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11章 示すべき価値
380話 本当の勝利
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俺の目の前には、剣を構えたエリナがいる。それに対して、俺も剣を構える。試合とはいえ、真剣を使っているからな。下手したら死ぬのだろう。まあ、闇魔法のアクセサリーもあるし、可能性は低いとはいえ。
ただ、エリナの剣技は俺の防御魔法を平気で抜いてくる。油断すれば、大怪我を追うのは間違いないだろうな。少しも気を抜けない戦いになるな。
まあ、そんなことは関係ない。俺はハンナのためにも、俺自身のためにも、ただ勝つだけだ。全身全霊をかけてぶつかって、壁を超える。それだけが、俺のやるべきことだ。
ここに来たからには、もはやハンナなんて関係ない。ただ目の前の相手にすべてをぶつける。それが結果的に、誰にとっても良い未来につながるはずだ。
エリナの顔や体を見ると、程よく力が抜けているのを感じるな。やはり、歴戦の傭兵ということだろう。平常心を保つのに、慣れている。さて、俺もぶつかっていくだけだ。剣を握る手に、力を込めた。
「さて、やろうか。エリナ、全力で来いよ」
「もちろんだ。今の戦いを見て気を抜けるほど、私は強くないからな」
そう言いつつも、エリナは落ち着いた表情だ。いかにも気合いが入っているというような顔はしていない。おそらくは、俺達の中で一番に常在戦場を体現できているのがエリナなのだろう。
やはり、エリナから学べることはいくらでもある。本当に、最高の師匠を手に入れられたものだ。フィリスともども、出会いに感謝したいな。
俺がここまで強くなれたのは、エリナとフィリスの存在あってのことだ。それは、これから先の人生でも変わらない。一生尊敬し続けるだろうな。
だが、だからこそ負けたくない。最高の師匠に、俺の成長を見せてやりたい。それでこそ、一番弟子というものだよな。
「あたしに勝っておいて、エリナになんか負けるんじゃないわよ」
「ふふ、カミラに意識されていると思えば、悪くないな。なあ、レックス」
エリナは笑いながら、こちらに話しかけてくる。カミラはエリナをにらんでいる。まあ、良いライバル関係なのだろうな。お互いに剣技を志すものとして、意識し合っているのだろう。
そういうライバルこそが、俺にとってはハンナでもあった。もちろん、カミラだって大事なライバルだ。後は、ルースだろうか。
3人しか挙げられないあたり、とても貴重な存在だ。だからこそ、ハンナには立ち上がってほしい。俺のわがままかもしれないが、それでも。
大切な友人として、前を向いてほしいという気持ちもある。だが、あくまで俺は、楽しい時間を取り戻したいだけなのだろうな。だが、構わない。それでハンナが元気になれるのなら、理由なんてどうでもいい。
結局、俺の戦いから何を見出すかは、ハンナ次第だ。俺の内心なんて、関係ないのだから。
今の俺がやるべきことは、全力でエリナと戦うことだけ。それだけだ。
「エリナは姉さんにも勝っているんだよな。ほんと、大したものだよ」
「……確認。今から、試合を始める」
「頑張ってね、ふたりとも!」
「今度こそ、大怪我はしないでもらいたいものですね」
「レックス殿……」
みんなが俺達を見守っている。だが、俺はエリナ以外のすべてを意識から外した。そうすることこそが礼儀で、本気というものだからだ。
さあ、やるぞ。誰が最強の剣士か、ここで明らかにしてやるさ。
「さて、いくぞ! 音無し!」
「闇の衣!」
防御魔法だけを展開して、エリナの剣を受ける。当然、防御魔法ごと切られていく。できた傷は、回復魔法で最低限だけ癒やす。動けるのならそれでいいと、動作に関わる部分だけを重点的に。
極端な話、死んでさえいなければ、後は右腕と足だけ無事なら構わないという覚悟だ。そうでなければ、エリナの剣には対抗できないだろう。
中途半端なことをしてしまえば、何もつかめない。ならいっそ、邪魔なものすべてを捨ててやるだけだ。
