転生令嬢は覆面ズをゆく

唄宮 和泉

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第一章 覆面ズが出来るまで

#3 家族の後押し

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「ふっ……ははははは。リエ、なんて声で叫んでるんだ。レディ失格だな」
 堪えきれないと吹き出す兄を、フェーリエは頬を膨らましながら睨んだ。
「そう言うお兄様も、レディの失敗を笑うだなんて、紳士失格だと思いますけど?」
「二人とも、早く席に着きなさい」
 軽い言い合いを始めたとした二人に、オグリスの制止の声が掛かる。
 父親の言葉には逆らえない二人は、各々の席、クロリネはオグリスの右に、フェーリエは左に座っている。
 二人が座ったことを確認したオグリスは、両手を合わせ、頭を僅かに下げ、目を伏せた。クロリネとフェーリエもそれに倣う。
 オグリスは、女神への感謝の口上を述べ始めた。
「……今日の私たちが健やかに生きていられる事を感謝いたします」
「「感謝いたします」」
 一度言葉を切り、三人は揃って同じ言葉を口にする。
「「「いただきます」」」


「フェーリエ」
 呼びかけの声は、フェーリエがパンの最後の一切れを口に入れた時に掛けられた。
 急いで租借を終わらせ、パンを飲み込んだフェーリエは、父親の方に顔を向けた。
「何ですか?お父様」
 首を傾げたフェーリエに、オグリスは淡々と言葉を投げる。
「後でカタリナの冒険用具を部屋に届けさせる。使ってやってくれ」
「……カタリナ……ええ!?お母様!?」
 驚く娘を置き去りに、オグリスは話を続けた。
「今も昔も、冒険者の多くは貴族だ。嫡男以外養う余裕が無い、自己顕示欲を満たしたい……理由は様々だが」
「貴族が……ではお母様も、冒険者を?」
「そうだ。あれの場合、エルフの血も混ざっているからな。貴族の世界では生きづらかったのだろう。お前と同じ、広い世界をこの目で見たい、自由を知りたい、そう言っていた」
 表情にあまり変化はない。それでも、十年共に過ごした娘には、その目に深い哀愁の光が見えた。
「お前も、学院を飛び級では有るが卒業している。もう、外に出ても言い頃合いだろう。自由を見てきなさい。お前の望むように」
「お父様……」
 フェーリエは頭を優しく撫でられた。寡黙な普段とは違い、言葉でもフェーリエの応援をしてくれる父親に、溢れんばかりの感謝が沸き起こる。
「ありがとう、お父様。私、夢を叶えてきます!」
 ほんのりと涙を滲ませながら、フェーリエは静かに頭を撫でられ続けた。
 一人のけ者にされたように感じたクロリネも、静かにその光景を微笑ましく眺めていた。

 
 
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