【完結】EACH-篠突く雨に、凛と-

03 ヒトとして生きる

01

　ハウス『友の木』。

　それが、僕たちが保護されたヒトの子供のための施設だった。

　親を亡くし、行く当てのない子供。
　虐待を受け、保護された子供。
　捨てられた、子供。

　ハウスには、それぞれに事情を抱えた子供たちが集っていた。

　なるほど。
　ヒトはヒトの子を虐待し、捨てる。

　そんなことが起こり得るなら、アノ場所で僕たちが受けていた扱いにも納得がいった。

　ヒトの子さえも乱暴に扱うヒトが、モルモットの僕たちをまともに扱うはずがない。

　ハウスに来ることができなかったら、僕たちはとっくに死んでいた。

　けれど、そんなヒトの社会だったからこそ、僕たちはハウスになんの疑いも持たれることなく、保護してもらうことができた。

　身体中にできた痣は、酷い虐待の痕として認められた。

　保護すべき子供だと、誰が見ても明らかだったようだ。

　特にハウスに来てから能力に気づいてしまった彼――リンは、情緒が不安定でそれが余計に信憑性を増した。

　心的外傷が深刻だと、医者は言った。

　まさか、リンが聞きたくもない他人の心の声を聞いて苦しんでいるなんて、思いもしないだろう。

　あれから5年。

　小さい子、と言われていた僕たちは、大きい子、と言われるようになった。

　面倒を見られる側だった僕たちも、誰かの面倒を見る側になった。

　リンは、自分の能力を完璧にとはいかないけれど、コントロールできるようになって以前ほど他人の声に苦しむことがなくなっていた。

　僕には今のところ、リンのような能力の発現はみられない。

　リンにばかり、苦労を強いているようで、心が痛む。

　僕の苦労と言えば、髪と瞳の色がみんなと違っていて目立つことくらいだから。

　僕たちがハウスに保護された日から5年。

　僕たちはヒトとして、ヒトの社会に溶け込めている。