きな問題なのだから。

 そして、いつものようにみんなで集まる。おそらくは、今回が最後のブリーフィングになるだろうな。

「次の、というか最後の問題は、麻薬の流行ですね。インディゴ領でも、常用している人は確認しています」

 麻薬が入ってきているとなると、とても困るだろうな。ここで止めなければ、今度は俺のブラック領やフェリシアのヴァイオレット領まで巻き込まれかねない。そういう意味でも、早めにどうにかしたいところだ。

 何が困るって、依存性が高いことだよな。麻薬中心の生活をする人とか、麻薬のために何でもする人とかが出るとマズい。

 思考能力を低下させる都合上、軽率に犯罪に走ったりする人が増えるのも問題なんだよな。まともな状態なら理性が働くのに、中毒症状が出ていると違ったりする。

 総じて、あまり良いものではない。根絶は難しいにしても、流通量は減らしたいところだ。

「かなりの大問題なんだよな。あれは厄介だぞ」
「レックス様がそう言うのなら、ちゃんと対策しないとね! 一応、大ごとみたいだし」
「私のすべては、レックス様の望むままに。麻薬が悪だというのなら、葬り去るまでです」
「撫で撫でと抱っこがあるのなら、それで十分」

 いつも通りのみんなで、安心できるような、そうでもないような。まあ、警戒を促すくらいはしておくか。言葉だけなら、タダみたいなものだし。

 とはいえ、実際の対策まで言えないのなら、あまり意味もないんだが。そういう意味でも、タダ相応って感じだな。

 ただ、何かしらの案が出るだけでも意味のあるところだ。言わないよりはマシ程度なら、言っておくか。大して時間も取られないのだから。

「気を付けてくれよ。一応、アクセサリーで対策しているとはいえ。麻薬は危険だからな」
「もちろんです。レックス様にご迷惑はおかけしません。あたしだって、中毒にはなりたくないですし」
「レックス様以外に溺れるような罪を犯したりなどしません」
「ちゃんと安心してもらう。しっかり気を付けて、対策する」
「そうだね。僕達だって危険だというのなら、警戒しないとね」

 シュテルの言う罪、もはやメチャクチャだな。サラが普通のことを言うくらいには、おかしなセリフだぞ。すでにツッコミすらされなくなっていて、徐々に侵食されている感覚がある。

 まあ、言葉が過激なくらいで、行動はおとなしいものなんだが。拷問までしているラナの方が、行動としては残酷なくらいだ。まあ、必要なことではあるのだが。

 みんなが麻薬に気をつけるという意識があるだけでも、だいぶ違うはずだ。だから、シュテルの言葉も、必ずしも悪いものではないんだよな。実際、麻薬中毒はとても治療が難しいのだし。

「ああ、頼むぞ。お前達に何かあったら、後悔では済まないからな」
「慎重に行動するのは良いとして、どうやって行動するかですね。あたしも、方針が思いついていませんから」

 首をひねりながら、そんな事を言っている。まあ、基本的には追跡調査するだけだろうな。その手段としては、色々とあるだろうが。

 結局のところ、地道な手段こそが強い。魔法で近道できるとはいえ。あまり奇抜なことをやろうとしても、失敗するだけだろうな。これまでと同じように、人の動きを追いかけることが基本になるだろう。あるいは、麻薬に魔力を侵食させるのも手ではあるかもしれないが。そのくらいだよな。

「闇魔法を使えば、調査は進むと思う。問題は、どうやって中毒者を助けるかだな」
「水魔法で癒せるのなら、こちらでできることもあるのですが」
「その口ぶりだと、無理なのか? だったら、俺がどうにかするしかないか?」

 闇魔法を使えば、正常な状態に戻すことは可能だろう。美容魔法の応用で問題ないはずだ。だから、手がない訳ではない。

 とはいえ、どこまでできるかが課題になるよな。流石に、一度に数百人の治療はできないだろうし。

「とはいえ、レックス様が全員を助けるのは無理でしょ。ある程度は、諦めないと」
「そもそも、全ての麻薬中毒者を特定することが難しいというか、不可能ですからね。少なくとも、私には」
「流通を止めるところまでが、私達にできること。それ以上を気にしても、仕方ない」

 みんな、気を使ってくれているのだろう。だが、俺だって気をつけるべきことだった。下手に数人を救ってしまうと、誰を救うのかをラナが選ぶことになる。結果的に、ラナに不満がぶつけられる可能性は高いよな。

 そうなってしまうくらいなら、放っておいた方がマシかもしれない。とりあえず麻薬の流通を止めて、それで終わりにする方が。

「まあ、そうか。あらゆる民の生活を守るなんて、無理だからな。妥協は必要か。結局、ラナの仕事になるものな」
「あたしの心配なら不要ですけどね。でも、ありがとうございます」
「人に負担をかける前提の善意なんて、偽善と言うのもおこがましいからな。当然のことではある」
「僕達は、レックス様に負担をかけたくないから頑張るんだ。それだけは、覚えておいてね」
「そうですね。あたし達は、レックス様に救われたんですから。その恩返しなんです」
「撫で撫でと抱っこがもらえるのなら、その対価は払う。それだけのこと」

 みんな、俺を心配してくれている。だからこそ、簡単に甘えたくないんだ。俺を大切にしてくれる相手に負担をかけるなんて、望むところではないからな。

 むしろ、どうでも良い相手の方が頼りやすいのだろう。相手が苦しんでいても、そこまで見えてこないのだから。

「ありがとう、みんな。でも、俺は大丈夫だ。なにせ、強いからな」
「僕はそういうところが心配なんだけど。僕達は協力しあう仲間なんだからね。絶対に、忘れないでね」

 まっすぐに、俺の目を見てくる。そうだな。大切なことだ。以前、抱え込みすぎるなと注意された。もっと頼れと。それを反省したのだから、行動に移すべきなんだよな。

 お互いにとって大事な相手なんだから、しっかりと協力する。本来なら、当たり前のことだ。分かっていて、何度も間違えてしまうのだが。

 やはり、俺はみんながいないとダメだな。ただ強い力を持っているだけで、俺の精神は平凡なんだろう。

「ああ、もちろんだ。だから、俺が間違えそうになったら、言ってくれ。それで、止まってみせるから」

 そう言うと、みんなは笑顔で返してくれた。心配をかけないように、適度に頼りつつ問題を解決していこう。それで、良いんだよな。
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