転生令嬢は覆面ズをゆく

唄宮 和泉

文字の大きさ
43 / 185
第二章 ギルド要請冒険者

#41 名案それとも迷案?

しおりを挟む
「お墓を移したら良いんですよ!!」
 フェーリエは、自分でも驚くほど大きい声を出した。声を出した方が恐怖は薄れると、どこかで聞いた覚えがある。
「お墓を……」
「移す……」
 アウラとユースが文節ごとにフェーリエの言葉を繰り返す。何を言っているのか理解出来ない、と言う顔だ。
『なるほど、その考えはなかったね』
 一人村長の幽霊は、納得の表情で頷く。
「しかし、墓を移すなんて……」
「帝国との戦争があったのはもう千年も前の事です。骨も残っていないはず。なら、墓石だけでも移動させれば解決するじゃないですか」
 我ながら名案だと思う。今の自分は、きらきらした表情をしているだろう。
 フェーリエの考えを聞いても、ユースとアウラにはためらいの色が残る。
 根本的な問題は死者への敬いだ。
「死者への冒涜、そう言うことですね。分かりました。署名活動をしましょう」
「「『署名活動?』」」
 三人が同時に聞き返す。その答えを、フェーリエは聞かせる。
「お墓を移す事に賛成の幽霊に、自分の名前を書いて貰うんです。署名した人のお墓を、この丘辺りに移せば、死者の許可は得てるわけじゃないですか。つまり祟りとかは気にしなくても良いわけです」
 フェーリエの持論を聞いたユースとアウラは、揃って後ろにいる幽霊代表に視線を向ける。
『邪気のせいで皆暴れているけれど、光の精霊様がいればなんとかなるからね。この丘なら不毛の土地で利用価値も低いから、移す場所としては丁度良いと思うよ』
 幽霊はニコニコした顔で続ける。
『それに、署名は良いことだね。名前を聞く前に亡くなってしまった人も、新しく名を刻んであげられる。ドルミートに住む人の今後を考えると、祟りの心配が無いのは良いことだと思う。うん、僕はお嬢さんの提案に賛成するよ』
「ほら、どうですか!」
 幽霊の賛同に、フェーリエは乗り切らないユースとアウラに熱い視線を送る。
「幽霊の方が賛同なさるのでしたら……」
「仕方が無いな……」
 仕方が無い、言い始めたら聞かないから、と二人はフェーリエをそう評価した。
「一応聞く耳は持ってますけど」
「受け入れなければ持っているとは言わない」
 ユースから思いの外厳しい言葉を掛けられる。
『それじゃあ、次の夜に署名活動開始かな?』
 今からでも始めようと思っていたフェーリエは、何故、と問いかけてやめた。もう日が昇り始めたのだ。
「幽霊の活動時間は、やっぱり夜なんですか?」
『それもあるけど、昼のうちに、町の人に話をしておいて欲しいんだ。今後、この地に住むのは彼らだから』
 幽霊の男性は、その身体をなお薄くさせ、自分の墓に消えていった。彼は墓に戻るとき『僕らはただ静かに、このドルミートで眠りたいだけだ』と呟いた。その言葉が、彼の心からの願いなのだと、フェーリエは理解した。
「それにしても、ルナ様が幽霊の方とあんなにおしゃべりできるとは……。なんだか、子供の成長を見た母親の気分です」
「そう言えば、全く怯えていなかったな」
 感心したように頷く二人の前で、フェーリエは崩れ落ちる。
「どうしました!?」
「どうした!?」
 心配で声を掛けてくる二人に、フェーリエは情けない声を返した。
「い、今になって……足の震えが……」
「「……」」
 二人は深く深く溜息をついた。
「頑張ったから良いじゃない!」
 フェーリエの叫びは、丘に響き渡った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

神託が下りまして、今日から神の愛し子です! 最強チート承りました。では、我慢はいたしません!

しののめ あき
ファンタジー
旧題:最強チート承りました。では、我慢はいたしません! 神託が下りまして、今日から神の愛し子です!〜最強チート承りました!では、我慢はいたしません!〜 と、いうタイトルで12月8日にアルファポリス様より書籍発売されます! 3万字程の加筆と修正をさせて頂いております。 ぜひ、読んで頂ければ嬉しいです! ⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎ 非常に申し訳ない… と、言ったのは、立派な白髭の仙人みたいな人だろうか? 色々手違いがあって… と、目を逸らしたのは、そちらのピンク色の髪の女の人だっけ? 代わりにといってはなんだけど… と、眉を下げながら申し訳なさそうな顔をしたのは、手前の黒髪イケメン? 私の周りをぐるっと8人に囲まれて、謝罪を受けている事は分かった。 なんの謝罪だっけ? そして、最後に言われた言葉 どうか、幸せになって(くれ) んん? 弩級最強チート公爵令嬢が爆誕致します。 ※同タイトルの掲載不可との事で、1.2.番外編をまとめる作業をします 完了後、更新開始致しますのでよろしくお願いします

おせっかい転生幼女の異世界すろーらいふ!

はなッぱち
ファンタジー
赤ん坊から始める異世界転生。 目指すはロマンス、立ち塞がるのは現実と常識。 難しく考えるのはやめにしよう。 まずは…………掃除だ。

辺境追放された「植物魔導師」の領地開拓 ~枯れ果てた死の大地は、俺の魔力で聖域(楽園)へと変貌する~

リーフレット
ファンタジー
​「植物魔法? ああ、農作業にしか使えないあの地味な魔法か」 ​帝国騎士団の専属魔導師だったアルトは、無能な二世皇太子レオンによって、一方的に追放を言い渡された。 アルトがどれほど魔導植物を駆使し、帝国の食糧難を裏から支えていたかを知らぬまま、彼は「戦闘に役立たない役立たず」という烙印を押されたのだ。 ​帝国を出て行き着いた先は、魔物が跋扈し、草一本生えないと言われる最果ての荒野。 死を待つだけの地。しかし、アルトは絶望するどころか、晴れやかな顔で笑っていた。 ​「やっと、気兼ねなく『植物』を愛でられる。……よし、ここを世界一の庭(楽園)にしよう」

追放された『ただの浄化係』、実は国中の魔石を満たしていた精霊姫でした〜今さら戻れと言われても、隣国のイケメン皇帝が離してくれません〜

ハリネズミの肉球
ファンタジー
「おい、城の噴水が止まったぞ!?」 「街の井戸も空っぽです!」 無能な王太子による身勝手な婚約破棄。 そして不毛の砂漠が広がる隣国への追放。だが、愚かな奴らは知らなかった。主人公・ルリアが国境を越えた瞬間、祖国中の「水の魔石」がただの石ころに変わることを! ルリアは、触れるだけで無尽蔵に水魔力を作り出す『水精霊の愛し子』。 追放先の干ばつに苦しむ隣国で、彼女がその力を使えば……不毛の土地が瞬く間に黄金のオアシスへ大進化!? 優しいイケメン皇帝に溺愛されながら、ルリアは隣国を世界一の繁栄国家へと導いていく。 一方、水が完全に枯渇し大パニックに陥る祖国。 「ルリアを連れ戻せ!」と焦る王太子に待っていたのは、かつて見下していた隣国からの圧倒的な経済・水源制裁だった——! 今、最高にスカッとする大逆転劇が幕を開ける! ※本作品は、人工知能の生成する文章の力をお借りしつつも、最終的な仕上げにあたっては著者自身の手により丁寧な加筆・修正を施した作品です。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。 享年は25歳。 周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。 25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

処理中です...