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4章 フェイトオブデッドエンド

102話 変えられた未来2

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 ミナに対峙するサクラとマリオ。だが、ミナのもとにはたくさんの兵たちが居る。
 まずは兵たちを倒さないと、ミナには攻撃が届かないだろう。
 それにしても、ミナのサッドネスオブロンリネスでは戦えないだろうに、どうするつもりなんだ?

「行くわよ、マリオ! こんな残酷な相手、許しておけないわ!」

「ああ、そうだな! 王になるために民を犠牲にするなど言語道断!」

 本当に立場が逆だな。以前のクーデターではマリオが野心のために他者を犠牲にして、ミナが民を守ろうとした。
 今回見ている映像では、ミナが暴虐の限りを尽くして、マリオが止めようとしている。
 結局どちらかが死ぬしかなかったのだろうか。両方選べる選択肢は無かったのだろうか。

 まあ、今さら過去を悔やんでも、マリオが死んでしまった以上どうにもならないのだが。
 それに、どちらか片方を選べと言われたのなら、間違いなくミナの方を選ぶ。
 俺達が過ごしてきた時間の長さや積み上げてきたものがぜんぜん違うからな。
 結局のところ、ベストではなくともベターな選択肢は選べたと思う。
 ミナが王になったのは、俺にとっては良い結果だったからな。

「王のために使い潰されるべきものが民。わたくしのために喜んで死ぬべきものが民。残酷だなんだと、くだらない。まるで幼子ですね」

 今のミナを知っているとビックリするようなセリフだ。
 他者を平気で使い潰すような人間からは程遠いのが今のミナだから。
 親しい人を当たり前に大切にして、国を発展させるという強い意志を持っている。そんなミナだから、王になった姿を見たかったんだ。
 今の映像に映っているミナに、アストライア王国を任せられる気はしない。

「人の命は道具なんかじゃないわ! あんたを許してはおけない! マリオ、合わせて!」

「行くぞ! 恐怖おそれろ――スクリームオブロンリネス!」

「かかってきなさい。覚悟さとれ――サッドネスオブロンリネス!」

 ミナの言葉に合わせて、兵士達も動き出す。いったいどうやって戦うつもりだ?
 そう考えていると、突然マリオとサクラの動きがブレる。兵士の攻撃が2人に当たるかと思えば、兵士達の動きがにぶくなった。
 だが、ある程度の攻撃はサクラ達に当たっている。幸い、重力で威力が弱められたのか、致命傷では無いようだが。

 やはり、マリオのスクリームオブロンリネスは俺が見たものよりも強いな。
 サクラとの時間が、心奏具の扱いを習熟させたのかもしれない。でなければ、今の攻撃で終わっていたはずだ。俺との戦いの時ならば、マリオは致命傷を避けることはできなかった。

「いったい何? いま、何が当たったの? どうして敵の攻撃が?」

 サクラは困惑している。おそらくは、ミナが何かしたんだろうが。どんな事をしたのだろうか。
 ミナの心奏具、サッドネスオブロンリネスの力で敵の情報を集めたところで、今のような光景にはならないだろう。
 他に心奏具使いの兵士も見当たらないことだし、間違いなくミナの力なのだが。
 俺に思いつく可能性としては、目をくらませたとか? いや、でも光は出していないよな。

「答えを教えてやろうか?」

 シャーナさんはそう言ってくるが、俺としては自分で確かめたい。
 敵の心奏具がどんな能力か割り出すいい練習だからな。分からないからといって、すぐに聞くつもりはない。
 ミナの心奏具が同じサッドネスオブロンリネスであることは分かっている。なら、本番よりも絶対に簡単なんだ。

 どうせこれからも俺の戦いは続く。だから、実力を向上させる機会を逃したくない。
 さて、サッドネスオブロンリネスの能力は、周辺の音や映像などの情報を得るもの。
 だから、そこから極端に離れた事はしていないはず。そうなると、音や映像を敵に伝えて、相手を困惑させるのならどうだ?
 右の映像と左の映像を逆転させでもしたら、それだけで相手はやりづらくて仕方ないだろう。

