桜1/2

平野水面

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存在X

スペシャルゲスト2

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 僕はガッカリして机の上でうつ伏せに寝そべった。
 これなら目を合わさずに済むからだ。 
 どうせなら昼食を食べずに、このまま昼寝してやろうとふて寝を決め込む。
「起きろよ月島。俺だって来たくなかったんだ。でもお前の妹と町田師匠が一緒に飯を食ってくれと頼まれたから仕方なしにだな――」
「町田師匠だと?」
 驚いた僕は両手で机を「バン」とたたいてから、顔を上げて鈴村を見た。
 ムカつく鈴村が何となくドヤ顔をしているように見えた。
 話をしたくはないけれど聴きたいという衝動に駆られたので。
「何で麗さんとお前が師弟関係になってんだよ?」
 鈴村は僕の質問に答えずに机を叩く。  
 顔をぐっと僕の顔に近づけて凄む。
 近い近い、キスができるくらい近い。
 興奮気味の鈴村の鼻息が僕にかかってかなり不快だった。
 はっきりと言ってやった。
「溝臭い息がかかって迷惑なんですけど。その悪臭レベルはオリンピック級ですね」
「言うようになったな月島」
「もう遠慮する必要もないからな。僕に負けたオリンピック候補くん。つまり負け犬だな」
「ちぃ、汚点を作ってしまったぜ。てか何でお前だけ町田さんの下の名前を呼んでいるんだよ?」
 悔しそうな表情を見せる鈴村。
 僕は「あ、またこいつに勝った」と優越感に浸る。
 椅子を後ろに下げ、足を大きく開き椅子に深く凭れる。
 僕は余裕の表情見せつけてこう言った。
「だってさあ、僕に好意を持つ麗さんがファーストネームで呼んで欲しいと言うからだよ。分かる? 僕らそういう関係なんだよね」
 自分で言っていてちょっとムカつく奴だとは思うし、嫌な性格していると思う。
 けれど鈴村にはこれくらいやり返してもいいじゃないかと自己正当化して誤魔化した。
「ムカつくぜ月島」
「そっくりそのまま返すよ鈴村」
「ちぃ、俺はお前と喧嘩しにきたわけじゃないんだ。師匠がこの前の詫びに昼食をおごってこいと言うから仕方なく来たんだ」
「そういうことは早く言え。購買部に行くぞ鈴村」
「ちぃ、いちいち命令すんな」
「言っておくけど、僕はお前よりも二個上だから」
「ちぃ、先輩風を吹かせやがって」
「後で鈴村の態度が悪かったって麗さんに報告しちゃおうかなぁ」
「……月島さん、購買部へ行きましょう」
 鈴村を屈服させた。
 どうやら今回の勝負も僕の勝ちである。
 財布役の負け犬くんを連れて購買部へ向かった。

 鈴村のせいで出遅れた僕らは長い行列に並んでいた。
 手持ち無沙汰の僕は同じ質問を繰り返した。
「何で鈴村は麗さんを師匠と呼ぶんだ?」
「もう知っているとは思うが、師匠は中学一年の時に全中陸上の百メートル走で日本一になった伝説の人だ」
「本人からも聴いたな。僕にはその凄さがいまいちピンとこない」
「月島の好きなものや得意なことは?」
「所々で記憶のない僕にその質問かよ……取りあえず読書は好きだ。記憶を失くす前の僕の部屋にはライトノベルが置いてあったくらいだからな」
「ざっくり言えば、中一の女の子が小説の新人賞を獲るようなものだな」
「それはヤバイな」
「ヤバイことやっちゃったのが師匠なんだ。俺は憧れの人から色々とアドバイスを受け、毎日の練習に励んでいるんだ。勿論、白井先生の指導も素直に従っている。師匠と約束したからな」
「なるほどな」
 鈴村を少しだけ見直した。
 けれど途中から鈴村の話に興味がなくなり、後半は「うん、うん」と相づちを打って聞き流していた。
 今の僕には鈴村の話を無視しなければならないほどの非常事態が起きていた。
 購買部の販売するパンの中に焼きそばパンとナポリタンドックが売ってないのだ。
 当然のように売っていると思っていたのに動揺する。
 そして思い出す朝の星座占い。
 昼飯でさえ、思い通りにならないのか。
 ガッカリして食欲を無くす。
 パンを選んでいる鈴村には何も言わずに人集りを掻き分けて外へ出た。
 パンを諦めたので鈴村と昼食を食べる理由がない。
 鈴村を置いてきぼりにして購買部を後にした。
 ことごとく悪い占いがあたってむしゃくしゃする。
 気晴らしに校庭を散歩しようかと廊下の窓から空を見上げれば生憎の雨模様。
 濡れてまで散歩する気はない。
 目的もないままうろついていたら、部室のある空き教室まで来た。
 なんとなく文芸部の部室で時間を潰そうと思って引き戸の前に立った。
 すると部室の中から話し声が聞こえてきた。
 今日の昼休みは誰もいないはず。
 でもこの声の主は亜希である。
 僕は妙な胸騒ぎがしたので、教壇側の引き戸を少し開けてこっそりと覗いた。
 窓を背に黒板側から恵さんと亜希の順に座り、廊下を背に黒板側から白井先生と麗さんの順に座っていた。
 今日は用事があるから集まらないと聞いていた。
 けれど僕には内緒で皆集まっている。
 というかなぜ白井先生がいるのだろうか。
 僕は四人の話が気になって聞き耳を立てた。
 険しい表情の亜希はゆっくりと話し出した。
の本当の病気を皆に知って欲しくて集まってもらったの。これから話すことは決して誰にも話してはいけない。もちろんにもね。約束してくれるよね?」
 亜希は「異論は認めない」といった鋭い眼光で三人に圧力をかけて同意を強制する。
 部室内は重苦しい空気に包まれた。
 
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