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第二章 ギルド要請冒険者
#38 幽霊
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がさがさと草が揺れる音がする。そのたびに、悲鳴を上げて叫びだそうとするルナの口をふさぐユースは、いい加減疲れてきた。
(いつまで続くんだ……これは)
幽霊……アンデットが出るならば日没後だろう。そう思ったユースはしばらく宿で休んでいた。そんなユースの傍には、全く反応を示さないにも関わらず、ルナが引っ付いていた。
当初、あまりの怯えように、宿においていこうとしていたのだが、ルナは意地でもついてきた。その結果が、これである。
「ふぅぅ……ひっく、ううぅぅぅ……」
「泣かないでくれ。どうすれば良いのか分からなくなる」
ユースの必死の懇願も、ルナは受け付けない。ただただ、ユースの袖を掴み、泣きながら後をついてくるのだ。
(俺は、どうすれば良いんだ……)
ユースは困り果てていた。
五十は超える墓石が並ぶ墓地を歩きながら、ユースは考える。町長の様子から見るに、一筋縄ではいかなさそうな今回のクエスト。なにより、使い物にならないルナをどうすべきか。考えるだけで頭が痛い。
「……っ!?あ、……あぁ……」
突然ルナが声にならない声を出して、ユースの袖を引く。後ろを振り向いたユースは自分の目を疑った。それは、身体が透けており、宙を舞っている。十数体程もそれがいれば、最早幻覚ではすまされない。
そのうちの一体が、二人に飛びかかってくる。ルナを背に庇いつつ、ユースは剣でそれを払った。ルナの師匠から貰った剣は、魔法障壁が張られている。大抵の魔物はその魔力に怯え去って行くのだが……。
(すり抜けた!?)
ユースの剣は透けた身体を通り、空振る。手応えは皆無。
接近した幽霊が振り下ろした腕が、ユースの身体を通過する。肉体的にダメージはない。だが、ゾワッと鳥肌が立ち、非常に気持ち悪い。
膠着状態になってしまった。どちらも攻撃は通らず、なすすべがない。
(俺は、幽霊は信じていなかったんだがな……)
ユースが心の中でそう呟いたとき、後ろにいたルナが徐々に声を大きくして言い放った。
「……や。も……や。……もう、嫌ぁ!」
その時、周囲が明るくなった。振り返ったユースは、明るく発光するルナの姿を見た。
「ル……」
名を呼ぼうとしたユースは、光に違和感を感じ、声を途切れさせた。
ルナの周りから発せられている光が幽霊に触れると、たちまち幽霊の姿は溶けて消えた。
「……一体、どういうことだ?」
光が収まると、地面に座り込むルナと、その傍らで光を放つ小人が浮かんでいた。
小人はルナの頭を小さな手でなだめるように撫でた。泣いていたルナは、徐々に落ち着き、ずびずびと鼻を啜った。
ルナが落ち着いたのを見て、小人はこちらを振り返る。
月の光よりも神々しい、白金の髪に、レモンホワイトのドレス。まさしく、壁画や文献で多々見られる存在……の縮小されたような姿をしている。
気付いたユースに、困ったような笑顔で口に人差し指を当てる姿は、いたずらを隠す子供のようだった。
(いつまで続くんだ……これは)
幽霊……アンデットが出るならば日没後だろう。そう思ったユースはしばらく宿で休んでいた。そんなユースの傍には、全く反応を示さないにも関わらず、ルナが引っ付いていた。
当初、あまりの怯えように、宿においていこうとしていたのだが、ルナは意地でもついてきた。その結果が、これである。
「ふぅぅ……ひっく、ううぅぅぅ……」
「泣かないでくれ。どうすれば良いのか分からなくなる」
ユースの必死の懇願も、ルナは受け付けない。ただただ、ユースの袖を掴み、泣きながら後をついてくるのだ。
(俺は、どうすれば良いんだ……)
ユースは困り果てていた。
五十は超える墓石が並ぶ墓地を歩きながら、ユースは考える。町長の様子から見るに、一筋縄ではいかなさそうな今回のクエスト。なにより、使い物にならないルナをどうすべきか。考えるだけで頭が痛い。
「……っ!?あ、……あぁ……」
突然ルナが声にならない声を出して、ユースの袖を引く。後ろを振り向いたユースは自分の目を疑った。それは、身体が透けており、宙を舞っている。十数体程もそれがいれば、最早幻覚ではすまされない。
そのうちの一体が、二人に飛びかかってくる。ルナを背に庇いつつ、ユースは剣でそれを払った。ルナの師匠から貰った剣は、魔法障壁が張られている。大抵の魔物はその魔力に怯え去って行くのだが……。
(すり抜けた!?)
ユースの剣は透けた身体を通り、空振る。手応えは皆無。
接近した幽霊が振り下ろした腕が、ユースの身体を通過する。肉体的にダメージはない。だが、ゾワッと鳥肌が立ち、非常に気持ち悪い。
膠着状態になってしまった。どちらも攻撃は通らず、なすすべがない。
(俺は、幽霊は信じていなかったんだがな……)
ユースが心の中でそう呟いたとき、後ろにいたルナが徐々に声を大きくして言い放った。
「……や。も……や。……もう、嫌ぁ!」
その時、周囲が明るくなった。振り返ったユースは、明るく発光するルナの姿を見た。
「ル……」
名を呼ぼうとしたユースは、光に違和感を感じ、声を途切れさせた。
ルナの周りから発せられている光が幽霊に触れると、たちまち幽霊の姿は溶けて消えた。
「……一体、どういうことだ?」
光が収まると、地面に座り込むルナと、その傍らで光を放つ小人が浮かんでいた。
小人はルナの頭を小さな手でなだめるように撫でた。泣いていたルナは、徐々に落ち着き、ずびずびと鼻を啜った。
ルナが落ち着いたのを見て、小人はこちらを振り返る。
月の光よりも神々しい、白金の髪に、レモンホワイトのドレス。まさしく、壁画や文献で多々見られる存在……の縮小されたような姿をしている。
気付いたユースに、困ったような笑顔で口に人差し指を当てる姿は、いたずらを隠す子供のようだった。
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