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04 新人類ネオ
04
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それは、青空が広がる晴天の日のことだった。
ハウスの中にある図書室。
窓から陽の光が射し込むその場所は、シノのお気に入りの場所で、その日もシノはそこにいた。
いつもと変わらず、ひとり本を読むシノ。
ハウスに来た頃はくすんでいた金色の髪も、毎日最低限の手入れはされているから、陽の光が当たってキラキラと輝いていた。
それは1枚の絵画のようで、芸術作品のようで、僕は見惚れた。
言葉を忘れて、ただただ見惚れる僕に、シノは言った。
「戻ろうと思うんだ、アノ場所に」
「今日はカレーらしいよ」と、そんななんでもないことを言うような口ぶりだった。
「戻るって、どこに」
「僕たちが、生まれた場所に」
シノは、手元の本から顔を上げることなくそう言った。
――いつからだろう……。シノの心が視えなくなったのは……。
他人の心が聞こえ、視えてしまう、このネオとしての能力は、成長するにつれて、コントロールができるようになった。
聞かないことも、視ないこともできるようになったけれど、シノはいつの日からか、聞こうとしても、視ようとしても、どうしてもわからなかった。
「僕はね、リン。いつまでもヒトの社会では生きてはいけないんだ」
シノの心はわからない。
「僕の頭は、ヒトとは違う。それはわかっていたんだ。普通のヒトなら忘れてしまうようなことも、僕は忘れない。1度読んだ本の内容も、忘れることはない。それだけなら、僕も、ヒトの社会で生きていけたんだけどね」
それは、もう1つのどうしようもできないシノのネオとしての特性に、シノが気づいたことになる。
「僕は、もうすぐ体の成長が止まるんだ」
おそらくそれは、ヒトとしてもネオとしても生物としても、初めての事例だろう。
シノはそれ以上、そのことについては触れなかった。
そしてようやく、シノは本から顔を上げて僕を見て言った。
「リン。キミはどうする?」
ハウスの中にある図書室。
窓から陽の光が射し込むその場所は、シノのお気に入りの場所で、その日もシノはそこにいた。
いつもと変わらず、ひとり本を読むシノ。
ハウスに来た頃はくすんでいた金色の髪も、毎日最低限の手入れはされているから、陽の光が当たってキラキラと輝いていた。
それは1枚の絵画のようで、芸術作品のようで、僕は見惚れた。
言葉を忘れて、ただただ見惚れる僕に、シノは言った。
「戻ろうと思うんだ、アノ場所に」
「今日はカレーらしいよ」と、そんななんでもないことを言うような口ぶりだった。
「戻るって、どこに」
「僕たちが、生まれた場所に」
シノは、手元の本から顔を上げることなくそう言った。
――いつからだろう……。シノの心が視えなくなったのは……。
他人の心が聞こえ、視えてしまう、このネオとしての能力は、成長するにつれて、コントロールができるようになった。
聞かないことも、視ないこともできるようになったけれど、シノはいつの日からか、聞こうとしても、視ようとしても、どうしてもわからなかった。
「僕はね、リン。いつまでもヒトの社会では生きてはいけないんだ」
シノの心はわからない。
「僕の頭は、ヒトとは違う。それはわかっていたんだ。普通のヒトなら忘れてしまうようなことも、僕は忘れない。1度読んだ本の内容も、忘れることはない。それだけなら、僕も、ヒトの社会で生きていけたんだけどね」
それは、もう1つのどうしようもできないシノのネオとしての特性に、シノが気づいたことになる。
「僕は、もうすぐ体の成長が止まるんだ」
おそらくそれは、ヒトとしてもネオとしても生物としても、初めての事例だろう。
シノはそれ以上、そのことについては触れなかった。
そしてようやく、シノは本から顔を上げて僕を見て言った。
「リン。キミはどうする?」
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