「どうした、反撃してこないのか? ……いや、私の剣に、対策するつもりか!」
「もう分かったのか。魔力の流れを斬るというのなら、切れない流れを生み出すまで」
エリナが魔法を剣で切り裂いているのは、魔力の流れに剣をくぐらせているからだ。つまり、魔力の流れを上手く生み出せれば、エリナの剣技を潰せる。
それをつかむためなら、抵抗なんて捨てて良い。ただ相手の動きと魔力の動きに全神経を注ぐ。それだけに、すべてをかける。
エリナは少し驚いた顔をしている。ちょっとだけ、いい気分だ。いつも落ち着いたエリナに、面白いことを仕掛けられたのだから。
だが、それで満足するなんてありえない。勝って初めて、俺は満たされるんだ。
「今でも手傷を負っているというのに! 傷だらけになるぞ!」
「安いものさ。それでお前の剣を超えられるのならな!」
「……驚嘆。レックスの魔力は、どんどん複雑な動きになっている」
「あの剣技って、私達の魔法まで切り裂いちゃいそうよね! エリナ先生、流石だわ!」
「光魔法使いを殺せる剣術なんて広まれば、大問題ですよ。まったく、困ったものです」
「ただの剣技で、闇魔法を斬る……。今になって、恐ろしさが分かりますね……」
何度も剣で刻まれながら、俺は魔力の動きを変化させ続けた。波のような動き、渦のような動き、散乱のような動きと、色々と試しながら。
そうすることで、エリナの剣を潰せる条件が分かってきた。要は、魔力の隙間が剣に対して垂直になると強い。そんな手応えがあった。
つかんでからは早く、どんどんエリナの攻撃を防げるようになっていった。
「ほら、覚えてきたぞ! エリナ、ここで終わりか!?」
「まだまだ! 音無し!」
目にも追えないような速度で、何度も何度も切りつけてくる。魔力に剣が触れる瞬間に、魔力の操作を変える。そんな絶技を要求されて、何度も失敗した。
手傷は増えていくが、だんだん魔力操作がうまくなっていく実感があった。今の俺は、きっと笑っているのだろうな。楽しくて楽しくて、仕方ないのだから。
「平気で奥義を連発してきやがって! 殺す気なんじゃないのか!?」
「この程度で、レックスは死なないだろうさ!」
「まったく、大した期待だよ! だが、応えてやるさ!」
「見せてみろ! 音無し!」
もう一度、エリナは奥義を連発してくる。瞬きすら許さない速さで、ひたすらに切りつけられる。だが、おかげでコツをつかんだ。周囲の空気を感じることができれば、一手早く動ける。それが分かった段階で、全ての剣撃に対応できるようになった。
「つかんだぞ。これなら、剣技で俺の魔法は斬れない!」
エリナは一度止まる。それを受けて、俺は魔法をまとうのをやめて、剣を構えた。俺とエリナの戦いの決着は、剣でなくては。そう考えながら、俺は笑う。
「そう言いながら、防御魔法を解除するのか。……なるほど、面白い」
「剣技だけでお前を超えてこそ、師への恩返しというものだよな! 音無し!」
「受けて立つぞ! 音無し!」
お互いが目にも止まらぬ剣技を放つ。俺はただ、目の前の一撃に全身全霊をかける。対してエリナは、連撃を前提にしている。それが勝負を分けた。
結果的には、俺の剣が先に相手の首元に届いた。当然、そこで寸止めする。お互いが止まって、俺の剣先はエリナの首に触れていて、エリナの剣は俺の首から数センチ離れていた。
後先考えなかったことが、結果的に功を奏す。そんな事もあると分かる決着だったと言えるだろう。
「俺の方が、ちょっとだけ速かったみたいだな。俺の勝ちだ、エリナ」
「私の技を、よくもそこまで磨いたものだ」
「ただ一撃にすべてを込めただけだ。お前みたいに、連発はできない。だが、大きな一歩だろ?」
「まったくだ。さすがは私の弟子だ。お前を誇りに思うぞ、レックス」
そう言いながら、エリナは俺の方を叩いた。晴れやかな笑顔を向けられて、俺まで嬉しくなる。
ハンナの方を見ると、胸の前で両手を握っていた。そのまま、俺達をまっすぐに見つめてきた。
「レックス殿は、どうしてそこまで……」
「見ていたか、ハンナ。これが、俺だ。お前の友達で、誰よりも強い男だ」
