【完結】EACH-篠突く雨に、凛と-

桐生千種

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05 エピローグ

01

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 ざあざあと、激しく地面を打ちつける雨。
 4月の雨はまだ冷たくて、まるであの日を思い出させる。

 容赦なく体温を奪っていった雨。
 何度も、ぬかるみに足をとられた。

「覚えている? 僕たちがここに来た日のこと」

 シノも同じことを考えていたらしい。

「こんな天気だったね」

 僕は答えた。

「本当に、いいの?」

 雨に濡れる鉄格子の門を前にして、シノが言った。

「成長が止まる僕とは違って、キミはヒトと同じように成長して老いていく。見た目には、ヒトと変わらない。その能力だって、もう完璧にコントロールできるでしょう? 僕と一緒に、戻らなくてもいいんだよ?」

「今更、だろう?」

 もう、ハウスを出るための手続きは済ませた。

 それは間違いなく僕の意志で決めたこと。

 それなのにシノは、僕に遠慮するんだ。

「キミがいなかったら、僕はここにはいない。キミが僕の手を引いてくれたから、僕は生きてこられた」

 あの日、シノが一緒に行こうと手を差し伸べてくれなければ、僕はとうの昔に死んでいた。

「キミに生かされた人生を、キミと共に生きて、キミの行く末を見届けたいと思うのは、僕の意志で、ワガママなんだ」

 僕を生かしてくれたシノ。
 何度もシノに助けられて、救われて、生きてきた。

 だから今度は、僕がシノの力になりたい。

 これから向かう場所が、アノ施設がどんな場所か、なんて僕たちが1番よく知っている。

 そんなことを考えているなんて知ったら、シノはきっと僕を止めるね。

 でも、もう決めたんだ。

「行こう」

 あの日とは反対に、今度は僕がシノに声をかけた。

 この先、どんな未来が待っていようとも、キミと一緒なら――


 *** 篠突く雨に、凛と 終 ***
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