71 / 185
第三章 未開発の森
#69 彼を助けるために
しおりを挟む
結界の近くまで走っていたフェーリエは、魔獣がなぎ倒した木を避けようとして、躓いてしまった。幸い木は当たらなかったが、地面に膝を突いてしまった隙を、魔獣が見逃すはずもない。フェーリエは振り下ろされる爪を見て、ああ、死ぬのか、とどこか他人事のように思った。
その直後、パリンと何かが割れる音と、滅多に呼ばれることのない自分の名前が耳に届いた。
そして気がつけば、フェーリエはユースの腕の中にいたのだ。
「けん、し、さん……?」
掠れた声で現実味なく呟くと、ユースの体がズルリと滑った。開けた視界には、爪で抉られた彼の背中が映る。
現実を受け入れられないフェーリエに、もう一度爪が振り下ろされるが、それは横からの衝撃で軌道がずれ、地面を抉った。
「お嬢さん!早くそいつを連れてここから離れてくれ!庇いながらでは戦えない!!」
魔獣の腕に大剣で衝撃を与えた大柄な男性。切羽詰まった声だ。
(……誰?ああ、でも、悪いヒトじゃない)
上手く動かない頭でそう考え、慎重にユースを担ぐ。体格差もあるが、ほとんど意識のないヒトは酷く重い。
魔獣を相手してくれている彼のためにも、一刻も早くこのエリアから出なければ。
「早く!こっちへ」
魔法無効エリアの外に、もう一人男の人がいた。弓で大柄な男性のサポートをしている。
少しずつユースの体を引き摺り歩く。背中の彼からはうめき声と荒い息だけが聞こえてくる。早く、早く出なければ。そう焦るほど、足の動きは鈍くなる。散々走り回って体力はもうない。
見かねたのか、エリアの外の彼がこちらに走り寄って、ユースを運ぶのを手伝ってくれた。
「アウラ」
エリアから出たフェーリエは、まず真っ先に彼女の名前を呟く。
『分かりました!』
エリアの外で様子を伺っていたのだろう。アウラはすぐに現れ、フェーリエの意図を汲み取った。
フェーリエは魔獣から少し離れた場所にユース移動させる。魔法が使えるため、できる限りそっと地面に降ろす。
アウラの光は傷の治りを早くする。だが、治癒魔法と違って完全に直るわけではない。応急処置程度だ。だが、今は無いよりましだ。
アウラにユースを任せ、フェーリエは魔獣と戦う男性を見る。その後に、隣でユースを心配そうに見ている男性を見る。
「貴方の名前は?」
「私はレイモンド。今戦っているのはグレッグだ。それより、早く彼を移動させなければ」
レイモンドにアウラは見えていない。だからこその言葉だろう。しかし今説明している暇は無い。
「今は動かしてはいけません。後で説明します。それより、魔獣をどうにかしないと」
今の状態ではまず勝てない。せめて森を脱出する隙を作らなければ。しかし、今魔獣がいる場所は魔法が使えない。何か手は無いか、と辺りを見回したフェーリエはレイモンドが背負っている弓を見つけた。
「レイモンドさん。私が合図したら魔獣の目に矢を飛ばしてもらえますか?」
「あ、ああ。何か手があるのかい?」
静かに頷いたフェーリエを見て、レイモンドは弓を構えた。
それを見たフェーリエは、地面に手を添える。
その直後、パリンと何かが割れる音と、滅多に呼ばれることのない自分の名前が耳に届いた。
そして気がつけば、フェーリエはユースの腕の中にいたのだ。
「けん、し、さん……?」
掠れた声で現実味なく呟くと、ユースの体がズルリと滑った。開けた視界には、爪で抉られた彼の背中が映る。
現実を受け入れられないフェーリエに、もう一度爪が振り下ろされるが、それは横からの衝撃で軌道がずれ、地面を抉った。
「お嬢さん!早くそいつを連れてここから離れてくれ!庇いながらでは戦えない!!」
魔獣の腕に大剣で衝撃を与えた大柄な男性。切羽詰まった声だ。
(……誰?ああ、でも、悪いヒトじゃない)
上手く動かない頭でそう考え、慎重にユースを担ぐ。体格差もあるが、ほとんど意識のないヒトは酷く重い。
魔獣を相手してくれている彼のためにも、一刻も早くこのエリアから出なければ。
「早く!こっちへ」
魔法無効エリアの外に、もう一人男の人がいた。弓で大柄な男性のサポートをしている。
少しずつユースの体を引き摺り歩く。背中の彼からはうめき声と荒い息だけが聞こえてくる。早く、早く出なければ。そう焦るほど、足の動きは鈍くなる。散々走り回って体力はもうない。
見かねたのか、エリアの外の彼がこちらに走り寄って、ユースを運ぶのを手伝ってくれた。
「アウラ」
エリアから出たフェーリエは、まず真っ先に彼女の名前を呟く。
『分かりました!』
エリアの外で様子を伺っていたのだろう。アウラはすぐに現れ、フェーリエの意図を汲み取った。
フェーリエは魔獣から少し離れた場所にユース移動させる。魔法が使えるため、できる限りそっと地面に降ろす。
アウラの光は傷の治りを早くする。だが、治癒魔法と違って完全に直るわけではない。応急処置程度だ。だが、今は無いよりましだ。
