【完結】AnimaRoom

桐生千種

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ミヨちゃんは居候

1.はじまる!! 新生活

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 憂鬱。

「はあ……」

 空は晴天。

 風も心地良い。

 明後日から、楽しみにしていた高校生活。

 なのに……。

「はあ……」

 ため息を吐かずにはいられない。

 思い出すのは、数日前のお母さんとの会話。

 *****

「ミヨ、荷物まとめておきなさい。探さんに話はつけておいたから」

「話って、なんの……」

「なにって、高校生活の3年間、探さんのところでお世話になる話よ」

「なんで!? 家からだって通えるのに!!」

「なに言ってるの。2時間よ、2時間。探さんのところからなら10分なんだから、素直に甘えておきなさい」

「だったら学校の近くで1人暮らしするよ!」

「バカ言わないで」

 *****

 そんなこんなで、探さんの家で居候させてもらうことになってしまったわけだけど……。

 ――探さんって、親戚の中でも変人って言われてるし、よく知らないんだよなあ……。

 話したこともないし……。

「はあ……」

 ため息は止まらない。

 *****

 大きな建物。

 広い庭付きの一軒家。

 ここに、20代の男が1人暮らし。

 自称は研究者だけど、なんの研究をしているのかは不明。

 傍から見たら怪しいこと、この上ない。

 ピンポーン……――

「……」

 意を決して鳴らしたチャイムに応答はなし。

「すみませーん」

 ――まさか、留守?

 でも、お母さんが話してるはずだし、来るとわかっていて出かけるなんてこと……。

 ガチャリ……――

 扉が開いた。

 良かった、ちゃんといた。

 だけど、開いたのはほんの少しの隙間だけ。

 とても人が通れるような幅じゃなくて、かろうじて互いの姿を確認できる程度の細い隙間。

 細く開かれた扉の隙間から覗く、チラッとだけ見える白衣。

 研究者って言うのは本当っぽい。

「……なに」

 ぼそりと聞こえたのは、そのひと言。

「犬飼ミヨです! 母から連絡があったと思うんですけど」

「……」

 沈黙。

「……えっと、今日から、お世話に、なります?」

「……」

 バタン……――

 ――えっ……。

 閉められた。

 扉閉められたんだけど!!

 なんで!?

 ガチャリ……――

 だけど、すぐに扉は開いて今度は人がひとり入れるくらいに扉は開いた。

 たぶん、チェーンを外してくれたんだよね。

 きっと、そうだよね。 

 気を取り直して、探さんを見上げる。

 さっきはよく見えなかった顔が、今度はちゃんと、なんてことはなかった。

 前髪が長くて、顔がまったくわからない。

 これでちゃんと見えているのかどうかも疑わしい。

「……入れば」

「お、お邪魔します!」

 玄関に足を踏み入れると、間髪入れずに扉が閉められた。

 閉められる鍵が、ひとつ、ふたつ。

 そしてチェーンまでかける。

 無言で。

 前髪で顔を隠して。

 ――なんか、怖い……。

「……先に言っておくけど」

「は、はい!」

 ――ふぇーん! 怖いよー!!

「……部屋はそこ。向こうの廊下にさえ近づかなければ自由にしていいから。冷蔵庫も勝手に使って。ヤバイヤツにはちゃんとラベル貼ってあるから。じゃあ、あとは適当に自分でなんとかして」

 言い終えた探さんは、私を残してさっさと行ってしまおうとする。

「あ、あの!」

「……」

 声をかけたら、無言で振り向かれた。

 ――怖いっ!!

「お世話になりますっ! よろしくお願いしますっ!」

「……」

 ――無視っ!?

 探さんはなにも言わずに、私に「近づくな」と言った部屋に入ってしまった。

 私、探さんとうまくやっていける気がしない……。

 ……って言うか、ヤバイヤツってなに!?
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