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05 エピローグ
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ざあざあと、激しく地面を打ちつける雨。
4月の雨はまだ冷たくて、まるであの日を思い出させる。
容赦なく体温を奪っていった雨。
何度も、ぬかるみに足をとられた。
「覚えている? 僕たちがここに来た日のこと」
シノも同じことを考えていたらしい。
「こんな天気だったね」
僕は答えた。
「本当に、いいの?」
雨に濡れる鉄格子の門を前にして、シノが言った。
「成長が止まる僕とは違って、キミはヒトと同じように成長して老いていく。見た目には、ヒトと変わらない。その能力だって、もう完璧にコントロールできるでしょう? 僕と一緒に、戻らなくてもいいんだよ?」
「今更、だろう?」
もう、ハウスを出るための手続きは済ませた。
それは間違いなく僕の意志で決めたこと。
それなのにシノは、僕に遠慮するんだ。
「キミがいなかったら、僕はここにはいない。キミが僕の手を引いてくれたから、僕は生きてこられた」
あの日、シノが一緒に行こうと手を差し伸べてくれなければ、僕はとうの昔に死んでいた。
「キミに生かされた人生を、キミと共に生きて、キミの行く末を見届けたいと思うのは、僕の意志で、ワガママなんだ」
僕を生かしてくれたシノ。
何度もシノに助けられて、救われて、生きてきた。
だから今度は、僕がシノの力になりたい。
これから向かう場所が、アノ施設がどんな場所か、なんて僕たちが1番よく知っている。
そんなことを考えているなんて知ったら、シノはきっと僕を止めるね。
でも、もう決めたんだ。
「行こう」
あの日とは反対に、今度は僕がシノに声をかけた。
この先、どんな未来が待っていようとも、キミと一緒なら――
*** 篠突く雨に、凛と 終 ***
4月の雨はまだ冷たくて、まるであの日を思い出させる。
容赦なく体温を奪っていった雨。
何度も、ぬかるみに足をとられた。
「覚えている? 僕たちがここに来た日のこと」
シノも同じことを考えていたらしい。
「こんな天気だったね」
僕は答えた。
「本当に、いいの?」
雨に濡れる鉄格子の門を前にして、シノが言った。
「成長が止まる僕とは違って、キミはヒトと同じように成長して老いていく。見た目には、ヒトと変わらない。その能力だって、もう完璧にコントロールできるでしょう? 僕と一緒に、戻らなくてもいいんだよ?」
「今更、だろう?」
もう、ハウスを出るための手続きは済ませた。
それは間違いなく僕の意志で決めたこと。
それなのにシノは、僕に遠慮するんだ。
「キミがいなかったら、僕はここにはいない。キミが僕の手を引いてくれたから、僕は生きてこられた」
あの日、シノが一緒に行こうと手を差し伸べてくれなければ、僕はとうの昔に死んでいた。
「キミに生かされた人生を、キミと共に生きて、キミの行く末を見届けたいと思うのは、僕の意志で、ワガママなんだ」
僕を生かしてくれたシノ。
何度もシノに助けられて、救われて、生きてきた。
だから今度は、僕がシノの力になりたい。
これから向かう場所が、アノ施設がどんな場所か、なんて僕たちが1番よく知っている。
そんなことを考えているなんて知ったら、シノはきっと僕を止めるね。
でも、もう決めたんだ。
「行こう」
あの日とは反対に、今度は僕がシノに声をかけた。
この先、どんな未来が待っていようとも、キミと一緒なら――
*** 篠突く雨に、凛と 終 ***
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