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13章 狙われるもの
444話 伝えたいこと
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メアリの属性が増えたという噂について、魔道具に関しては対策を済ませた。完璧とまでは言えないだろうが、現状でできることとしては悪くないはずだ。
もちろん、当人を守るということも大事になってくる。とはいえ、ブラック家から出さえしなければ、まあ安全だとは思う。
そうなると、現状で優先順位が高いのはシュテルだ。外で活動する機会もあり、そして戦力としては心もとないからな。
ということで、隙を見てシュテルを呼び出し、今後について説明をしようと思う。と言っても、気をつけてほしいと言うくらいのものではあるが。あまり護衛を増やしてしまえば、それが結果的にシュテルにたどり着かせるきっかけになりかねないからな。
現状、どこまで相手が知っているのか分からない。だからこそ、対応に悩む部分は多い。頭を抱えたくなるが、しっかりしなければな。
呼び出したシュテルは、まっすぐに俺の方を見ながら姿勢を正している。忠誠心の深さを感じるところだ。俺としては、友達くらいに接してくれた方が嬉しくはあるが。ただ、強制はできない。シュテルの気持ちを捨てさせたくはないからな。
とはいえ、今から告げる言葉は、シュテルの心を曲げさせるものではあると思う。俺は息を吸って、シュテルと目を合わせた。
「シュテル、今ブラック家で何が起きているか、知っているか?」
「申し訳ありません、レックス様。私には、何のことか……」
すぐにシュテルは頭を下げる。完全に、言い方に失敗してしまったようだ。シュテルを傷つけたいわけじゃないんだよな。
どうにも、俺に対する忠誠心が大きすぎて難しい。否定する気はないが、俺の言葉を重く捉えすぎている気がする。まるで王様の発言かのように扱われているからな。そこまで大した人間じゃないのだが。
まあ、シュテルの気持ちの問題だから、俺は受け入れるしかない部分も多い。ある程度は、諦めよう。そんな風に考えつつ、俺はどういう意図かを話していく。
「いや、責めているわけじゃないんだ。むしろ、こちらの問題に巻き込みそうなくらいでな。すまない」
「レックス様のためならば、何に巻き込まれようとも構いません!」
澄み切った目で、激しく叫ばれる。忠誠心が、重い。シュテルの大事な感情だから、大事にはしたい。とはいえ、俺が死ねと言ったら死にかねないのはちょっとな。もう少し、軽くなってくれると助かる。
まあ、まずはお礼だろう。忠誠を否定されたと思えば、それこそシュテルの心を傷つけかねないのだから。
「ありがとう。とはいえ、説明は必要だろう。簡単に言うと、メアリの属性が増えたと噂が流れている」
「レックス様のお力ですね。では、隠したいと……?」
「そういうことではない。シュテルの身に危険が迫らないか、気をつけてくれという話だ」
「何があろうとも、レックス様の情報は漏らしません!」
食い気味に強く宣言された。固い決意が目に見えて、天を仰ぎそうになってしまう。俺のことを大事にしすぎて、自分を軽く扱ってしまっている。それが最大の問題だ。
シュテルのことだから、本気で拷問されようとも何も言わないんだろうな。だが、それは俺が嫌だ。分かってもらいたいことだ。何度も伝えているのだが、どうにも伝わりきらない。
「いや、情報くらいは売っていいから、とにかくお前の安全を優先してくれ」
「嫌です! レックス様のご迷惑になるなど、何があったとしても嫌です!」
首を激しく振りながら叫んでいる。俺を大事に思う気持ちだけで、ここまでの覚悟を決めさせてしまうのだから。本当に、罪深いことだ。シュテルの感覚を、完全に歪めてしまった。
だが、俺だってシュテルを大切に思っているんだ。それを、どうにか理解してほしい。俺はシュテルと目を合わせて、ゆっくりと話していく。
「分かってくれ。お前を犠牲にして得た平穏になんて、何の意味もないんだ」
「レックス様のお気持ちは、分かるつもりです。ですが……」
そう言いながら、目をそらされた。本当は、シュテルだって俺が何を望んでいるかは分かっているはずなんだ。だが、恩がシュテルの感情を支配してしまっている。
ならいっそ、シュテルの恩に漬け込んだ物言いをするのが良いか?
