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第三章 未開発の森
#69 彼を助けるために
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結界の近くまで走っていたフェーリエは、魔獣がなぎ倒した木を避けようとして、躓いてしまった。幸い木は当たらなかったが、地面に膝を突いてしまった隙を、魔獣が見逃すはずもない。フェーリエは振り下ろされる爪を見て、ああ、死ぬのか、とどこか他人事のように思った。
その直後、パリンと何かが割れる音と、滅多に呼ばれることのない自分の名前が耳に届いた。
そして気がつけば、フェーリエはユースの腕の中にいたのだ。
「けん、し、さん……?」
掠れた声で現実味なく呟くと、ユースの体がズルリと滑った。開けた視界には、爪で抉られた彼の背中が映る。
現実を受け入れられないフェーリエに、もう一度爪が振り下ろされるが、それは横からの衝撃で軌道がずれ、地面を抉った。
「お嬢さん!早くそいつを連れてここから離れてくれ!庇いながらでは戦えない!!」
魔獣の腕に大剣で衝撃を与えた大柄な男性。切羽詰まった声だ。
(……誰?ああ、でも、悪いヒトじゃない)
上手く動かない頭でそう考え、慎重にユースを担ぐ。体格差もあるが、ほとんど意識のないヒトは酷く重い。
魔獣を相手してくれている彼のためにも、一刻も早くこのエリアから出なければ。
「早く!こっちへ」
魔法無効エリアの外に、もう一人男の人がいた。弓で大柄な男性のサポートをしている。
少しずつユースの体を引き摺り歩く。背中の彼からはうめき声と荒い息だけが聞こえてくる。早く、早く出なければ。そう焦るほど、足の動きは鈍くなる。散々走り回って体力はもうない。
見かねたのか、エリアの外の彼がこちらに走り寄って、ユースを運ぶのを手伝ってくれた。
「アウラ」
エリアから出たフェーリエは、まず真っ先に彼女の名前を呟く。
『分かりました!』
エリアの外で様子を伺っていたのだろう。アウラはすぐに現れ、フェーリエの意図を汲み取った。
フェーリエは魔獣から少し離れた場所にユース移動させる。魔法が使えるため、できる限りそっと地面に降ろす。
アウラの光は傷の治りを早くする。だが、治癒魔法と違って完全に直るわけではない。応急処置程度だ。だが、今は無いよりましだ。
アウラにユースを任せ、フェーリエは魔獣と戦う男性を見る。その後に、隣でユースを心配そうに見ている男性を見る。
「貴方の名前は?」
「私はレイモンド。今戦っているのはグレッグだ。それより、早く彼を移動させなければ」
レイモンドにアウラは見えていない。だからこその言葉だろう。しかし今説明している暇は無い。
「今は動かしてはいけません。後で説明します。それより、魔獣をどうにかしないと」
今の状態ではまず勝てない。せめて森を脱出する隙を作らなければ。しかし、今魔獣がいる場所は魔法が使えない。何か手は無いか、と辺りを見回したフェーリエはレイモンドが背負っている弓を見つけた。
「レイモンドさん。私が合図したら魔獣の目に矢を飛ばしてもらえますか?」
「あ、ああ。何か手があるのかい?」
静かに頷いたフェーリエを見て、レイモンドは弓を構えた。
それを見たフェーリエは、地面に手を添える。
その直後、パリンと何かが割れる音と、滅多に呼ばれることのない自分の名前が耳に届いた。
そして気がつけば、フェーリエはユースの腕の中にいたのだ。
「けん、し、さん……?」
掠れた声で現実味なく呟くと、ユースの体がズルリと滑った。開けた視界には、爪で抉られた彼の背中が映る。
現実を受け入れられないフェーリエに、もう一度爪が振り下ろされるが、それは横からの衝撃で軌道がずれ、地面を抉った。
「お嬢さん!早くそいつを連れてここから離れてくれ!庇いながらでは戦えない!!」
魔獣の腕に大剣で衝撃を与えた大柄な男性。切羽詰まった声だ。
(……誰?ああ、でも、悪いヒトじゃない)
上手く動かない頭でそう考え、慎重にユースを担ぐ。体格差もあるが、ほとんど意識のないヒトは酷く重い。
魔獣を相手してくれている彼のためにも、一刻も早くこのエリアから出なければ。
「早く!こっちへ」
魔法無効エリアの外に、もう一人男の人がいた。弓で大柄な男性のサポートをしている。
少しずつユースの体を引き摺り歩く。背中の彼からはうめき声と荒い息だけが聞こえてくる。早く、早く出なければ。そう焦るほど、足の動きは鈍くなる。散々走り回って体力はもうない。
見かねたのか、エリアの外の彼がこちらに走り寄って、ユースを運ぶのを手伝ってくれた。
「アウラ」
エリアから出たフェーリエは、まず真っ先に彼女の名前を呟く。
『分かりました!』
エリアの外で様子を伺っていたのだろう。アウラはすぐに現れ、フェーリエの意図を汲み取った。
フェーリエは魔獣から少し離れた場所にユース移動させる。魔法が使えるため、できる限りそっと地面に降ろす。
アウラの光は傷の治りを早くする。だが、治癒魔法と違って完全に直るわけではない。応急処置程度だ。だが、今は無いよりましだ。
アウラにユースを任せ、フェーリエは魔獣と戦う男性を見る。その後に、隣でユースを心配そうに見ている男性を見る。
「貴方の名前は?」
「私はレイモンド。今戦っているのはグレッグだ。それより、早く彼を移動させなければ」
レイモンドにアウラは見えていない。だからこその言葉だろう。しかし今説明している暇は無い。
「今は動かしてはいけません。後で説明します。それより、魔獣をどうにかしないと」
今の状態ではまず勝てない。せめて森を脱出する隙を作らなければ。しかし、今魔獣がいる場所は魔法が使えない。何か手は無いか、と辺りを見回したフェーリエはレイモンドが背負っている弓を見つけた。
「レイモンドさん。私が合図したら魔獣の目に矢を飛ばしてもらえますか?」
「あ、ああ。何か手があるのかい?」
静かに頷いたフェーリエを見て、レイモンドは弓を構えた。
それを見たフェーリエは、地面に手を添える。
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