「そうですね、わたくしめの、ために……。なら、わたくしめは……!」
ハンナは強く拳を握っていた。その目を見て、俺は確信する。ハンナの心に火が灯ったのだと。
これで、俺の完全勝利だ。そんな達成感を得ながら、俺は剣を振り上げた。
ただ、エリナの剣技は俺の防御魔法を平気で抜いてくる。油断すれば、大怪我を追うのは間違いないだろうな。少しも気を抜けない戦いになるな。
まあ、そんなことは関係ない。俺はハンナのためにも、俺自身のためにも、ただ勝つだけだ。全身全霊をかけてぶつかって、壁を超える。それだけが、俺のやるべきことだ。
ここに来たからには、もはやハンナなんて関係ない。ただ目の前の相手にすべてをぶつける。それが結果的に、誰にとっても良い未来につながるはずだ。
エリナの顔や体を見ると、程よく力が抜けているのを感じるな。やはり、歴戦の傭兵ということだろう。平常心を保つのに、慣れている。さて、俺もぶつかっていくだけだ。剣を握る手に、力を込めた。
「さて、やろうか。エリナ、全力で来いよ」
「もちろんだ。今の戦いを見て気を抜けるほど、私は強くないからな」
そう言いつつも、エリナは落ち着いた表情だ。いかにも気合いが入っているというような顔はしていない。おそらくは、俺達の中で一番に常在戦場を体現できているのがエリナなのだろう。
やはり、エリナから学べることはいくらでもある。本当に、最高の師匠を手に入れられたものだ。フィリスともども、出会いに感謝したいな。
俺がここまで強くなれたのは、エリナとフィリスの存在あってのことだ。それは、これから先の人生でも変わらない。一生尊敬し続けるだろうな。
だが、だからこそ負けたくない。最高の師匠に、俺の成長を見せてやりたい。それでこそ、一番弟子というものだよな。
「あたしに勝っておいて、エリナになんか負けるんじゃないわよ」
「ふふ、カミラに意識されていると思えば、悪くないな。なあ、レックス」
エリナは笑いながら、こちらに話しかけてくる。カミラはエリナをにらんでいる。まあ、良いライバル関係なのだろうな。お互いに剣技を志すものとして、意識し合っているのだろう。
そういうライバルこそが、俺にとってはハンナでもあった。もちろん、カミラだって大事なライバルだ。後は、ルースだろうか。
3人しか挙げられないあたり、とても貴重な存在だ。だからこそ、ハンナには立ち上がってほしい。俺のわがままかもしれないが、それでも。
大切な友人として、前を向いてほしいという気持ちもある。だが、あくまで俺は、楽しい時間を取り戻したいだけなのだろうな。だが、構わない。それでハンナが元気になれるのなら、理由なんてどうでもいい。
結局、俺の戦いから何を見出すかは、ハンナ次第だ。俺の内心なんて、関係ないのだから。
今の俺がやるべきことは、全力でエリナと戦うことだけ。それだけだ。
「エリナは姉さんにも勝っているんだよな。ほんと、大したものだよ」
「……確認。今から、試合を始める」
「頑張ってね、ふたりとも!」
「今度こそ、大怪我はしないでもらいたいものですね」
「レックス殿……」
みんなが俺達を見守っている。だが、俺はエリナ以外のすべてを意識から外した。そうすることこそが礼儀で、本気というものだからだ。
さあ、やるぞ。誰が最強の剣士か、ここで明らかにしてやるさ。
「さて、いくぞ! 音無し!」
「闇の衣!」
防御魔法だけを展開して、エリナの剣を受ける。当然、防御魔法ごと切られていく。できた傷は、回復魔法で最低限だけ癒やす。動けるのならそれでいいと、動作に関わる部分だけを重点的に。
極端な話、死んでさえいなければ、後は右腕と足だけ無事なら構わないという覚悟だ。そうでなければ、エリナの剣には対抗できないだろう。
中途半端なことをしてしまえば、何もつかめない。ならいっそ、邪魔なものすべてを捨ててやるだけだ。
「どうした、反撃してこないのか? ……いや、私の剣に、対策するつもりか!」
「もう分かったのか。魔力の流れを斬るというのなら、切れない流れを生み出すまで」
