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02 ハウス『友の木』
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ざあざあと、変わらず雨は僕たちを叩く。
硬い鉄格子は雨に濡れて、けれど冷たいとは感じなかった。
ぐっと、力をかければその門は細い隙間を開けた。
僕と彼が通れるだけの隙間を開けて、僕たちは門の奥に足を踏み入れた。
門から続く道は、レンガが敷かれていて泥でぬかるんではいなかった。
――あなたたちなら、ここで、ヒトとして生きていける。
彼女の言葉を頭の中で繰り返した。
僕たちは、ここで、ヒトになる。
ここでなら、ヒトになれる。
そう、自分自身に言い聞かせた。
ふっと、明かりが点いた。
レンガの道の向こう側。
佇む建物の扉が開かれて、人の声と動物――犬の鳴き声が雨音を押しのけるように僕たちの耳に届いた。
「……、なんだって……、こんな夜中に……」
僕たちよりも大きい、だけどまだ子供の男の子。
キャンキャンと鳴く、小さい犬。
「お前たち……っ」
彼は小さい犬をその腕に抱えて、僕たちを見て、そして息を呑んだ。
「マザー!! マザー!! 大変だ!! 小さい子が外に!!」
彼は建物の中に向かって叫んで、また僕たちを見た。
「早くこっちに来いっ!」
僕たちのことを呼んでいるらしい彼。
彼の声を聞きつけた人たちが、集まって来ていた。
僕たちと同じくらいの子供もいた。
大人も、いた。
「ほら、風邪引くだろ」
雨の中を飛び出して来たその人が、自分だって濡れているのに、僕たちを叱って建物の中へと僕たちを追いやった。
「あーあ、びしょ濡れ」
自分から雨の中に出たのに文句を言っているその人は、子供なのか大人なのか――敵なのか味方なのか――まだわからなかったけれど、僕たちは『保護』してもらえたらしかった。
硬い鉄格子は雨に濡れて、けれど冷たいとは感じなかった。
ぐっと、力をかければその門は細い隙間を開けた。
僕と彼が通れるだけの隙間を開けて、僕たちは門の奥に足を踏み入れた。
門から続く道は、レンガが敷かれていて泥でぬかるんではいなかった。
――あなたたちなら、ここで、ヒトとして生きていける。
彼女の言葉を頭の中で繰り返した。
僕たちは、ここで、ヒトになる。
ここでなら、ヒトになれる。
そう、自分自身に言い聞かせた。
ふっと、明かりが点いた。
レンガの道の向こう側。
佇む建物の扉が開かれて、人の声と動物――犬の鳴き声が雨音を押しのけるように僕たちの耳に届いた。
「……、なんだって……、こんな夜中に……」
僕たちよりも大きい、だけどまだ子供の男の子。
キャンキャンと鳴く、小さい犬。
「お前たち……っ」
彼は小さい犬をその腕に抱えて、僕たちを見て、そして息を呑んだ。
「マザー!! マザー!! 大変だ!! 小さい子が外に!!」
彼は建物の中に向かって叫んで、また僕たちを見た。
「早くこっちに来いっ!」
僕たちのことを呼んでいるらしい彼。
彼の声を聞きつけた人たちが、集まって来ていた。
僕たちと同じくらいの子供もいた。
大人も、いた。
「ほら、風邪引くだろ」
雨の中を飛び出して来たその人が、自分だって濡れているのに、僕たちを叱って建物の中へと僕たちを追いやった。
「あーあ、びしょ濡れ」
自分から雨の中に出たのに文句を言っているその人は、子供なのか大人なのか――敵なのか味方なのか――まだわからなかったけれど、僕たちは『保護』してもらえたらしかった。
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