上 下
44 / 66
03 変わる世界

11 変わるもの 変わらないもの

しおりを挟む
 ゆっくりと、アイラの日常が変わりはじめている。

 もっとも大きな変化は、サイトと出会ったこと。

 アイラにできた初めての友達。

 今まで、アイラとレイナとリンとシノという人間しか知らず、限られた人物としか触れ合うことのなかったアイラにとって、初めての出会いという変化があった。

 サイトと出会って、アイラは初めて自分が育った部屋を出た。
 アイラの育った部屋が、大きな建物の中の一室に過ぎなかったことを知った。

 サイト会うようになって、アイラの能力が成長率をさらに上げていた。

 同じような能力を持つサイトの影響なのか定かではないけれど、それはシノにとってはとても喜ばしいことだった。

 加えて、小さい頃自分も能力をコントロールする訓練をしていたというサイトの指導のおかげか、アイラの能力もコントロールが上手くなっていった。

 自身の能力に身体を蝕まれる可能性を思えば、アイラが能力を上手く扱えるようになることは良いことではあるけれど、カイトやレイナにとっては手放しで喜べるようなことではなかった。

 だってそれは、アイラに差し迫るその日がすぐそこまで来ているということになってしまうから。

 その状況にカイトは焦り、レイナは覚悟を決めていた。

 サイトは、ただただ嬉しかった。
 アイラと一緒に過ごせる時間が、幸せだった。

 変わるものがあるけれど、変わらないものもたしかにある。

 アイラのいる場所はいつもの部屋で、カイトとレイナが変える場所はアイラがいる場所。

 アイラはカイトとレイナが大好きで、カイトとレイナもアイラのことが大好きだった。

 もちろん、サイトだってアイラのことを愛していた。

 リンは、何もできない現状に複雑な心情を抱きながら、アイラと、カイトと、レイナの様子を見守っていた。

 シノは、近く訪れる可能性のある未来に心を躍らせていた。

 変わり始める日常の中、変わらないものもたしかに存在していた。
しおりを挟む

処理中です...