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02 広がる世界
05 嫉妬
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部屋の扉を開ける直前、レイナはもう1度カイトの瞳の色を確認した。
間違いなく、黒い瞳であることを確認してからレイナは扉へと向き直った。
すーっと息を吸い込んでから、吐き出す。
扉の横にあるパネルに番号を入力すれば、コンピューターがレイナであることを認識して扉が開いた。
番号と共に、指紋も照合しているため、登録されている人しかこの扉――施設内の扉のほとんどは登録がないと開けられない仕組みになっている。
それは出るときも入るときも一緒で、そういうわけだからどの扉にも登録されていないアイラはひとりで部屋を出られない。
「たっだいまー! レイナさまのおかえりだよー!」
わざとらしく、レイナは自分が帰ったことをアピールするように部屋に足を踏み入れた。
「おかえりレイナ!」
アイラはいつもと変わらない様子で、迎えた。
いつかの約束を守って、「おかえり」と言う。
「アイラ! ぎゅうしよ! ぎゅう!」
「え?」
アイラの返事を聞くよりも早く、レイナはアイラに抱きついた。
ぎゅうぎゅうと、抱きしめてくるレイナに嫌な気はしないけれどレイナがこんなことをしてくるのは珍しいことだった。
「レイナ、どうしたの? あ、カイト、おかえり!」
「……ただいま」
ぎゅうぎゅうとレイナに抱きしめられながらもアイラはカイトに「おかえり」と声をかけた。
カイトは「ただいま」と返してはくれたけれど、そのままアイラのもとを通り過ぎてしまった。
「カイト……?」
「ただ、こうしたいだけ。……いや?」
カイトの様子が気になったけれど、その思考を遮るようにレイナが聞いてきた言葉にアイラは慌てて首を振った。
「いやじゃないよ! アイラもレイナとぎゅってしたい!」
証明するように、アイラはレイナを抱きしめ返した。
「やったあ! ぎゅう! ぎゅう!」
「ぎゅう! ぎゅう!」
「……さっさと着替えて来いよ」
アイラとレイナが2人でふざけあっていたら、着替えたカイトが戻って来た。
「何? カイト、やきもち? 心狭い」
「うっせ……」
レイナの言葉にフイとそっぽを向いて、カイトはテーブルへ向かった。
そこにはリンが用意していた夕食が並べられていた。
「さて、着替えて来ますか。カイト、アイラをイジメたら許さないからね」
アイラを解放したレイナはそう言い残して着替えに行った。
「そんなことはしない」と断言できない自分に、カイトは苛立った。
「……カイトも、ぎゅーする?」
レイナの言う通り、やきもちなのだとしたら、カイトともぎゅーをするべきだとアイラは考えた。
「……いや、いい」
そう言って、カイトはそっぽを向いた。
アイラを見ていたら、余計なことを言ってしまいそうでカイトは怖かった。
だから、何も言わないように考えないようにした。
「あ、あのねカイト。今日ね、アイラにお友達ができたんだよ」
そんなカイトの心情を知りもしないアイラは必死にカイトに話しかける。
けれど、カイトはあまり良い反応を示してはくれなかった。
「そう……よかったな……」
それっきりだった。
本当は、アイラの嬉しい話を共有して一緒に嬉しい気持ちになってほしかったけれど、カイトはどこか心ここにあらずで、つまらなそうで、そんなカイトの様子にアイラの心はずんと沈んだ。
間違いなく、黒い瞳であることを確認してからレイナは扉へと向き直った。
すーっと息を吸い込んでから、吐き出す。
扉の横にあるパネルに番号を入力すれば、コンピューターがレイナであることを認識して扉が開いた。
番号と共に、指紋も照合しているため、登録されている人しかこの扉――施設内の扉のほとんどは登録がないと開けられない仕組みになっている。
それは出るときも入るときも一緒で、そういうわけだからどの扉にも登録されていないアイラはひとりで部屋を出られない。
「たっだいまー! レイナさまのおかえりだよー!」
わざとらしく、レイナは自分が帰ったことをアピールするように部屋に足を踏み入れた。
「おかえりレイナ!」
アイラはいつもと変わらない様子で、迎えた。
いつかの約束を守って、「おかえり」と言う。
「アイラ! ぎゅうしよ! ぎゅう!」
「え?」
アイラの返事を聞くよりも早く、レイナはアイラに抱きついた。
ぎゅうぎゅうと、抱きしめてくるレイナに嫌な気はしないけれどレイナがこんなことをしてくるのは珍しいことだった。
「レイナ、どうしたの? あ、カイト、おかえり!」
「……ただいま」
ぎゅうぎゅうとレイナに抱きしめられながらもアイラはカイトに「おかえり」と声をかけた。
カイトは「ただいま」と返してはくれたけれど、そのままアイラのもとを通り過ぎてしまった。
「カイト……?」
「ただ、こうしたいだけ。……いや?」
カイトの様子が気になったけれど、その思考を遮るようにレイナが聞いてきた言葉にアイラは慌てて首を振った。
「いやじゃないよ! アイラもレイナとぎゅってしたい!」
証明するように、アイラはレイナを抱きしめ返した。
「やったあ! ぎゅう! ぎゅう!」
「ぎゅう! ぎゅう!」
「……さっさと着替えて来いよ」
アイラとレイナが2人でふざけあっていたら、着替えたカイトが戻って来た。
「何? カイト、やきもち? 心狭い」
「うっせ……」
レイナの言葉にフイとそっぽを向いて、カイトはテーブルへ向かった。
そこにはリンが用意していた夕食が並べられていた。
「さて、着替えて来ますか。カイト、アイラをイジメたら許さないからね」
アイラを解放したレイナはそう言い残して着替えに行った。
「そんなことはしない」と断言できない自分に、カイトは苛立った。
「……カイトも、ぎゅーする?」
レイナの言う通り、やきもちなのだとしたら、カイトともぎゅーをするべきだとアイラは考えた。
「……いや、いい」
そう言って、カイトはそっぽを向いた。
アイラを見ていたら、余計なことを言ってしまいそうでカイトは怖かった。
だから、何も言わないように考えないようにした。
「あ、あのねカイト。今日ね、アイラにお友達ができたんだよ」
そんなカイトの心情を知りもしないアイラは必死にカイトに話しかける。
けれど、カイトはあまり良い反応を示してはくれなかった。
「そう……よかったな……」
それっきりだった。
本当は、アイラの嬉しい話を共有して一緒に嬉しい気持ちになってほしかったけれど、カイトはどこか心ここにあらずで、つまらなそうで、そんなカイトの様子にアイラの心はずんと沈んだ。
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