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3 近江花音はアイドルですっ!
7.花音ちゃんの悩みごと(1)
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可愛らしく名前を呼びながら、小春ちゃんへと抱き付いていくその姿は、多分あかりちゃんのもの。
「こーはーるーちゃーんっ!!」
「いやああああ!!!!」
小春ちゃんが悲鳴をあげたことで、それがあかりちゃんではなくひかる君であることがわかる。
『スカイアクア』の最年少、ひかる君とあかりちゃんは中学2年生。
中学生になった今も、2人のイタズラは続いている。
「どうしてバレちゃうのかなあ?」
小春ちゃんにバレても、あかりちゃんはひかる君に扮して小首を傾げる。
中学生になってもなお、ひかる君とあかりちゃんはお互いになりすませるほど、よく似ている。
見分けられるのは小春ちゃんと、青さんくらい。
「いい加減にしなよ」
ひかる君の首根っこを掴んで乱暴に引き離すマナ君。
デビュー前から変わらない。
いつも小学校まで小春ちゃんを迎えに行っていたマナ君は、高校生になっても変わっていない。
「大丈夫? 小春」
「花音ちゃあん!!」
マナ君には目もくれず、私の腕の中へと飛び込んでくる小春ちゃん。
「あー、ずるい! 小春、ボクにもぎゅー」
両腕を広げる伊織ちゃんに、飛び込んでいく小春ちゃん。
伊織ちゃんの、勝ち誇ったような笑み。
小春ちゃんとマナ君の仲は、何の進展もみられない。
「伊織、そのくらいにしておきなさい。あとが怖いから」
「はーい」
仲裁に入った由梨亜ちゃん。
デビュー前から変わらない私たちだけど、活動の面では大きく進歩している。
たくさんライブを重ねて、歌もダンスもデビュー当時と比べたら格段に上達したと思う。
曲数も増えて、CDも出したり、歌番組に出演したり。
『スカイアクア』としてだけじゃなく、個人での活動の場を広げている子もいる。
雑誌の専属モデルになったり、ドラマや映画に出演したり、写真集を出したり。
普通の中学生、高校生でいるだけだったら絶対にできなかったと思うようなことを、たくさんさせてもらってる。
そんな毎日に感謝して、だけど最近、どうしても悩んでしまうことがある。
『他の誰かと比べずに、自分らしくいなさい』
それは、青さんがいつも言っている言葉。
でも、そう言われていてもやっぱり比べてしまう。
例えば由梨亜ちゃん。
『スカイアクア』として活動しながら、女優としてオーディションに参加して、役を勝ち取って、評価されている。
例えば小春ちゃん。
小春ちゃんも、声優としての活動をはじめて『スカイアクアの三好小春』だけではなく、『声優の三好小春』としても知名度をあげていっている。
みんなそれぞれに、信念を持って、個性を活かしてそれぞれの活動の場を獲得している。
それに比べて私は?
私の活動場所は、『スカイアクア』と『アクアブルー』の中だけで、他に私が個人でやっていることなんて何もない。
ひとりじゃ何もできない私。
私って、何なんだろう……。
「こーはーるーちゃーんっ!!」
「いやああああ!!!!」
小春ちゃんが悲鳴をあげたことで、それがあかりちゃんではなくひかる君であることがわかる。
『スカイアクア』の最年少、ひかる君とあかりちゃんは中学2年生。
中学生になった今も、2人のイタズラは続いている。
「どうしてバレちゃうのかなあ?」
小春ちゃんにバレても、あかりちゃんはひかる君に扮して小首を傾げる。
中学生になってもなお、ひかる君とあかりちゃんはお互いになりすませるほど、よく似ている。
見分けられるのは小春ちゃんと、青さんくらい。
「いい加減にしなよ」
ひかる君の首根っこを掴んで乱暴に引き離すマナ君。
デビュー前から変わらない。
いつも小学校まで小春ちゃんを迎えに行っていたマナ君は、高校生になっても変わっていない。
「大丈夫? 小春」
「花音ちゃあん!!」
マナ君には目もくれず、私の腕の中へと飛び込んでくる小春ちゃん。
「あー、ずるい! 小春、ボクにもぎゅー」
両腕を広げる伊織ちゃんに、飛び込んでいく小春ちゃん。
伊織ちゃんの、勝ち誇ったような笑み。
小春ちゃんとマナ君の仲は、何の進展もみられない。
「伊織、そのくらいにしておきなさい。あとが怖いから」
「はーい」
仲裁に入った由梨亜ちゃん。
デビュー前から変わらない私たちだけど、活動の面では大きく進歩している。
たくさんライブを重ねて、歌もダンスもデビュー当時と比べたら格段に上達したと思う。
曲数も増えて、CDも出したり、歌番組に出演したり。
『スカイアクア』としてだけじゃなく、個人での活動の場を広げている子もいる。
雑誌の専属モデルになったり、ドラマや映画に出演したり、写真集を出したり。
普通の中学生、高校生でいるだけだったら絶対にできなかったと思うようなことを、たくさんさせてもらってる。
そんな毎日に感謝して、だけど最近、どうしても悩んでしまうことがある。
『他の誰かと比べずに、自分らしくいなさい』
それは、青さんがいつも言っている言葉。
でも、そう言われていてもやっぱり比べてしまう。
例えば由梨亜ちゃん。
『スカイアクア』として活動しながら、女優としてオーディションに参加して、役を勝ち取って、評価されている。
例えば小春ちゃん。
小春ちゃんも、声優としての活動をはじめて『スカイアクアの三好小春』だけではなく、『声優の三好小春』としても知名度をあげていっている。
みんなそれぞれに、信念を持って、個性を活かしてそれぞれの活動の場を獲得している。
それに比べて私は?
私の活動場所は、『スカイアクア』と『アクアブルー』の中だけで、他に私が個人でやっていることなんて何もない。
ひとりじゃ何もできない私。
私って、何なんだろう……。
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