転生令嬢は覆面ズをゆく

唄宮 和泉

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第七章 火竜討伐

#176 謁見

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「まず、陛下の命令に違反したことは咎めません。ユスティア殿下、シャーロット殿下も同罪ですから。いえ、両殿下の方が事の次第は正確に理解していらっしゃったはず。よって貴女には中立立場にあった火竜を契約者としてしまった件についてのみ責を問います」
 目で宜しいですねと尋ねられた。冷や汗が背中を伝う感触にゾワリとしながら「はい、了解いたしました」とだけ答える。こんな場所に置いての礼儀作法なんて頭から飛んでいっている。受け答えしているだけ褒めて欲しい。いや、それ以上の重罪を犯しているのだから文句は言えない。これ以上は何も思うまい。
「契約当時、国際問題の事は頭にありましたか」
「いいえ」
「では、貴女は何を思って火竜と契約を?神話の生物を支配に置きたかったのですか?それとも研究の為?」
 散々な言われようだった。フェーリエの取った行動は、利己的な魔法使いが探究心のためにしたものだと思われている。
「いいえ。私はただ、彼に世界の広さを見せてあげたかっただけです」
「成る程。貴女はあくまでも自己の為ではなかったと主張するのですね」
 妙に引っかかる言い方だった。しかし肯定するしか道はない。
「はい」
「……我々は貴女の事を調査しました。学園での素行も。貴女は魔法の事となると常識を大きく外れた行動を取るそうですね。火竜は膨大な魔力を持つ事で有名です。よって、貴女の言葉を無条件で信じることは出来ません」
 完全に冷え切った目で見られ、内臓がきゅっとする。軽く恐怖を感じた。ここで反論する気力はもう無い。気を抜くと吐いてしまいそうだ。
 学園での評価を聞いたのであれば、この人の主張は最もなことだ。学園の教官とあまり話はしなかったが、話した内容は全て先進的な魔法の話ばかりだ。中には膨大な魔力が無ければ実現できないような魔法道具についての事もあった。実際、フェーリエの魔力量であれば実現できるのだが、如何せん学園にはさばを読んだ魔力量を伝えてある。伝えたのは平均より少し高い程度の魔力量だ。教官からすると、膨大な魔力を確保するために契約したと思ったのだろう。
(ど、どうしよう……何を言っても言い訳にしか聞こえない……)
 冷や汗が背中を伝う。いや、さっきからずっと流れている。ここで口を開かなければならないだろうか。だが何を言えば良いのか。
 フェーリエが何も言えず固まっていると、足下でパチリと音がした。炎が爆ぜる音だった。
「えっ!?」
「……!?」
 フェーリエは声を上げて、宰相らしき男は息を呑んで、それぞれ驚いた。陛下の近くに居た兵士も警戒するように武器を構えたが、陛下は身じろぎもせずただフェーリエの様子を見ている。
 そうしている間にも、フェーリエの足下で炎が揺らぎ、謁見の間のガラスをオレンジ色に染め上げる。
 不思議と熱さはなく、その段階でフェーリエは何が起こっているのかを理解した。
 一旦目を閉じ、深呼吸を一つ。真っ直ぐ陛下を見つめ、背中を押された熱さを抱え口を開く。
「陛下。火竜本人が話をしたいそうです。この場に呼んでも宜しいでしょうか」
「……許可しよう」
「ありがとうございます」
 陛下の重々しい言葉を受け止め、彼の名を呼ぶ。
「……おいで、アグニス」
 フェーリエの呼び声に答えるように、炎の勢いが増していく。
 ひときわ強く炎が爆ぜ、謁見の間に人々に畏怖を与える伝説の火竜が現れた。 


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