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第七章 火竜討伐
#166 雷
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力強く腕に抱え込まれ、身体が浮遊感に包まれる。間近で爆ぜた炎は、横を霞め黒岩を穿った。石の欠片も残らないその威力に、フェーリエは背筋に怖気が走った。
フェーリエを抱えて横に飛んだユースは、火炎が身体を焼かなかったことに驚いている様だった。ユースには、魔法障壁が張られている。前夜に渡した御守りの効果だ。ある程度の攻撃を防ぐ防御に特化した魔法を施したそれは、火竜の強烈な火炎に早くも根を上げ始めていた。次は持たないだろう。
状況を確認していたフェーリエは、火竜が首の向きを変え始めたことに気がついた。移動したフェーリエとユースに向けて、再び放出された火炎が迫る。
自分を囲んでいた腕を押しのけ、フェーリエは前を出る。
(魔法障壁じゃ破られる……!!)
御守りの削れ具合から見て、まず間違いなく防げない。とは言え、これ以上移動すると騎士達を巻き込みかねない。動けない彼らでは、即死は確定だ。
火炎に向けて手のひらを向ける。魔力を前方に噴射するイメージで、魔法を発動する。
ジュワッと水が水蒸気になって空気に溶けていく。火炎に対して水流をぶつけたのだが、有利属性で有るにも関わらず押し負けている。
(これ以上どうしろって言うのよ!!!一度に放出できる魔力に差がありすぎるっ!!!!)
心の中で悪態を吐きながら、フェーリエは魔法を放ち続ける。
このままでは全滅だ。言い出しっぺで、状況を引っかき回してしまった責任がフェーリエにはある。何としても火竜を止めなければならない。
(……この状況でまだ火竜を殺したくないって思うのは流石にエゴ……?)
フェーリエは自嘲した。それでも、今更決めた事を覆す気にはならない。出来るならば、成し遂げたい。いや、成し遂げなければならない。その為にも、躊躇ってはいられない。
「虎穴に入らずんば虎児を得ず……傷つける事を躊躇っていたら、どっちも死んでしまうわ」
決意を固めるために、小さく呟く。
火竜の逆鱗は、何も彼を激怒させる為のものではない。そこだけ意図的に脆く作られているのだ。必要な時に殺せるように。だからこそ、逆鱗だけ全ての攻撃が効く。逆に言えば、逆鱗以外は殆ど効かない。
狙うは逆鱗。ダメージを与えることよりも、痺れさせる事に特化した魔法を撃たなければいけない。しかも水流を出したまま。
(って、私が一人でやる必要無いじゃない……)
頼もしい契約者がいることを思い出す。彼になら魔法の制御を任せられる。
「ウルティム」
『了解。本当に、ご主人はやることが派手だね』
「う・る・さ・い。さっさと制御変わって頂戴!」
馬鹿にされたように感じて、フェーリエは頬を膨らませた。ウルティムはへらへらと笑いながらも、しっかりと水流の制御を引き受けた。
どっと魔力を失ったフェーリエはふらつく身体を叱咤し、火竜を見据えた。
「飛びっ切り痺れる魔法を御見舞いしてあげる!!!!皆!!!目と耳を塞いで!!!」
叫ぶと同時に、フェーリエはサッと右手を挙げた。どれだけの人が従ってくれたかは分からないが、手を拱いては居られない。実行させて貰う。
「落ちろ紫電!!!!!」
フェーリエの叫び声と共に、分厚い黒雲から狙い違わず火竜の逆鱗に閃光が落ちた。
あらかじめ目を瞑っていたフェーリエの瞼に、痛いほど光が突き刺さる。尚且つ、轟音のせいで暫く耳に嫌な甲高い音が響く。
チカチカする目を無理矢理こじ開け、火竜の様子を確認する。火竜は魔法の影響で意識を失っている様だ。身じろぎすらしない。
「どうやら、うまくいったようね」
『その代わり周りの人が皆犠牲になってるけど』
「それは……あはは、後で謝るわ」
ウルティムの最もな言葉に、フェーリエは乾いた笑みを漏らした。
忠告はしたが、最詳しくするべきだったなとフェーリエは反省する。眼前には、光と音にやられた騎士達がごろごろと転がっていた。
フェーリエを抱えて横に飛んだユースは、火炎が身体を焼かなかったことに驚いている様だった。ユースには、魔法障壁が張られている。前夜に渡した御守りの効果だ。ある程度の攻撃を防ぐ防御に特化した魔法を施したそれは、火竜の強烈な火炎に早くも根を上げ始めていた。次は持たないだろう。
状況を確認していたフェーリエは、火竜が首の向きを変え始めたことに気がついた。移動したフェーリエとユースに向けて、再び放出された火炎が迫る。
自分を囲んでいた腕を押しのけ、フェーリエは前を出る。
(魔法障壁じゃ破られる……!!)
