【完結】中原マナの片想い

桐生千種

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中等部

3年生

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 小春は中学3年生。僕は高校2年生。小春は、声優としての勉強も本格的に始めた小春はその役の幅をどんどんと広げて、この春から始まった日曜朝の子供向けアニメに出演し始めた。
 スカイアクアとして活動する傍ら、声優ユニットまで組んで毎日忙しくしている。
 きっと小春は、アイドルとしての活動を辞めても声優として活動を続けていくだろう。

 僕はと言えば、来年には高校3年生。今までエスカレーター式で高校まで進学してきたけれど、そろそろ進路について、自分の将来について考えなければならない時期だ。
 桜月学園には、大学もあるけれどただ進めばいいってものじゃない。学部学科を決めて試験を受けて、合格しなければ、大学には進めない。そのためにも、僕が将来どうしたいのか、どうなりたいのか考える時期だ。

 ――小春の傍にいたい。

 僕が未来に望むことはそれだけ。僕の人生のすべてを小春にあげる。たとえ、小春が一生振り向いてくれなくても……。

 僕がこうしてアイドル活動をしているのも、小春の傍にいるため。小春がスカウトされなければ、小春がアイドルというものに興味を抱かなければ、僕の今は存在していなかった。
 人前で歌うこともなかった。ダンスを磨くこともなかった。小春の相手役になりたくて、芝居の勉強も小春がいなければこうはならなかった。
 僕の人生の中心には、いつも小春がいる。これからも、ずっと。

「マネージャーになりたい?」

 僕は、事務所の人間にそう報告した。3年生になれば受験勉強も控えて、入試方法によって、その結果によって、スケジュールも調整しなくてはならない。
 どの大学を受験するのか。あるいは短大か、就職か。提示される選択肢はひとつではない。このままアイドルを続けるのもひとつの道ではあるけれど、僕は別段アイドルとして生きていきたいと思っているわけではない。

 それに、このままアイドルを続けていても、小春の傍にいられる時間は減っていく。小春は、まるで風のようにどんどんと先へ、僕の手の届かないところへ行こうとしている。

 だから僕は、小春のマネージャーになりたい。誰よりも小春の近くにいられるその立場がほしい。そのために必要な知識、技能を手に入れるにはどうすればいいか、どの学部学科に進めばいいか、その情報が僕はほしい。

「大学は? 高卒で就職?」
「まさか。大学は出ますよ。どの学部がいいか聞こうと思って」

 大学には、小春も進学するはず。4年生の学部に進んだのなら、2年間は一緒に通えるはずなんだ。

「学部はどこでもいいと思うけどね。興味のあるところに進めばいいよ。マナがどんなことを学んでも、役に立たないことはないと思うからね」

 思いのほか、社長は僕の話に肯定的だった。

「ただひとつアドバイスをするなら、マナがどういうマネージャーになりたいと思うか、だね」
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