 この仮説なら、今まで俺にミナが能力を教えなかった理由にも説明がつく。
 結局、直接戦場に立つ上では役に立たない能力だからな。ミナと連携しようとしたって、どう相手を誤魔化すかを共有しないと、俺も困ってしまう。
 右に動くと予想した敵が左に動いたなら、やっかいで仕方がないからな。
 だが、今の仮説が正しいのなら、できれば連携の練習をしておきたい。

 まあ、そもそも今のミナが使えない能力という可能性もあるのだがな。
 それなら、考えることは少なくて済む。とはいえ、強力そうな力だから、ミナが使えるのならば嬉しいが。
 ミナの安全を守りやすいという観点から考えると、少しでも時間稼ぎをしてくれるのは助かるからな。

 どうやらサクラ達にも動きがあるらしい。サクラは上級魔法を放ち、だが敵に当たらない。

「何で? 当たったはずなのに! どうなっているのよ!」

 やはり俺の仮説で正しいようだ。そうなると、ここからどう切り抜けるのだろうな。
 闇雲に攻撃魔法を撃ったところで、建物まで崩壊しかねない。マリオの重力で敵を足止めしているようだから、やりようはあるかもしれないが。

「待て! 俺の力でどうにかする。その後は、頼む。サクラ!」

 そのままマリオは重力魔法で敵を一箇所に拘束していく。
 なるほどな。起点さえしっかりしたまま強い重力を発生させれば、自分に被害はないまま敵を集められるという魂胆か。
 サクラとマリオが隣にいることが功を奏したな。巻き込まないための制御は簡単だろう。

「これに合わせればいいのね! 重力に巻き込まれなさい! あたしの魔法!」

 そしてサクラは大きな氷を生み出し、マリオの力で敵兵のまとまったところへ氷が動いていく。
 敵のもとへ氷がたどり着いた瞬間、氷は弾けていった。そのまま破片が敵を巻き込む。
 なるほどな。うまく考えたものだ。狙いを定めなくていいなら、認識が狂わされていようが関係ない。
 ちょうど、敵兵が集まっているところに一気に攻撃を仕掛けられたわけだ。

「やったぞ、サクラ! これで後はミナだけだ! 同じやり方で!」

「そう簡単に行くものですか。メガファイア!」

 ミナの放った上級魔法がマリオ達のもとへと飛んでいく。
 2人は避けようとするが、むしろメガファイアの方に当たりに行っているくらいだ。
 このままサクラ達は負けるのかと思った瞬間、サクラは2人を氷で囲む。
 近くにいることだけが分かっているのなら、今のが正着だろう。
 方向を考えたら戸惑わされるのだから、距離だけを頭においておけば良い。

 しかし、大したものだな。俺が同じ状況にいて、似たような判断をできただろうか。
 やはり、サクラは主人公にふさわしい能力を持っていると思える。俺と違って。

「これで終わりよ、ミナ!」

「ああ、もはや抵抗はできまい。何か言い残すことはあるか?」

「そんなもの、あるものですか! あなた達にだって未来は渡しません! ここでわたくしが死ぬのなら! 渦巻く業火、尽きぬ熱情、焼き尽くす焔よ!」

 ミナは最上級魔法の詠唱をしている。そんな事までできるのか!?
 今のミナに、同じ事ができるのだろうか。できないのならば、俺はミナの可能性を奪ったことになるが。
 いや、そんな事はどうでもいい。マリオ達はすでに動いている。このまま映像が進めば、それは。

「させないわ! ここであんただけが死ぬのよ! くらいなさい!」

「俺が重力を探知して、ミナの方へとサクラの魔法を運べばいい。終わりだ、ミナ!」

 なるほど。五感に頼れないとしても、心奏具の能力ならば信用できるわけか。
 そんな関心をした俺をよそに、ミナにサクラの上級魔法が激突する。そのままミナは倒れていった。

「これで、あたし達の勝ちよ! ミナの暴虐を止められたのよ!」

「やったな、サクラ!」

 そんな光景を最後に、俺の意識は再び薄れていった。
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