御守りの削れ具合から見て、まず間違いなく防げない。とは言え、これ以上移動すると騎士達を巻き込みかねない。動けない彼らでは、即死は確定だ。
火炎に向けて手のひらを向ける。魔力を前方に噴射するイメージで、魔法を発動する。
ジュワッと水が水蒸気になって空気に溶けていく。火炎に対して水流をぶつけたのだが、有利属性で有るにも関わらず押し負けている。
(これ以上どうしろって言うのよ!!!一度に放出できる魔力に差がありすぎるっ!!!!)
心の中で悪態を吐きながら、フェーリエは魔法を放ち続ける。
このままでは全滅だ。言い出しっぺで、状況を引っかき回してしまった責任がフェーリエにはある。何としても火竜を止めなければならない。
(……この状況でまだ火竜を殺したくないって思うのは流石にエゴ……?)
フェーリエは自嘲した。それでも、今更決めた事を覆す気にはならない。出来るならば、成し遂げたい。いや、成し遂げなければならない。その為にも、躊躇ってはいられない。
「虎穴に入らずんば虎児を得ず……傷つける事を躊躇っていたら、どっちも死んでしまうわ」
決意を固めるために、小さく呟く。
火竜の逆鱗は、何も彼を激怒させる為のものではない。そこだけ意図的に脆く作られているのだ。必要な時に殺せるように。だからこそ、逆鱗だけ全ての攻撃が効く。逆に言えば、逆鱗以外は殆ど効かない。
狙うは逆鱗。ダメージを与えることよりも、痺れさせる事に特化した魔法を撃たなければいけない。しかも水流を出したまま。
(って、私が一人でやる必要無いじゃない……)
頼もしい契約者がいることを思い出す。彼になら魔法の制御を任せられる。
「ウルティム」
『了解。本当に、ご主人はやることが派手だね』
「う・る・さ・い。さっさと制御変わって頂戴!」
馬鹿にされたように感じて、フェーリエは頬を膨らませた。ウルティムはへらへらと笑いながらも、しっかりと水流の制御を引き受けた。
どっと魔力を失ったフェーリエはふらつく身体を叱咤し、火竜を見据えた。
「飛びっ切り痺れる魔法を御見舞いしてあげる!!!!皆!!!目と耳を塞いで!!!」
叫ぶと同時に、フェーリエはサッと右手を挙げた。どれだけの人が従ってくれたかは分からないが、手を拱いては居られない。実行させて貰う。
「落ちろ紫電!!!!!」
フェーリエの叫び声と共に、分厚い黒雲から狙い違わず火竜の逆鱗に閃光が落ちた。
あらかじめ目を瞑っていたフェーリエの瞼に、痛いほど光が突き刺さる。尚且つ、轟音のせいで暫く耳に嫌な甲高い音が響く。
チカチカする目を無理矢理こじ開け、火竜の様子を確認する。火竜は魔法の影響で意識を失っている様だ。身じろぎすらしない。
「どうやら、うまくいったようね」
『その代わり周りの人が皆犠牲になってるけど』
「それは……あはは、後で謝るわ」
ウルティムの最もな言葉に、フェーリエは乾いた笑みを漏らした。
忠告はしたが、最詳しくするべきだったなとフェーリエは反省する。眼前には、光と音にやられた騎士達がごろごろと転がっていた。
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