エリナが魔法を剣で切り裂いているのは、魔力の流れに剣をくぐらせているからだ。つまり、魔力の流れを上手く生み出せれば、エリナの剣技を潰せる。
それをつかむためなら、抵抗なんて捨てて良い。ただ相手の動きと魔力の動きに全神経を注ぐ。それだけに、すべてをかける。
エリナは少し驚いた顔をしている。ちょっとだけ、いい気分だ。いつも落ち着いたエリナに、面白いことを仕掛けられたのだから。
だが、それで満足するなんてありえない。勝って初めて、俺は満たされるんだ。
「今でも手傷を負っているというのに! 傷だらけになるぞ!」
「安いものさ。それでお前の剣を超えられるのならな!」
「……驚嘆。レックスの魔力は、どんどん複雑な動きになっている」
「あの剣技って、私達の魔法まで切り裂いちゃいそうよね! エリナ先生、流石だわ!」
「光魔法使いを殺せる剣術なんて広まれば、大問題ですよ。まったく、困ったものです」
「ただの剣技で、闇魔法を斬る……。今になって、恐ろしさが分かりますね……」
何度も剣で刻まれながら、俺は魔力の動きを変化させ続けた。波のような動き、渦のような動き、散乱のような動きと、色々と試しながら。
そうすることで、エリナの剣を潰せる条件が分かってきた。要は、魔力の隙間が剣に対して垂直になると強い。そんな手応えがあった。
つかんでからは早く、どんどんエリナの攻撃を防げるようになっていった。
「ほら、覚えてきたぞ! エリナ、ここで終わりか!?」
「まだまだ! 音無し!」
目にも追えないような速度で、何度も何度も切りつけてくる。魔力に剣が触れる瞬間に、魔力の操作を変える。そんな絶技を要求されて、何度も失敗した。
手傷は増えていくが、だんだん魔力操作がうまくなっていく実感があった。今の俺は、きっと笑っているのだろうな。楽しくて楽しくて、仕方ないのだから。
「平気で奥義を連発してきやがって! 殺す気なんじゃないのか!?」
「この程度で、レックスは死なないだろうさ!」
「まったく、大した期待だよ! だが、応えてやるさ!」
「見せてみろ! 音無し!」
もう一度、エリナは奥義を連発してくる。瞬きすら許さない速さで、ひたすらに切りつけられる。だが、おかげでコツをつかんだ。周囲の空気を感じることができれば、一手早く動ける。それが分かった段階で、全ての剣撃に対応できるようになった。
「つかんだぞ。これなら、剣技で俺の魔法は斬れない!」
エリナは一度止まる。それを受けて、俺は魔法をまとうのをやめて、剣を構えた。俺とエリナの戦いの決着は、剣でなくては。そう考えながら、俺は笑う。
「そう言いながら、防御魔法を解除するのか。……なるほど、面白い」
「剣技だけでお前を超えてこそ、師への恩返しというものだよな! 音無し!」
「受けて立つぞ! 音無し!」
お互いが目にも止まらぬ剣技を放つ。俺はただ、目の前の一撃に全身全霊をかける。対してエリナは、連撃を前提にしている。それが勝負を分けた。
結果的には、俺の剣が先に相手の首元に届いた。当然、そこで寸止めする。お互いが止まって、俺の剣先はエリナの首に触れていて、エリナの剣は俺の首から数センチ離れていた。
後先考えなかったことが、結果的に功を奏す。そんな事もあると分かる決着だったと言えるだろう。
「俺の方が、ちょっとだけ速かったみたいだな。俺の勝ちだ、エリナ」
「私の技を、よくもそこまで磨いたものだ」
「ただ一撃にすべてを込めただけだ。お前みたいに、連発はできない。だが、大きな一歩だろ?」
「まったくだ。さすがは私の弟子だ。お前を誇りに思うぞ、レックス」
そう言いながら、エリナは俺の方を叩いた。晴れやかな笑顔を向けられて、俺まで嬉しくなる。
ハンナの方を見ると、胸の前で両手を握っていた。そのまま、俺達をまっすぐに見つめてきた。
「レックス殿は、どうしてそこまで……」
「見ていたか、ハンナ。これが、俺だ。お前の友達で、誰よりも強い男だ」
「そうですね、わたくしめの、ために……。なら、わたくしめは……!」
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