ゾンビばばぁとその息子

歌あそべ

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ゾンビ覚醒

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おかあさんがいない!
家の中、どこにも。
夕べ帰らなかったんだ。

えーっ!
誠も慌てて飛び起き、上着を羽織るとすぐに公園に向かった。

ばあさんの姿は見えない。
でも…

あれ、何?
砂場の横、土がかなり盛り上がってる。
あれ、かあさんの仕業か?

公園の片隅の木の下のベンチには、若い母親と娘らしき小さな女の子の人影があった。
ねぇ、あれ何?
女の子が母親の腕を引っ張っている。

さあね~
ちょっと待って、今忙しいから
母親は座ったままスマホをいじってる。

誠と真由美は、たよ子ばあさんが土いじりをしていた場所、そこにある土が盛り上がっている場所に近寄ろうとしていた。

その時、女の子が駆け寄って来るのが見えた。
盛り上がった土の山がわずかに動き、パラパラと乾いた土が落ちるのが見えた。

次の瞬間、女の子の泣き叫ぶ声が聞こえ、誠と真由美が駆け寄ると、女の子は靴が片方脱げた状態で倒れていた。

土の中から伸びた土色の痩せた手が、女の子の赤い靴を掴んでいた。
誠は、咄嗟に腕が突き出た土の山に覆いかぶさり、真由美は突き出たその土色の手を掴んだ。

女の子は片方の靴が脱げたまま、泣きながら立ち上がって走り出した。

少し離れた木陰のベンチにいた女の子の母親が立ち上がり、女の子が泣きながら駆け寄って行った。

真由美は、小さな靴を掴んだ土にまみれた手をむしるように払い除け、その小さな靴を拾った。

靴についた土を払い、走って女の子の方に駆け寄り、靴を渡した。
すみません、と女の子の母親が頭を下げた。

そして、泣いている女の子とその母親は帰って行った。

ああ、よかった
女の子は無事みたい

あの子、見たのかしら
強い力を足元に感じたかもしれない
気付かずにいてくれたらいいけど…
そう思いながら砂場の方に振り向くと同時に…

誠がああっと小さな声を上げた。
土の盛り上がりがむくむくっと動いた。
なんや!痛いやないか!放せって!
見ると、土の山の中からばあさんの腕と頭が突き出しており、誠のふくらはぎに噛みついていた。

噛みつきよった!
こいつ!
誠がバタバタと暴れるようにもがいた次の瞬間、ばあさんの上半身が土の中から現れ、
なんで邪魔するんや
と言った。
あっと言う間に土から抜け出し、すごいスピードで公園を抜け、走り去って行った。

おかあさん!
真由美は叫んだけど、腰を抜かしたようになり、追いかけることもできず、ただ唖然とするばかりだった。
誠も真由美もしばらくその場から動けなかった。

どういうことや!
あれ、何なんや!
ゾンビか!?
見てみ!噛まれたぞ!

ほんとだ!
ズボン破れてる
帰ろう
手当てしないと!

2人はもう追いかける気力もなく、身体についた土を払い、家に戻った。


脱げた靴を履きなおして、泣きながら母親に連れて行かれる女の子。
なんかいた
なんか土の中にいたよ
と言う。
そうなの?
モグラさんかな?
と母親。

モグラって何?
土の中にもぐってる小さなかわいい生き物よ
小さくないの、大きいの!
じゃあ大きなモグラさんねえ
かわいくないよ~怖いよ~
女の子は泣きじゃくりながら訴えていた。

一方、家に帰った誠と真由美。

痛いな、まったく
血が出てるやろ
うん、歯型ついてるし
しっかり入れ歯入れとったんやな
入れ歯にしては鋭いな

お医者さん行く?
いいって
それほどのことじゃないから
じゃあ、包帯巻いておくね

とにかく、かあさんを探しに行かないと
顔も髪も身体全体も土まみれだったし、人が見たら何事かと思われるよ

痛くない?大丈夫?
大丈夫、多分…

応急処置を済ませ、軽自動車を出して2人はたよ子ばあさんを探しに出かけた。
途中、まだ1年生かと思われる小学生が3人、走って来るのが見えた。

ひゃあ、怖かったー!
なんや、あれ
追いかけて来るかと思ったー
小人やろ?
なんか黒かったで
ばあさんみたい
髪が泥まみれやったで

ねえ、君たち、
小さなばあさん見たの?
真由美がクルマの窓を開けて聞いた。
どこで見たの?

もうちょっとその先、怖かったから逃げて来た!
マジ怖かったーー!

そこで2人は、その先とその周辺を探し回ったけどもうどこにも人影はなかった。

どこかに隠れてるのかな?
もうちょっと遠くまで走らせてみるか…


  続く…
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