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03 ヒトとして生きる
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月のはじめのよく晴れた日。
図書室の陽当たりの良い席は、僕のお気に入りの読書スペースだ。
いつもなら僕の読書の邪魔をしに来る人なんて滅多にいないけれど、これが月のはじめとなると、話は別だ。
「シノ、こんなところにいた」
ひとり図書室にいた僕のところにやって来た、芹。
あの日、子犬――リンクと一緒に僕たちを見つけてくれた少年は、今でもこうして僕たちのことを気にかけてくれている。
「偉いぞ、リンク」
子犬だったリンクも、5年も経てば立派な成犬だ。
「何か用事?」
僕は読んでいた本から顔を上げて芹を見た。
芹の隣でリンクがぶんぶんとしっぽを振っていた。
「『何か用事?』じゃないよ。今日は利春先生が来るってわかってるだろ? まさか、逃げようとか考えてたわけじゃないよな?」
利春先生――月に1度ハウスにやって来る医者。
初めて彼の姿を見たときは、リンと2人で逃げ出した。
白衣姿の彼に、『追手』かと思ったんだ。
けれど彼はただの医者で、アノ場所とは何の繋がりもない一般人だった。
「もう、あのときみたいな子供じゃないよ」
「そっか。んじゃ、利春先生来たから一緒に行こうな」
「だから、子供じゃないって」
芹は、いつまでもこうして僕を子供扱いする。
もう、僕は充分大きい子だと思うのに。
「充分子供だよ。俺より小さい」
そう言って、僕の頭に手を置いた芹は、確かに僕より身長が高い。
けれど、それは年齢差によるものだと、僕は理解している。
「……いつか超えてやる」
僕の身長が芹を超えるかどうかはわからないけれど、希望は持っていても構わないと思うんだ。
「そうかそうか。頑張れよ」
あしらわれていることはわかるけれど、こんなやり取りも嫌いじゃない――僕の日常。
図書室の陽当たりの良い席は、僕のお気に入りの読書スペースだ。
いつもなら僕の読書の邪魔をしに来る人なんて滅多にいないけれど、これが月のはじめとなると、話は別だ。
「シノ、こんなところにいた」
ひとり図書室にいた僕のところにやって来た、芹。
あの日、子犬――リンクと一緒に僕たちを見つけてくれた少年は、今でもこうして僕たちのことを気にかけてくれている。
「偉いぞ、リンク」
子犬だったリンクも、5年も経てば立派な成犬だ。
「何か用事?」
僕は読んでいた本から顔を上げて芹を見た。
芹の隣でリンクがぶんぶんとしっぽを振っていた。
「『何か用事?』じゃないよ。今日は利春先生が来るってわかってるだろ? まさか、逃げようとか考えてたわけじゃないよな?」
利春先生――月に1度ハウスにやって来る医者。
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白衣姿の彼に、『追手』かと思ったんだ。
けれど彼はただの医者で、アノ場所とは何の繋がりもない一般人だった。
「もう、あのときみたいな子供じゃないよ」
「そっか。んじゃ、利春先生来たから一緒に行こうな」
「だから、子供じゃないって」
芹は、いつまでもこうして僕を子供扱いする。
もう、僕は充分大きい子だと思うのに。
「充分子供だよ。俺より小さい」
そう言って、僕の頭に手を置いた芹は、確かに僕より身長が高い。
けれど、それは年齢差によるものだと、僕は理解している。
「……いつか超えてやる」
僕の身長が芹を超えるかどうかはわからないけれど、希望は持っていても構わないと思うんだ。
「そうかそうか。頑張れよ」
あしらわれていることはわかるけれど、こんなやり取りも嫌いじゃない――僕の日常。
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