「なら、あえてこう言おう。お前は俺のものだ。俺の道具だ。その使い方は、俺が決める」
「レックス様……。あなたは、どこまで……」
涙ぐみながら、シュテルはこちらを見ている。字面ではなく、俺の意図が伝わってしまったみたいだ。今回ばかりは、嬉しくない。命令として受け取ってもらえた方が、助かっていた。
とはいえ、シュテルの心に響くものはあったはずだ。それを信じながら、俺はシュテルに目を合わせ続ける。
「なあ、シュテル。お前にとって、俺はお前を容易く捨てるような冷たい主か?」
「いいえ! それだけは、ありえません!」
「なら、俺を仲間を捨てた人間にしないでくれ。頼むよ、シュテル」
そう言いながら、俺は頭を下げていく。シュテルは慌てた様子で、俺に頭を上げさせた。さて、これで効いてくれると良いのだが。
「ああ、頭をお下げになどならないでください! レックス様は、ただ命じればよいのです!」
「さっきとは矛盾するが、俺はお前を道具だなんて思っていない。大切な仲間なんだ」
「分かっています。最初から、ずっと……」
胸に手を当てながら、シュテルはうつむいていく。シュテルが自分を犠牲にするなんてこと、俺は望んでいない。それは、本当は分かっているのだろう。
だが、俺がシュテルの恩人であるから、全力で恩を返そうとしてしまう。そうしなければ、罪悪感のようなものがあるんじゃないだろうか。確かに、俺はシュテルに必要なものをすべて与えたかもしれない。だが、そんなものは単なる俺のワガママだ。
そうだ。だから、シュテルは何も気に病む必要なんて無いんだよ。それを、伝えないとな。
「シュテル。お前が俺に恩を感じてくれているのは、分かる。それは、否定したくない」
「はい。私は、レックス様に御恩を返すために……」
「お前が俺に迷惑をかけたくない気持ちにも、できるだけ寄り添いたい。それは、本心だ」
「ですが、レックス様は命を捧げることを許してくださらないのですね……」
「ああ。ワガママな主だろ? 失望するか?」
「いえ、滅相もありません。レックス様がそのような方だと知っているから、私は……」
シュテルは、袖のあたりをぎゅっと握りしめていた。きっと、少しはシュテルに俺の気持ちが伝わったはずだ。そして、自分を犠牲にする愚かさも。
俺に恩を返したいならば、まずは幸せになってほしい。それが、一番なんだよ。それだけなんだ、シュテル。俺はシュテルの手を取って、穏やかな口調を意識して話していく。
「シュテル。俺は贅沢なんだ。お前にも、みんなにも、ずっと俺のそばにいてほしい。そんな男なんだよ」
「そう、なのですね……」
「だからシュテル。お前は俺のためにこそ、手段を選ばずに生き抜いてくれ」
「かしこまり、ました。それが、あなた様の望みであるならば……」
そう言って、シュテルは頷く。きっと、まだ納得はしていないのだろう。俺の言葉だから、従うと言っているだけなのだろう。だが、いつかきっと、自分のことをもっと大事にしてくれるはずだ。
俺は未来に希望を持ちながら、またシュテルと目を合わせた。
「ああ。約束してくれ。主と配下ではない、ただの仲間として」
「もちろんです、レックス様……」
そう言いながら、シュテルは俺の手を抱きしめていった。そこから伝わる熱が、シュテルの想いを証明しているかのようだった。
必ず、シュテルと一緒に幸せな未来を掴み取ってみせる。あらためて、俺は決意を胸に抱えた。
もちろん、当人を守るということも大事になってくる。とはいえ、ブラック家から出さえしなければ、まあ安全だとは思う。
そうなると、現状で優先順位が高いのはシュテルだ。外で活動する機会もあり、そして戦力としては心もとないからな。
ということで、隙を見てシュテルを呼び出し、今後について説明をしようと思う。と言っても、気をつけてほしいと言うくらいのものではあるが。あまり護衛を増やしてしまえば、それが結果的にシュテルにたどり着かせるきっかけになりかねないからな。
現状、どこまで相手が知っているのか分からない。だからこそ、対応に悩む部分は多い。頭を抱えたくなるが、しっかりしなければな。
呼び出したシュテルは、まっすぐに俺の方を見ながら姿勢を正している。忠誠心の深さを感じるところだ。俺としては、友達くらいに接してくれた方が嬉しくはあるが。ただ、強制はできない。シュテルの気持ちを捨てさせたくはないからな。
とはいえ、今から告げる言葉は、シュテルの心を曲げさせるものではあると思う。俺は息を吸って、シュテルと目を合わせた。
「シュテル、今ブラック家で何が起きているか、知っているか?」
「申し訳ありません、レックス様。私には、何のことか……」
すぐにシュテルは頭を下げる。完全に、言い方に失敗してしまったようだ。シュテルを傷つけたいわけじゃないんだよな。
どうにも、俺に対する忠誠心が大きすぎて難しい。否定する気はないが、俺の言葉を重く捉えすぎている気がする。まるで王様の発言かのように扱われているからな。そこまで大した人間じゃないのだが。
まあ、シュテルの気持ちの問題だから、俺は受け入れるしかない部分も多い。ある程度は、諦めよう。そんな風に考えつつ、俺はどういう意図かを話していく。
「いや、責めているわけじゃないんだ。むしろ、こちらの問題に巻き込みそうなくらいでな。すまない」
「レックス様のためならば、何に巻き込まれようとも構いません!」
