転生令嬢は覆面ズをゆく

唄宮 和泉

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第三章 未開発の森

#67 犠牲者

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「ああああぁぁあ!!!なんで魔法が使えないのよ!」
 森にフェーリエの叫びが響き渡る。ジョージが去った後、あの手この手を使って魔法を使おうとしたが、どうしても発動しなかった。
 おまけに魔力を感じられないせいで、契約しているアウラやウルティムの存在が解らない。そして魔法袋も機能しない。
(冷静に……冷静に考えよう)
 深呼吸をして脳を動かす。現象には何かしらの原因があるはずだ。
「魔法を無効に、もしくは魔力の存在を無くす。そんな馬鹿げた効能、魔導王国の遺物以外あり得ない」
 魔導王国の遺物ならば、何が起きても不思議でない。ここは未開拓の森だ。手つかずの遺物が残っていた可能性がある。
 フェーリエはジョージが張った結界に手を伸ばす。結界に手が近づくと、バチッと手に衝撃が走る。
「いっ……」
 手を急いで引き戻す。手のひらが赤く焼け、ひりひりする。これが結界の効力なのだろう。
(……この結界は円状に張られてる。これが遺物の効果範囲を覆っているのだとすると……完全に閉じ込められた、か)
 魔法無効エリアのすぐ外に結界は張られている。そうなるとどうしても魔法は使えない。
「手慣れてる……常習犯なの?……ひとまず、遺物を探そう」
 遺物を弄れば、この効果も消せるかもしれない。フェーリエは恐らく中心部分である方向へ歩き出した。

 しばらく歩いていると、妙に開けた場所に出た。木々がなぎ倒され、歪な形の切り株が散らばっている。
 その中心に、石碑のようなものが鎮座している。恐らくあれが遺物だろう。そう思ったフェーリエは石碑に近づこうとして、足下に倒れるそれを見つけてしまう。
 うつ伏せに倒れる元ヒトには、あるべき場所に足がなかった。腰には、何かに噛まれような歯形が痛々しく残っている。
「ひっ……!?」
 フェーリエの口から引き攣った声が漏れる。 
 腐敗臭に、吐き気が込め上げる。フェーリエは両手で口を覆い、吐き気と悲鳴を押さえ込む。
(……死体。私以外にも、閉じ込められたヒトがいたんだ)
 あの三人の手慣れた様子から、薄々そうではないかと思っていた。しかし、いざその被害者を見ると、前世でも今世でもそう言った事に慣れていないフェーリエには過ぎた衝撃だった。
 目をぎゅっと閉じ、膝を抱える。見た光景がどれほど目を瞑ろうと焼き付いて離れない。
 どれほど口を手で覆ったまま蹲っていただろう。覚悟を決めたフェーリエは顔を上げ、彼を見る。
「ごめんなさい。また後で埋めに来ます」
 両手を合わせ、頭を下げる。ここは、魔法が使えない非力な少女には危険な森だ。
 遺物に向けてフェーリエは歩き出す。遺物は淡く光っており、起動している事がありありと解る。
「どうすればいいの?」
 未知の物体を前にして、フェーリエは頭を抱える。そもそも操作方法が解らない。いったいどんなテクノロジーなのだろうか。
 うーんと唸り始めたフェーリエの耳に、腹に響く重低音が届く。
「なに!?」
 顔を上げたフェーリエは、きらりと輝く牙を見た。
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