5 / 14
02 ハウス『友の木』
04
しおりを挟む
「おはよう、よく眠れた?」
朝、アオイが僕たちを食堂に連れて来た。
食堂には昨日の女の人がいて、他にもたくさんの子供がいた。
「それがさマザー、こいつらベッド使ってなかったんだよ」
アオイが言った。
この人は、マザーというらしい。
「あらあら、寝れなかったの?」
しゃがみこんで目を合わせてくるその人から、堪らず目を逸らした。
「いつも、あれは使わない。使い方も知らない。それに、アオイは部屋を使えって言った」
部屋のものを使っていいとは言われてない。
「俺の伝え方か!?」
その声に、僕の背中にくっついている彼がビクリと肩を震わせた。
「あ、悪ぃ」
「知らなかったなら、仕方ないわね。今夜からはちゃんと使えるように教えてもらいましょうね」
今夜、から。
それは、僕たちがここにいてもいいということ?
「僕たち、ここにいてもいいの?」
マザーは、ほんの少し目を見開いたあと、ふわりと笑った。
「もちろんよ。『友の木』は子供のためのハウスですもの」
子供のためのハウス。
僕たちは、ヒトの子供として保護してもらえている。
「ところでお前ら、名前は? ここで暮らすなら名前がないと不便なんだけど、新しい名前をつけるでもいいんだぜ?」
アオイの言葉に、一瞬だけ戸惑う。
ツライ過去を捨てて、新しい自分として生きるために、名前をつけてもらえる。
迷ったけれど、僕は決めた。
僕たちをこの場所に連れて来てくれた彼女との唯一の繋がりだから。
「僕は、シノ。僕たちを助けてくれた人が、そう呼んでくれたんだ」
「僕は……、リン……」
僕たちはシノとして、リンとして、生きることを決めた。
朝、アオイが僕たちを食堂に連れて来た。
食堂には昨日の女の人がいて、他にもたくさんの子供がいた。
「それがさマザー、こいつらベッド使ってなかったんだよ」
アオイが言った。
この人は、マザーというらしい。
「あらあら、寝れなかったの?」
しゃがみこんで目を合わせてくるその人から、堪らず目を逸らした。
「いつも、あれは使わない。使い方も知らない。それに、アオイは部屋を使えって言った」
部屋のものを使っていいとは言われてない。
「俺の伝え方か!?」
その声に、僕の背中にくっついている彼がビクリと肩を震わせた。
「あ、悪ぃ」
「知らなかったなら、仕方ないわね。今夜からはちゃんと使えるように教えてもらいましょうね」
今夜、から。
それは、僕たちがここにいてもいいということ?
「僕たち、ここにいてもいいの?」
マザーは、ほんの少し目を見開いたあと、ふわりと笑った。
「もちろんよ。『友の木』は子供のためのハウスですもの」
子供のためのハウス。
僕たちは、ヒトの子供として保護してもらえている。
「ところでお前ら、名前は? ここで暮らすなら名前がないと不便なんだけど、新しい名前をつけるでもいいんだぜ?」
アオイの言葉に、一瞬だけ戸惑う。
ツライ過去を捨てて、新しい自分として生きるために、名前をつけてもらえる。
迷ったけれど、僕は決めた。
僕たちをこの場所に連れて来てくれた彼女との唯一の繋がりだから。
「僕は、シノ。僕たちを助けてくれた人が、そう呼んでくれたんだ」
「僕は……、リン……」
僕たちはシノとして、リンとして、生きることを決めた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
愚者による愚行と愚策の結果……《完結》
アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。
それが転落の始まり……ではなかった。
本当の愚者は誰だったのか。
誰を相手にしていたのか。
後悔は……してもし足りない。
全13話
☆他社でも公開します
魅了の対価
しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。
彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。
ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。
アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。
淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる