転生令嬢は覆面ズをゆく

唄宮 和泉

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第二章 ギルド要請冒険者

#42 町長の妻

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「すいません。紙とペンを貸していただけないでしょうか」
「それよりも、許可を得る方が先だろう」
 宿で少し睡眠を取ったフェーリエとユースは、町長の家を訪ねた。
「どうなさいました?」
 二人を出迎えたのは町長ではなく、黒い髪の美女だった。
(ん?どこかで見た気が……)
 女性の顔を眺めながら、フェーリエは首を傾げる。
「幽霊退治について報告したいことがあります」
 うーん、と唸るフェーリエを置いておいて、ユースが女性に尋ねる。
「あら、主人は今隣町に行っているのだけれど……」
 困ったように頬に手を当てた女性の口ぶりから、町長の奥さんであることが判明した。
「いつ頃お帰りになりますか」
(そう言えば、剣士さんって、どういう基準で敬語使ってるんだろう)
 丁寧な口調で女性と話すユースを見て、疑問に思う。昨日、幽霊の男性には砕けた口調だったような気がする。
「3日ほどは掛かると思います。……私がお話を伺いましょうか?」
「お願いします。まずは……」
 ユースは、仮面で隠れている真面目な顔で女性に事の顛末を話している。もう一ヶ月の付き合いだ。表情や、無言でも考えている事は大体分かる様になった。
(そう言えば、結構話してくれる様になったよね。たまに、ごくたまにルナって呼んでくるし。……私はまだ呼んだことないけど)
 未だに気恥ずかしく、名前で呼ぶことが出来ていない。フェーリエはうーんと唸った。
「事情は分かりました。お好きなようにして構いません。主人には私から話をしておきます」
「よろしくお願いします」
「ですが……」
 事情を飲み込んだ女性は、生真面目そうな涼やかな表情を少し歪め、言葉を途切れさせた。
「どうしたんですか?」
 フェーリエが問うと、女性は少し寂しそうにしながら言った。
「いえ、あの丘に墓地を移すとなると、丘から見える景色が変わってしまうな、と思っただけです。私は、あの丘から見えるドルミートが好きですから」
 そういった事に考慮していなかった二人の戸惑いを感じたのだろう。続けて、町のことが優先ですから、気にしないでください、と言った。
「あの丘に、お墓が一つあることを知っていますか?」
「ええ、何代も前の村長の墓ですよね。それが、どうかしましたか?」
「いえ、何でも無いです」
 諦めたような、けれども変わらない思いを抱える姿が重なった。
「私たちに任せてください!決して、悪いようにはしません!」
 女性の手を取り、フェーリエは意気込む。フェーリエの表情は見えないだろうが、誠意は伝えたかった。
「え、ええ。よろしくお願いします」
 フェーリエの勢いに驚きながらも、優しい、母親の様なたおやかな笑みで応えてくれた。

「何か案があるのか?」
 ユースがフェーリエに問いかける。二人は紙とペンを借りた後、いったん宿に戻った。その宿での事だ。
「剣士さんは、錬金術って知ってますか?」
「錬金術?初耳だな」
「でしょうねぇ。師匠も知りませんでしたし。何ならアウラも知りませんでしたし」
 アウラは今、家にかなり時間が掛かると伝えに行って貰っている。と言っても、宿で同じ部屋にいることは伝えないように釘を刺した。あのシスコンの兄が何を騒ぎだすか分からない。ほんのちょっとの仮眠の為の場所なのだから。それに、ユースが一体何をするって言うんだ。一度、年上の落ち着きが好きだと聞いたことがある。年下それも、自慢ではないがかなりうるさい方に分類される自分に、彼が手を出すはずがない。
「まあまあ、期待して待っていてください」
 怪訝な顔をするユースに笑いかけ、フェーリエはベッドに寝転んだ。
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