澄み切った目で、激しく叫ばれる。忠誠心が、重い。シュテルの大事な感情だから、大事にはしたい。とはいえ、俺が死ねと言ったら死にかねないのはちょっとな。もう少し、軽くなってくれると助かる。
まあ、まずはお礼だろう。忠誠を否定されたと思えば、それこそシュテルの心を傷つけかねないのだから。
「ありがとう。とはいえ、説明は必要だろう。簡単に言うと、メアリの属性が増えたと噂が流れている」
「レックス様のお力ですね。では、隠したいと……?」
「そういうことではない。シュテルの身に危険が迫らないか、気をつけてくれという話だ」
「何があろうとも、レックス様の情報は漏らしません!」
食い気味に強く宣言された。固い決意が目に見えて、天を仰ぎそうになってしまう。俺のことを大事にしすぎて、自分を軽く扱ってしまっている。それが最大の問題だ。
シュテルのことだから、本気で拷問されようとも何も言わないんだろうな。だが、それは俺が嫌だ。分かってもらいたいことだ。何度も伝えているのだが、どうにも伝わりきらない。
「いや、情報くらいは売っていいから、とにかくお前の安全を優先してくれ」
「嫌です! レックス様のご迷惑になるなど、何があったとしても嫌です!」
首を激しく振りながら叫んでいる。俺を大事に思う気持ちだけで、ここまでの覚悟を決めさせてしまうのだから。本当に、罪深いことだ。シュテルの感覚を、完全に歪めてしまった。
だが、俺だってシュテルを大切に思っているんだ。それを、どうにか理解してほしい。俺はシュテルと目を合わせて、ゆっくりと話していく。
「分かってくれ。お前を犠牲にして得た平穏になんて、何の意味もないんだ」
「レックス様のお気持ちは、分かるつもりです。ですが……」
そう言いながら、目をそらされた。本当は、シュテルだって俺が何を望んでいるかは分かっているはずなんだ。だが、恩がシュテルの感情を支配してしまっている。
ならいっそ、シュテルの恩に漬け込んだ物言いをするのが良いか?
「なら、あえてこう言おう。お前は俺のものだ。俺の道具だ。その使い方は、俺が決める」
「レックス様……。あなたは、どこまで……」
涙ぐみながら、シュテルはこちらを見ている。字面ではなく、俺の意図が伝わってしまったみたいだ。今回ばかりは、嬉しくない。命令として受け取ってもらえた方が、助かっていた。
とはいえ、シュテルの心に響くものはあったはずだ。それを信じながら、俺はシュテルに目を合わせ続ける。
「なあ、シュテル。お前にとって、俺はお前を容易く捨てるような冷たい主か?」
「いいえ! それだけは、ありえません!」
「なら、俺を仲間を捨てた人間にしないでくれ。頼むよ、シュテル」
そう言いながら、俺は頭を下げていく。シュテルは慌てた様子で、俺に頭を上げさせた。さて、これで効いてくれると良いのだが。
「ああ、頭をお下げになどならないでください! レックス様は、ただ命じればよいのです!」
「さっきとは矛盾するが、俺はお前を道具だなんて思っていない。大切な仲間なんだ」
「分かっています。最初から、ずっと……」
胸に手を当てながら、シュテルはうつむいていく。シュテルが自分を犠牲にするなんてこと、俺は望んでいない。それは、本当は分かっているのだろう。
だが、俺がシュテルの恩人であるから、全力で恩を返そうとしてしまう。そうしなければ、罪悪感のようなものがあるんじゃないだろうか。確かに、俺はシュテルに必要なものをすべて与えたかもしれない。だが、そんなものは単なる俺のワガママだ。
そうだ。だから、シュテルは何も気に病む必要なんて無いんだよ。それを、伝えないとな。
「シュテル。お前が俺に恩を感じてくれているのは、分かる。それは、否定したくない」
「はい。私は、レックス様に御恩を返すために……」
「お前が俺に迷惑をかけたくない気持ちにも、できるだけ寄り添いたい。それは、本心だ」
「ですが、レックス様は命を捧げることを許してくださらないのですね……」
「ああ。ワガママな主だろ? 失望するか?」
「いえ、滅相もありません。レックス様がそのような方だと知っているから、私は……」
シュテルは、袖のあたりをぎゅっと握りしめていた。きっと、少しはシュテルに俺の気持ちが伝わったはずだ。そして、自分を犠牲にする愚かさも。
俺に恩を返したいならば、まずは幸せになってほしい。それが、一番なんだよ。それだけなんだ、シュテル。俺はシュテルの手を取って、穏やかな口調を意識して話していく。
「シュテル。俺は贅沢なんだ。お前にも、みんなにも、ずっと俺のそばにいてほしい。そんな男なんだよ」
「そう、なのですね……」
「だからシュテル。お前は俺のためにこそ、手段を選ばずに生き抜いてくれ」
「かしこまり、ました。それが、あなた様の望みであるならば……」
そう言って、シュテルは頷く。きっと、まだ納得はしていないのだろう。俺の言葉だから、従うと言っているだけなのだろう。だが、いつかきっと、自分のことをもっと大事にしてくれるはずだ。
俺は未来に希望を持ちながら、またシュテルと目を合わせた。
「ああ。約束してくれ。主と配下ではない、ただの仲間として」
「もちろんです、レックス様……」
そう言いながら、シュテルは俺の手を抱きしめていった。そこから伝わる熱が、シュテルの想いを証明しているかのようだった。
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