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第二章 ギルド要請冒険者
#24 スライムは……
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「さて、今のルシオラ村について説明しておこうか」
アンジェリカは二人に向けて言葉を切り出す。
「そういうのは手をどけてから言って貰えます?」
アンジェリカはまだフェーリエの頭を掴んでいた。そろそろどけて貰えないだろうか。
「この村は沼地帯だ。さて、どんな魔物が出現する?」
「あれ?スルーですか?そうですか……」
諦めの表情でフェーリエ呟く。この人には何を言っても無駄だ。
「沼地なら、カエルやスライム……でしょうか」
「あれ?剣士さんもスルーするんですか?冷たい……」
嘆くフェーリエを無視し、話は進む。
「この惨事はあんた達が倒す予定の魔物が引き起こした。さすがに、もう分かるよな」
「はい!分かりました。スライムですね!家を溶かしていたのは、スライムの腐食液みたいな奴ですよね」
頭は掴まれたまま、フェーリエは元気に答える。右にいる師匠に向き、左手を挙手する程に元気だ。
「あれ?でもスライムって雑魚じゃ……」
「火には弱いが、あいつらは物理攻撃が効きづらい。火の魔法が使える魔法使い出なければ苦戦する相手だ。それに、あいつらの体液は鉄も溶かす。武器を溶かされては堪った物じゃない」
フェーリエの疑問に、ユースが淡々と答える。しかし、その手は腰に差した剣を掴んでいる。剣士が剣を失っては、戦いにならないだろう。
「ああ、だからこの依頼自体誰にも受けられなかったんだ」
冒険者のほとんどは武器と己の肉体で戦う。魔法使いはあまり冒険者にならず、宮廷の魔導師になろうとする者が多い(将来安泰だから)。今の冒険者層では、スライムと戦うのは割に合わないのだ。
「そう言うことだ。村人はかなり疲弊している。早いところ倒しにいこうとした矢先に、あんた達が来たってわけだ」
アンジェリカは頭をかきながら二人に言った。
(師匠がヒト助けなんて、本当に珍しいなぁ)
心の中で思う。声に出したら、間違いなく頭を割られる。
「ま、魔法使いが二人もいるんだ。簡単に終わるだろうねぇ」
そう言いながら、頭からようやく手を離した師匠は、逆に頭をぽんぽんと叩き笑った。その笑顔は邪悪なものではなく、フェーリエもつられて笑ってしまった。
「それじゃ、あたしは村人にこのことを伝えてくるわ。準備しとけよ?」
「分かりました!」
ひらひらと手を振る師匠の背中を敬礼もどきで見送り、フェーリエは剣士の方に身体を向ける。
「剣士さん?どうして助けてくださらなかったのでしょう?」
「……必要があったのか?」
フェーリエの笑顔に、たじろいでいるようだ。苦虫をかみつぶしたような顔で、剣士は答える。
「ええ。頭がとても痛いです」
「仲が良い様にしか見えなかったが……」
「師匠は愛情表現が激しい方なんです。私から抵抗するともっと怒るので、出来れば第三者に間に入って貰いたかったですねぇ」
フェーリエは笑顔を浮かべ続ける。完全に顔が見えなくとも、雰囲気に押されているようで、ユースは困っていた。
「押しが強い所は、師匠とそっくりのようだな……」
ユースが呟いた言葉は聞かなかったことにしてあげた。今まで見たことのない彼が見えたから、フェーリエは満足したのだ。
アンジェリカは二人に向けて言葉を切り出す。
「そういうのは手をどけてから言って貰えます?」
アンジェリカはまだフェーリエの頭を掴んでいた。そろそろどけて貰えないだろうか。
「この村は沼地帯だ。さて、どんな魔物が出現する?」
「あれ?スルーですか?そうですか……」
諦めの表情でフェーリエ呟く。この人には何を言っても無駄だ。
「沼地なら、カエルやスライム……でしょうか」
「あれ?剣士さんもスルーするんですか?冷たい……」
嘆くフェーリエを無視し、話は進む。
「この惨事はあんた達が倒す予定の魔物が引き起こした。さすがに、もう分かるよな」
「はい!分かりました。スライムですね!家を溶かしていたのは、スライムの腐食液みたいな奴ですよね」
頭は掴まれたまま、フェーリエは元気に答える。右にいる師匠に向き、左手を挙手する程に元気だ。
「あれ?でもスライムって雑魚じゃ……」
「火には弱いが、あいつらは物理攻撃が効きづらい。火の魔法が使える魔法使い出なければ苦戦する相手だ。それに、あいつらの体液は鉄も溶かす。武器を溶かされては堪った物じゃない」
フェーリエの疑問に、ユースが淡々と答える。しかし、その手は腰に差した剣を掴んでいる。剣士が剣を失っては、戦いにならないだろう。
「ああ、だからこの依頼自体誰にも受けられなかったんだ」
冒険者のほとんどは武器と己の肉体で戦う。魔法使いはあまり冒険者にならず、宮廷の魔導師になろうとする者が多い(将来安泰だから)。今の冒険者層では、スライムと戦うのは割に合わないのだ。
「そう言うことだ。村人はかなり疲弊している。早いところ倒しにいこうとした矢先に、あんた達が来たってわけだ」
アンジェリカは頭をかきながら二人に言った。
(師匠がヒト助けなんて、本当に珍しいなぁ)
心の中で思う。声に出したら、間違いなく頭を割られる。
「ま、魔法使いが二人もいるんだ。簡単に終わるだろうねぇ」
そう言いながら、頭からようやく手を離した師匠は、逆に頭をぽんぽんと叩き笑った。その笑顔は邪悪なものではなく、フェーリエもつられて笑ってしまった。
「それじゃ、あたしは村人にこのことを伝えてくるわ。準備しとけよ?」
「分かりました!」
ひらひらと手を振る師匠の背中を敬礼もどきで見送り、フェーリエは剣士の方に身体を向ける。
「剣士さん?どうして助けてくださらなかったのでしょう?」
「……必要があったのか?」
フェーリエの笑顔に、たじろいでいるようだ。苦虫をかみつぶしたような顔で、剣士は答える。
「ええ。頭がとても痛いです」
「仲が良い様にしか見えなかったが……」
「師匠は愛情表現が激しい方なんです。私から抵抗するともっと怒るので、出来れば第三者に間に入って貰いたかったですねぇ」
フェーリエは笑顔を浮かべ続ける。完全に顔が見えなくとも、雰囲気に押されているようで、ユースは困っていた。
「押しが強い所は、師匠とそっくりのようだな……」
ユースが呟いた言葉は聞かなかったことにしてあげた。今まで見たことのない彼が見えたから、フェーリエは満足したのだ。
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