アウラにユースを任せ、フェーリエは魔獣と戦う男性を見る。その後に、隣でユースを心配そうに見ている男性を見る。
「貴方の名前は?」
「私はレイモンド。今戦っているのはグレッグだ。それより、早く彼を移動させなければ」
レイモンドにアウラは見えていない。だからこその言葉だろう。しかし今説明している暇は無い。
「今は動かしてはいけません。後で説明します。それより、魔獣をどうにかしないと」
今の状態ではまず勝てない。せめて森を脱出する隙を作らなければ。しかし、今魔獣がいる場所は魔法が使えない。何か手は無いか、と辺りを見回したフェーリエはレイモンドが背負っている弓を見つけた。
「レイモンドさん。私が合図したら魔獣の目に矢を飛ばしてもらえますか?」
「あ、ああ。何か手があるのかい?」
静かに頷いたフェーリエを見て、レイモンドは弓を構えた。
それを見たフェーリエは、地面に手を添える。
0
あなたにおすすめの小説
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
まったく知らない世界に転生したようです
吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし?
まったく知らない世界に転生したようです。
何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?!
頼れるのは己のみ、みたいです……?
※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中に呆然と佇んでいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出したのだ。前世、日本伝統が子供の頃から大好きで、小中高大共に伝統に関わるクラブや学部に入り、卒業後はお世話になった大学教授の秘書となり、伝統のために毎日走り回っていたが、旅先の講演の合間、教授と2人で歩道を歩いていると、暴走車が突っ込んできたので、彼女は教授を助けるも、そのまま跳ね飛ばされてしまい、死を迎えてしまう。
享年は25歳。
周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっている。
25歳の精神だからこそ、これが何を意味しているのかに気づき、ショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~
ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。
彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。
敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。
この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。
「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」
無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。
正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。
幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~
二階堂吉乃
恋愛
同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。
1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。
一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
最強すぎて無職になりましたが、隣国の姫が勝手に嫁入りしてきました
eringi
ファンタジー
平凡なサラリーマン・佐藤亮は、満員電車で謎の光に包まれ異世界へ転移する。神様から「世界最強の力」を授かったはずが、本人はただの無職ニートとしか思っていない。冒険者ギルドで雑用を請け負う日々。そんな亮の周囲に、冷徹な騎士姫、天才魔導士、元盗賊の少女、竜人族の戦士など個性豊かな美少女たちが自然と集まってくる。一方、彼を「ただの運のいい凡人」と侮る貴族や悪徳商人たちは次々と痛快なざまぁ展開に。亮は「俺なんて大したことないのに」と呟きながら、気づけば国を揺るがす陰謀を解決し、世界を救うことに――。無自覚最強主人公による、爽快ハーレムファンタジー開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる