転生令嬢は覆面ズをゆく

唄宮 和泉

文字の大きさ
72 / 185
第三章 未開発の森

#70 属性付与

しおりを挟む
「グレッグさん!こちらに走ってきてください!」
 フェーリエは声を上げる。その声に反応したグレッグは、魔獣の攻撃を躱しながらこちらに走ってきた。
 走るグレッグを追いかけ、魔獣が魔法無効エリアから出る。その途端に体が肥大化し、動く速度が上がる。
(っ!?やっぱり……でも、背に腹は代えられない!!)
 魔力は生命エネルギーと言われている。そして、それは魔物にもあるものだ。生命に少なからず影響があってもおかしくない。
「レイモンドさん!」
 グレッグが十分に魔獣から離れたことを確認したフェーリエは、鋭く名前を呼ぶ。
 合図を受けてレイモンドが矢を放つ。矢は魔獣の目に刺さり、魔獣が悲鳴を上げる。そのまま間髪入れずに、もう片方の目にも矢が刺さる。暴れる魔獣の目を正確に射貫くレイモンドの腕前に感心しつつ、フェーリエは魔法を使う。
 地魔法『ロックランス』
 初歩的な岩の槍を地面から生み出す魔法だ。だが、フェーリエの魔力で生み出されるそれは、巨大な魔獣の腹を突き破った。
「凄い……ただのロックランスでこれだけの威力を……」
 レイモンドが唖然と呟く。しかし、魔獣は腹を突き破られたにも関わらず、動きを止めようとはしなかった。
「あの状態でもまだ動くのか……」
 魔獣は腹の岩を砕いた。貫かれた腹の風穴は、瞬く間に塞がる。
(再生早すぎでしょ!!どうなってんのよ!)
 心の中で叫びながら、フェーリエはもう一度『ロックランス』を使う。今度は首と胴に発動させる。
 再生の余波でそれを避けられることは無かったが、それでも拘束には至らない。
(あれを使うしかない、か)
 魔力を多く消費してしまううえに、あまりヒト前で使いたくはない魔法だ。それでもこんな危険な魔獣を放置するわけにはいかない。
「やってやるわ!!」
 岩を砕いている魔獣の周囲を、シャボン玉のような膜が覆う。
「結界!?そんなものであの魔獣は止まらない!!」
 レイモンドが叫ぶ。そう普通の結界ならば、簡単に破られてしまうだろう。
 すー、と息を吸う。イメージを明確にしなければならない。目を閉じ、想像する。決して破れない、永遠に持続する結界を。
属性付与エンチャント!『破壊不可』……『無限インフィニティ』!!」
 自分に言い聞かせるように声に出して叫ぶ。
 魔獣は結界に体当たりしているが、一向に破れる気配は無い。成功したようだ。
「ふぅー」
 フェーリエは大きく息を吐いた。一気に魔力を失った体は、酷く重い。走り続けたせいでもあるが。
 魔獣の目は既に再生されている。このままでは長引いただろう。『無限』の効果は名前の通り永遠に続く。それこそ、フェーリエが自らの意思で解かない限りは。
「『無限』……?そんな属性付与があるのか……?」
 レイモンドは信じられないというようにフェーリエを見る。フェーリエはこれが異質な魔法であると理解している。師匠も同じ反応をしていたのだ。
 だからこそヒト前で使いたくなかったのだ。しかしああだこうだ言っている暇は無い。
 アウラの治療はもう終わっている。早く彼を街に連れて行かなくては。
 フェーリエはユースを魔法で抱え、戸惑うグレッグとレイモンドを連れて森を飛ぶ。彼らは舌を噛みそうになったそうだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

おせっかい転生幼女の異世界すろーらいふ!

はなッぱち
ファンタジー
赤ん坊から始める異世界転生。 目指すはロマンス、立ち塞がるのは現実と常識。 難しく考えるのはやめにしよう。 まずは…………掃除だ。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。 享年は25歳。 周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。 25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー

芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。    42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。   下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。  約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。  それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。  一話当たりは短いです。  通勤通学の合間などにどうぞ。  あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。 完結しました。

処理中です...