【完結】EACH-愛を胸に眠る-

桐生千種

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05 気がつけば ひとり

01

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 美咲と出会って、2年が経とうとしていた。
 美咲は、出会った頃と変わらずに私とずっと一緒にいてくれている。

「みさき」

「なあに?」

 声をかければ、いつだって美咲は答えてくれた。

「どうして、あいなの?」
「んー?」
「みんな、えーあいっていうの。みさきがあいっていうの。どうして?」

 ずっと疑問だった。
 大人たちはみんな私をAIと呼んだ。
 AIが私を示す言葉なのだと思っていた。

 けれど美咲は出会ったそのときから、私をアイと呼んでいたから。

「AIなんて、人間の名前じゃないもの。アイはモルモットじゃないんだから」

 そこで言葉を切った美咲は、けれどすぐに言葉を続けた。

「アイって呼ばれるの、嫌だった……?」

 戸惑いがちに言う美咲に、まさか、と思った。

 2年も一緒にいて、今更。

 もしも、嫌、なんて思っていたとしたら、とっくに主張している。

 その呼び方は嫌だ、って。

「あい、すき。あいがいい」

 冷たい音のAIよりも、美咲が呼んでくれるアイの方が、ずっとあたたかくて嬉しい。

「良かった!」

 ニコリと美咲が笑う。
 美咲が笑うと、私も嬉しい。

「そうだ、明日はアイの誕生日だから、今年も2人でお祝いしようね!」

「うん」

 誕生日は、家族でケーキを食べて、プレゼントを用意して、みんなでお祝いする日。

 美咲が教えてくれた。

 本物のケーキも、プレゼントもないけど、ケーキの絵とプレゼントの絵で、お祝いする。

 家族はいないけど。
 美咲がいてくれる。
 美咲が喜んでくれる。

 それだけで、私は嬉しいから。

「おやすみ、アイ」

「おやすみ、みさき」
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