転生令嬢は覆面ズをゆく

唄宮 和泉

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第四章 魔導王国

#126 一件落着?

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『どうやって我を追い出すつもりだ?もうウルティムの自我など残ってはおらぬぞ?』
「いいえ、残ってるわ。ガイアがそう言っていたから、まだ信じられるわ」
 『Abyss』を、いや、リベロを抱えたまま、フェーリエは魔神を睨む。
『ガイア……あの臆病者の神が出てきたのか。それで?魔法を封じて、その次はどうするつもりだ?』
 フェーリエは目覚めて直ぐ、魔神の周りを魔法無効空間にした。それは、記憶を一部貰ったから出来たことである。
「はぁ……一々説明求めないでよ」
 すっと目を細め、フェーリエは周囲の魔力を集める。この地下はガイアの魔力が多く溢れている。何故か猛烈に減少している魔力を補うには十分な量である。
 小っ恥ずかしく、今まで使ってこなかった詠唱を口にする。眉を寄せながら。
「……世の理に沿い全ての事柄を正しい流れへと戻せ『正常ノーマル』」
 属性付与の魔法を魔神に、いや、ウルティムの肉体に付与する。
 魔神は突如自身に掛かった力に呻き、蹲る。
『ぐっ……これは……』
「言葉通り、理に沿って物事を正常にする力よ。貴方がウルティムの身体に宿っている事は異常だもの。強い反発の力が働いているでしょう?早く出て行った方が苦しみは少ないわよ?」
 冷や汗をかいている魔神を見下ろし、フェーリエはリベロの頬を優しく撫でる。ムカつくが、あの顔の良いガイアの生み出した存在だ。異形の姿は普通に恐ろしかったが、ヒトに近い状態の赤子は大変愛らしい。
『解除は、出来なさそうだな……まぁ良い。実験の成果は、十分に得ている……』
「実験?実験ってどういうこと?」
 少し声を詰まらせながらも魔神は不敵に笑う。
『ふっ……ガイアの愛し子よ、貴様とは再び相まみえるだろう。……その時を楽しみにしておこう』
「ガイアと似たような事を……」
 リベロの名付け権を譲渡された時に、同じ様な事を言われた。なにか?神の間で流行っているのか?
 と、どうでもいい事を考えていると、ウルティムの中から魔神の圧がすっと消えていった。実験とはどういうことか聞きたかったが、もうどうしようもない。
『追い出したのか?』
「はい。もう大丈夫ですよ。後はこの残ったウルティムと本契約を結ぶだけです」
 本契約さえしてしまえば、魔神も手出しは出来なくなるだろう。もし出来たとしても、拘束力が強まる。勿論、殺すなんて選択肢は端から無い。
『ここで正常か……よく機転が利くな』
「ここは魔力が溢れてますから。それに、女王が記憶の継承をしてくれたおかげで、魔法が使えました。ありがとうございます」
 複雑そうに笑う女王に、責を感じて欲しくなくて何でも無いように笑いかける。
 女王のくれたペンダントには、女王の記憶継承という高度な魔法が付与されていた。継承は一瞬だったが、女王という一人の人生を全て記憶した。やむを得ないとは言え、他人の記憶をねじ込む行為を良しとは思わなかったのだろう。女王は申し訳なさそうだ。
「一先ず、上に帰りますか」
『そうだな』
 頷くユースを見て、何か忘れていることに気づく。
(何だっけ?……あ)
 キョロキョロと見渡した先で、見慣れたモノがチラつく。
 小走りでそれを取りに走り、ユースの元へ急ぐ。
「はい、剣士さん」
『?』
 まだ獣姿のユースに、いつもの銀仮面を差し出す。
「大変だったでしょう?ありがとうございました」
『ああ、ありがとう』
 仮面を受け取るユースの手がヒトの手に変わる。
 そこでふとフェーリエは思い返す。忘れているのは、仮面だけだっただろうか?
 ユースが仮面を顔につけた音が聞こえる。つまり、今フェーリエの目の前にユースの手はない。そして……。
「……キャァァァ!!!!????」
「あ、服」
 フェーリエの悲鳴と共に、ユースの気の抜ける声が重なる。
 女子のような悲鳴を上げたのは、今世でも前世でも初めてだ……。

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